ずっと探してた…月の君を
@rachu
第1話 どうしてこうなった?!
「ち、遅刻だ!!」思わずもれた声は掠れて
いたが、それどころじゃなかった。
複数のアルバイトで生計を立てる俺にとって、主軸になる【モントール】でのコックとしてアルバイトは貴重なものだ。何せ時給が良い!!
今どき時給1200円も中卒の俺に支払ってくれるバイトは無い。それなのに。
昨日のアレが悪かったんだ。コンビニの深夜バイト終わりに眠さが祟ってフラフラとしながら早朝の駅前を歩いていたら物凄い勢いで走ってくる人とぶつかった。弾き飛ばされた俺は、ゴロゴロと転がって打ち身だらけになったが幸いな事に頭だけは無事だった。
傷だらけの俺に、何故かぶつかった相手の人の方がぐったり倒れていたからビックリした。
何で、気絶?
俺よりかなり背の高いその人は、ガタイも良くてレスラーかと思うほどだ。なるほど、このガタイじゃ俺がコロコロ転がるはずだな。それにしても、全身がかなり痛む。
ズキズキする身体を無視して家に帰ろうと頑張って起き上がろうとした俺は今度は強い力で袖をガシッと掴まれてまた、転がった。
「痛っ。」さすがに思わず情けない声が出たら、掴んでいた手がビクッとして離れた。
「す、すみません!!!」掠れて震える声が隣からして振り向けば先程俺を転ばせたレスラー風の大男だった。真っ青な顔でこんな風にビクビクしながら謝られるとさっきまでの怒る気もなくなる。
「あ、もう大丈夫なので気にしないでください。」少し優しく声を掛けたはずだった。
それなのに。
ガタンッ!!
ええーー、気絶??また???
隣で大男は再び気絶した。
びっくりして固まる俺に更なる追い討ちが待っていた。
「離れろーー!!!」
走り込んで来た誰かに今度は、大男から引き剥がされてそのまま勢いよく吹っ飛ばされた。「痛い!!」もんどり打って転がった拍子に今度は確実に肘を強打した。有り得ない位の痛みが襲ってくる。
マジで痛い。俺を襲った相手はそんな俺に構うことなく、倒れたレスラー風の大男の無事を確認していた。そしておもむろに立ち上がって俺を睨みつけると
「お前…このお方にこんな真似をするなんて。賠償請求を取って人生終わらせてやるかな!!」そう言って怒鳴ってきた。
ヒッ。思わず声が出る。
この外人…まさかのヤクザなのか?
でも俺は何もしてないのに。高そうなスーツを着た睨む外人は、般若の顔でこっちを見てる。
その時「うっ、うーむ。」微かなレスラー風の大男の声がして、外人の気が一瞬逸れた。
チャンスだ!!
痛む全身を丸っきり無視してその場から全力疾走して逃げた。
後ろから「待て!!逃がすか!!!」と声が響いた気がするけどそんなの関係ない。
逃げるが勝ちだ。
しかし、痛む身体で全力疾走した俺は、自宅の玄関にそのまま倒れ込んで気絶してしまった。
4時間後は、【モントール】でバイトなのに。
案の定、出勤10分前にようやく目がを覚ました俺は遅刻ギリギリで今、店まで全力疾走中だ。
肘の凄い痛みも久しぶりに出た熱も無視してとにかく店へと急いだ。それこそ、クビにでもなったら、食ってはいけない。その一心で乱れた息のまま駆け込んで、何とか間に合った俺はホッと胸を撫で下ろしながら、店の扉を開いていつもの通り挨拶をした。
「おはようございます。今日も宜しくお願いします。」いつもなら、オーナーの柔らかな声がする。なのに…。
「お前、何やったんだ。あぁ、、こんな事ならお前なんか雇うんじゃ無かったよ。とにかく、クビだ。このまま出てゆけ。そして二度と来るな!!」
えっ??
頭がついてゆかず、立ち尽くす俺をオーナーは容赦無く扉の向こうに叩き出した。
またも転んだが、今はそれどころじゃない。
遅刻…はしてない。じゃあ何故?
あ、、もしかしてあの人影。
怒鳴るオーナーの向こう、厨房の近くにあの外人を見たような気がしたのだ。
ヤクザか。
やっぱり凄いな。。
再び復活した痛みは更なる強さになり、熱でフラフラする身体は歩くのもやっとだったが、
それでも慎重に誰にもぶつからないようにと身体を家まで運んだ。
そこで意識は途絶えた。
真っ暗な気持ちと同じにそのままに意識も真っ暗闇に沈みこんだのだ。
***レスラー風の男の視点***
見つけた。
やっと、俺の月を見つけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます