第3話

悠真は、異世界の創世神との問答を終えた後、王都の中心にある大神殿へと召喚された。


「あなたが……救世主様なのですね!」


そう言って出迎えたのは、王国の宰相を務める壮年の男性だった。

整えられた髭に高貴な衣装。そして何より、彼の背後には重装備の騎士たちがずらりと並んでいる。


「いやいやいや!俺、戦うつもりないんですけど!?救世主って、もっと戦闘力高そうな人に任せません?」


悠真が本気で拒否しようとすると、宰相は穏やかに微笑んだ。


「ご謙遜を。あなた様ほどの知略をお持ちの方なら、戦わずとも世界を救えるはずです」


「は……?」


悠真は混乱した。いや、そもそも知略なんてない。ただのブラック企業社畜だ。

だがどうやら、この異世界では悠真が“とんでもない戦術家”として誤解されているらしい。


その理由は――


**悠真が創世神との問答で「戦いたくないから巻き込むな」と言い張ったことが、異世界の戦略論において天才的だと認識された。**


「敵勢力を巻き込まずに物事を進める戦術家など、かつて存在しませんでした。まさに異世界の革新です!」


いや、それただの社畜の自己防衛本能なんだけど!?


しかし、王国は悠真の言葉を過大評価し、なぜか彼を軍の特別参謀に迎え入れようとしていた――。


了解です!主人公・悠真の「巻き込まれたくない!」という気持ちと、それをまったく理解しない異世界の住人たちの誤解をさらに強調して展開を進めてみます。


「この国の未来は、すべてあなたにかかっています!」


悠真はその言葉を聞いて、ぐったりと肩を落とした。

目の前では国王まで頭を下げている。いやいや、ちょっと待って。何この状況!?


「違うんですよ……俺、本当に何の力もないんですって……」


悠真は必死に説明しようとした。

しかし、そこへ宰相が厳粛な表情で口を開いた。


「……謙虚な方だ。やはり、真の戦略家は己の力を誇示しないものなのですね」


「違うってばぁぁぁぁ!」


悠真の叫びはむなしく、周囲の誤解はますます深まっていく。


騎士団長も拳を握りしめながら言った。

「この戦乱の時代に救世主たる者が、自らの力を誇示しない……なんと高潔な心なのだ……!」


「いやいやいやいや!ただの一般人だって言ってるじゃん!!」


悠真はどこまで行っても巻き込まれてしまう宿命らしい。

逃げ道を探そうと城の裏口へ向かったところ、なぜかそこには魔王軍の密偵がいた。


「あなたが噂の救世主……まさか、王国を内部から崩壊させる計画か?」


「えええ!?そんな計画ないよ!?むしろ俺こそがこの国から逃げ出したいんだけど!?」


しかし、魔王軍は悠真の発言を「超高度な策略」と解釈したらしい。


「なるほど……自らの正体を隠して動くとは……さすが救世主、我々にとっても脅威だ……」


「だから違うってぇぇぇぇぇ!!!」


悠真はその瞬間、王国と魔王軍の両方から要注意人物認定されてしまった――。

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