咲かぬ蓮の夢

夕凪つむぎ

プロローグ 「始まりの微睡み」

夜が、静かに降ってくる。


都会のざわめき、喧騒、この時間になると少しだけ遠く感じられる。ボランティアセンターの片隅、光に照らされた一枚の名簿に、今日の参加者の名前が並ぶ。


その中に、彼らはいた。


まだ、何も知らない。


ただ、古びた机をはさんで、配付物を折りたたむ作業のなか、ほんの短い会話を交わす。


「このチラシ、毎月デザインが違うんですね」


「気づく人、少ないんですよ」


それは、ほんの些細なこと。


だけど――言葉の端々に、どこか共鳴する音が心を揺らす。


誰かを救いたかった。


誰かに救ってほしかった。


けれどそのどちらも叶わなかった者たちが、今、偶然にも向かい合っている。


ほんとうを持ち込まない場所でしか、


人は、ほんとうに向き合えないことがある。


無機質な空間に広がっているのは、微睡のように静かな心の安らぎだった。


そして始まる――


咲くことはないけれど、心をつなぐ、物語。

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咲かぬ蓮の夢 夕凪つむぎ @coco879A

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