封印指定と狙われた力

──王都・極秘会議室。


「“封印指定”……か」


魔導教会の筆頭法務官、グラウスが重い口を開いた。


「スキル《反射》。既に被害規模は王子の“消失”を含めて第七等級以上。

これは、世界秩序に対する“越権干渉”と見做すべきだ」


「つまり、教会は“異端”と断定するのか?」


「当然だ。我々は“神の認証しない力”を“禁忌”と呼ぶ。そして、それを持つ者には――」


バンッ!


机を叩いて立ち上がったのは、第二王女・セレナだった。


「彼は元々、私たちが“無能”と切り捨てた人間よ!

今さら“世界を脅かす”とか、“神の意志”だとか、都合が良すぎない!?」


「それでも、レイ・アルスターの存在は放置できない。

“反射”は“反撃”ではない。“決定の拒絶”だ。

あらゆる命令、魔術、祝福すら、“因果が確定する前に”弾き返される――

あのスキルは、“未来拒絶”の一種だ。存在してはならん」


セレナは、歯を食いしばった。


(あなたを追い出したのは……私たちなのに)


──一方、辺境の森の奥深く。


「……なるほど。やっぱり、狙われたか」


レイは、足元の“奇妙な死体”を見下ろしていた。

装備は一切の標章を持たず、魔法の痕跡も消去されている。

“正体不明の刺客”。王国の直属部隊ではない。だが、プロの仕事だった。


「封印指定ってのは、こういうことか?」


「ええ。表では誰も正式には言わないけど、

実際は“発見され次第、抹消”ってことね」


傍らのエリスが、倒れた刺客の杖を拾いながらつぶやいた。


「しかもこの魔法……単なる攻撃じゃないわ。“概念干渉魔術”。

レイ、もし受けてたら、君のスキルそのものを封印されていた」


「……そんな魔法まであるのか」


「あるわよ。だから言ったでしょ?“無自覚で力を使うのは危険”って。

今のあなたは、スキルに使われてるの。反射の“本質”を知らないまま、

ただ“跳ね返す”だけの存在になっている」


レイは唇を噛んだ。


(俺が弱いせいで、王子が死んだ。刺客も殺した。

 次は……もっと強いやつが来る)


「力の本質を知りたい。俺自身の手で、制御できるようにならなきゃ……」


エリスは、静かに頷いた。


「いいわ。なら次の訓練で、《反射》の内部構造を解放させましょう。

“因果の再演”と“概念の読み替え”。

あなたのスキルが、“ただの能力”じゃないことを体に叩き込むわよ」


そして、レイの背後に“第2の気配”が現れる。


「──でも、その前に一つ、超えなきゃならない壁があるわよ」


闇の中から、白い仮面をつけた男が現れる。


「お初にお目にかかる、“禁忌の継承者”。

私は〈スキル狩り〉のナンバー4、“喪失者(ロスト)”。」


レイの背筋に、電流のような緊張が走る。


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