第9話
悠真は王城の広間で騎士団長の前に立たされ、強制的に騎士団入団試験を受けることになった――。
しかし、試験内容は予想とは大きく異なっていた。
「では、騎士団入団試験の競技を発表する!」
騎士団長が厳かに言い放つ。
悠真は固唾を飲んだ。
(どうせ剣術とか戦術テストだろ……)
だが、その瞬間――騎士団長が言った。
**「種目は……異世界式バトルドッジボールだ!」**
「はぁ!?!?」
悠真は目を疑った。
目の前には、すでに巨大な球が用意されている。
しかも、**ただのドッジボールではなく、魔法で強化された“戦闘用ドッジボール”だった。**
「騎士たちは、戦場での機動力と判断力を鍛えるため、定期的にこの競技を行っている」
悠真は震えた。
「いやいやいやいや!剣術試験じゃないの!?なんで球技!?しかもなんかヤバそうなんだけど!?」
だが、王女ルミエールは微笑みながら言った。
「悠真様なら、きっと華麗に避けて勝利できるはずです♡」
「だからそういう過剰な期待が一番困るぅぅぅ!!!」
騎士団の中でも最も負けん気の強いルシアが、すでにボールを持って構えている。
瞳は燃え上がり、勝利への闘志に満ちていた。
「……救世主様、覚悟してください」
「いや、俺は戦う気ゼロなんだけど!?!?」
そして――
**異世界式バトルドッジボール、試験開始!!**
---
異世界式バトルドッジボールの試験が開始された。
悠真はすでに額に冷や汗をかいている。
(俺はただ避けるだけで終わらせたいんだけど……)
しかし、対戦相手のルシアはまったく違う思惑を抱いていた。
---
ルシアはボールを握りしめながら、心の中で静かに叫んでいた。
(救世主様と戦える……!こんな機会、もう二度とないかもしれない……!!)
彼女の胸は高鳴っていた。
騎士としての誇りとは別に、悠真への想いが、今この瞬間に全力を尽くしたいという気持ちへと変わっていた。
(だったら……全力で行く!!)
ルシアは力強く地面を蹴り、ボールを悠真に向かって思い切り投げつける。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
悠真はその剛速球を反射的に避けた。
ボールが地面にめり込むほどの威力。
「ちょっと待て!俺のこと好きなのに戦うのガチすぎない!?!?!?」
しかし、ルシアは微笑みながら次の球を構える。
「好きだからこそ、全力でぶつかります……!!」
「それが一番怖いんだけどぉぉぉ!!!」
悠真は必死で避け続ける。
しかし――ルシアは気づいてしまう。
(なぜ……なぜ一球も当たらない!?)
ルシアは騎士としての鍛錬を積み、並の相手なら一撃で沈められる精密なコントロールを持っている。
だが、悠真はまるで風のように華麗に避け続けている。
(私の攻撃をすべてかわしてしまうなんて……やはり、救世主様はとんでもない実力者……!)
悠真の「ただ必死で逃げてるだけ」という気持ちは、ルシアの中で**「戦略的な高度な回避技術」**へと変換されていた。
そして――ルシアは決意する。
「今度こそ……当てます!!」
ルシアは魔法を込めた渾身の一球を放つ。
「ちょっと待てぇぇぇ!!!」
悠真は最後の一球を避けるが、**そのまま勢いで足を滑らせて転倒**。
偶然伸ばした腕が、弾道を変えたボールを跳ね返し――
**ルシアの胸元へ直撃。**
「~~~~ッ!!!」
ルシアは一瞬、頬を赤らめながら、その場に倒れ込む。
そして――
「勝者、救世主様!!」
悠真は天を仰ぎながら叫ぶ。
**「違うぅぅぅ!!事故ぉぉぉ!!!」**
こうして、悠真はさらに「運命の回避達人」という誤解を強め、ルシアの想いもより複雑になっていくのだった――。
異世界?救世主?冗談じゃねぇ!巻き込まれたブタ野郎の俺が、この世界を救うわけない! うんこ @yonechanish
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