クロザクロ
逆口
一口目 相対
F府、S市、中高一貫校、
人を見かけで判断するなとよく言うが、こんな厳つい顔をしたやつが放課後の図書室にいていいものなのだろうか。
こんなやつは図書室のような高尚な場所ではなく適当に校庭でサッカーでもするか帰り道にゲーセンやらカラオケで散財していてほしいものである。
その横で静かにパソコンの前で文庫本の管理をしているいかにも図書室にいそうなビジュアルのやつがいる。
眼鏡をかけて制服を第一ボタンまで律儀に閉めている。
まるで彼が図書室に来ているのではなく図書室にくるために彼が生まれてきたのではないかと思うほどだ。
しかし彼は恐れる様子も見せずにその厳ついヤンキーに向かって話しかける。
「翔馬くん、あとの仕事全部僕がやっとくんで帰ってもいいですよ」
ヤンキーはため息をついて言い返す。
「いやいや駿佑、それだと俺が素行不良改善のために図書委員やってる意味ねえだろ?」
「まあそうですけど、図書室の鍵返す時に最後まで仕事してましたって津田先生に報告しとくんで別に大丈夫ですよ」
「いや、何があるかわかんねえからな。今帰ったのがバレて成績下がったりでもしたらマジでやべえ、別に帰ってすることも...
「あの...」
二人の会話を遮るように中学生が本を持って貸し出しの手続きを頼もうとしていた。
「ああ、悪いな、何年何組だ?」
手際よく貸し出しを済ませた翔馬は再び席についてだらだらとする。
「オッケーです、全部終わりました。帰りましょうか。」
翔馬と駿佑は図書室の鍵を閉めて職員室に返し、鍵の管理表に名前を書いて職員室をあとにする。
四クラスある高校第一学年に長谷川が五人在籍しているせいで同じクラスになってしまった二人の長谷川は対極の性格でありながらも楽しげに話しながら校門を出て駅に向かっていった。
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