第7話
悠真は必死にルシアの猛攻を避け続けていた。
「ちょっと待って!俺、本当に戦う気ないんだって!」
だが、ルシアの目は完全に戦闘モード。
「救世主様、どうして攻撃を躱し続けられるのですか?まさか……私の動きを完全に読んでいる!?」
「いや違う!!ただビビって逃げてるだけぇぇぇ!!!」
だが、その言葉を信じる者は誰もいなかった。
騎士団の兵士たちは興奮しながら叫ぶ。
「すごい!まるで達人同士の戦いのようだ!」
「これは王国騎士団の歴史に残る模擬戦だぞ!」
悠真の逃げ回りが、なぜか「超高等戦術」に見られてしまった。
そして――その時だった。
**ルシアが大きく踏み込んできた。**
「今度こそ決めます……!!!」
悠真は反射的に体を引いた。
そして、そのまま足をもつれさせながら――
**バランスを崩し、持っていた剣が勢いよく飛び出した。**
**ガッ!!!**
ルシアの剣に激突――そのまま彼女の武器を弾き飛ばしてしまう。
「……え?」
悠真は呆然とした。
ルシアは驚いた顔で、自分の剣が地面に転がるのを見ていた。
「なっ……!」
沈黙が広がる。
そして――
**「救世主様、勝利!!!」**
王国兵士たちの歓声が広場に響き渡った。
ルミエールは目を輝かせながら悠真の手を取る。
「すごいです!救世主様の勝利ですね!」
「違う違う違う!!事故だから!!!偶然だからぁぁぁ!!!」
だが、悠真の必死の叫びもむなしく、王国騎士団の間で**「救世主様の剣技は神業級!」**という新たな誤解が広まることとなる。
そして、騎士団長は静かに言った。
「この実力……救世主様にはぜひ、王国最強の騎士団『白銀の盾』へ入団していただきたい」
「だから戦いたくないって言ってるのにぃぃぃぃ!!!」
こうして悠真はまたしても巻き込まれ――気づけば、王国の精鋭騎士団に強制スカウトされるという最悪の展開を迎えるのだった。
悠真は模擬戦で「戦いたくないのに偶然勝ってしまう」という事故を起こし、騎士団からの評価が爆上がり。
さらに王国の最強騎士団「白銀の盾」へスカウトされるという最悪の事態を迎えていた。
しかし――別の問題もひそかに進行していた。
**ルシアが悠真に惚れてしまったのだ。**
---
模擬戦後の王城の廊下。
ルシアはじっと窓の外を見つめ、困惑していた。
(私は……何を考えているんだ……)
騎士としての誇りを胸に、王国の未来を守るために剣を振るってきた。
その彼女が、戦闘において驚異的な才能を持つ救世主――悠真に惹かれてしまった。
だが、ルシアは気づいてしまった。
(……あの人、戦う気がまったくない……)
それが逆に、彼女の心を揺らしていた。
模擬戦で見せた悠真の回避能力、剣さばき――どれも偶然の産物だというが、ルシアにはそうは思えなかった。
実際に戦った者だからこそ分かる。あれは本能的な才能だ。
だが、その才能を悠真は決して誇示しようとしない。
むしろ、必死に巻き込まれないように抵抗している。
ルシアは胸の奥がチクリと痛むのを感じた。
(……私は今まで、「強くなければならない」と思っていた。だけど……)
**戦わないことを選ぶ悠真の姿は、彼女にとって新鮮だった。**
しかし、ルシアは表情を硬くする。
騎士として、簡単に感情に流されるわけにはいかない。
「ルシア!」
突然の声に、彼女はハッと顔を上げた。
そこにはルミエールがニコニコと微笑んでいた。
「あなた、悠真様のこと気になっていますね?」
「な……!!?」
ルシアは顔を真っ赤にしながら否定しようとする。
「そ、そんなことは……ない!!私は王国騎士として……!」
だが、ルミエールはくすくすと笑う。
「騎士としてじゃなくて、個人として気になっているんですよね?」
「~~~~!!!」
ルシアは何も言えなかった。
強くあることを誇りにしてきた彼女が、悠真への想いを自覚しながらも、何も言い出せない。
だが、そんな彼女に気づかない悠真は、別の問題に巻き込まれていた――。
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