ウェイクナウベイビージャム

エリー.ファー

ウェイクナウベイビージャム

 もしも。

 夢の中に、君がいて。

 僕の中に、溢れるほどの夢があって。

 時間が許すなら、君の笑顔に溺れたい。

 何もかも失うのも悪くない。

 そうだろう。

 だって。

 君は、僕のことを知っているはずだから。

 ほら。

 笑って。

 そして。

 失って。

 同じだけの時間を過ごしていると思っている。

 たぶん、全部。

 そう、嘘だね。

 本当なんて、何一つないんだろうね。

 不可思議なカラフル。

 振り返ってみれば、そこには何も残っていない。

 そう、君と僕で作り出した思い出ばかり。

 ほら。

 もっと笑って。

 そして、失って。

 ほら。

 もっと笑って、もっと笑って。

 このまま、甘い世界の中で独りぼっち。

 君じゃない。

 僕だけの夢さ。

 もっと孤独になっていたい。

 だって、これからの人生に君はいないんだから。

 あのね。

 もしも、もしもの話さ。

 脳味噌の裏側に、君の影がちらついて、次の恋に行けなくなってしまったら、虹色の夢をみるべきかな。

 そうしたら、僕は、僕が否定していた世界に救いを求めることができるようになるかな。

 なぁ。

 答えてくれよ。 

 僕は、ずっと僕から逃れることができないんだぜ。

 この絶望を、僕の人生は抱えなければならないんだぜ。

 スポットライトの中で、僕は、僕を見失ってしまいそうなんだ。

 だから、僕がいる。

 だから、ここには君がいた。

 あなた、ではない。

 君がいたんだ。

 マニュアルのない人生であることを、僕は誇りに思っているんだ。

 金持ちに生まれることもできなかった。

 ましてや、かっこいい男に生まれることもできなかった。

 でもね。

 君と一緒なんだ。

 ずっと一緒なんだ。

 僕には君がいて、君には僕がいて。

 それで十分。

 本当に、それだけの夢さ。

 忘れてはいけないよ。

 このまま拡大していくカラフルな悪夢さ。

 ローマから始まって、後は忘れるだけの小さなゲームさ。

 哀れだと思うだろう。

 そうなんだ。

 余りにも哀れで自分でも笑ってしまいそうになるんだよ。

 でもね、それがいいんだ。

 そのために、生きていることを心から実感できるんだよ。

 本当さ。

 本当なんだ。

 嘘じゃない。

 嘘なんかじゃないんだよ。

 抱きしめて伝えてやればよかったよ。

 風船みたいに、見える、僕の人生を破裂させてやればよかった。

 そうしたら、君は、僕のことを忘れないでいてくれるだろうからね。

 あばよ、なんてかっこいいことは言えないよ。

 泣くしかない。

 涙を拭いてくれる人もいない、僕の影。

 伸びていく。

 夕日の中に、僕がいて、いつもみたいな幸せはやって来ない。

 人を殺して僕がいる。

 愛する人を殺して、自分のプライドを守ってみせた僕がいる。

 君がいた。

 君のような影がそこにあった。

 手紙の中に、君の世界があった。

 まただよ。

 僕はまた、自分を捨ててしまった。

 光の中に僕。

 君の中に光。

 愛がある。

 愛しかないんだ。

 僕の手の中には愛がある。

 でも、愛だけなんだ。

 寂しいくらいに、愛だけなのさ。

 分かるだろう。

 君だってきづいているはずさ、僕にあるのは自分を犠牲にして作り出した案山子の人形さ。

 生贄だよ。

 このままずっと立ち尽くす。

 寂しい限りさ。

 そうして、僕は静かに丸くなる。

 どこかに流されて。

 空に浮かんで。

 それこそ花火みたいに、爆発して死んでしまうだろう。

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