後藤いつき

眠る。私の中に檻が入ってくる。その私の中の檻の中にまた私がいて、合わせ鏡のように無限に連なって続いている。延々と果てしなく奥へ奥へと誘われていく。その次のそのまた次の私へと。

どの私も同じ表情をしている。どんな表情だかはっきりとは見えないが、たしかに同じものだとわかる。ほかでもない私自身のことなのだから。

と、ひとりの私が私にサインを送る。一度通り過ぎてしまったが、振り返って戻る。誘う主が不快感を示す。彼、あるいは彼女への後ろめたさを感じつつも、サインを送った私に会いに行く。仕掛け絵本が閉じるように、あっけなく、かんたんに暗闇が閉じる。檻のことなんて忘れて私は角を曲がっている。

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後藤いつき @gotoitsuki

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