ダンジョンに住む(なんで?)魔女に加護を貰った俺、TSしてなぜか配信者になる。いや、パーカーちゃんって安直じゃない?

九十九一

1章:TS→事故→デビュー!

プロローグ 押し売り系魔女と普通(?)の青年のファーストコンタクト

 今時、ファンタジーなんてものは珍しくもなんともない、そんな時代。

 ダンジョンと呼ばれる一昔前で考えると、とんでもない異常事態の塊みたいな存在は、時を経るごとに、不思議でもなんでもなくなっていった。


 そんなダンジョンは、資源が非常に豊富だ。

 一昔前は、資源関係の様々な問題が発生していたが、このダンジョンが資源を回収する上でとても優れた場所であると判明してからは、各国がこぞって調査、及び資源の回収を試みた。

 が、結果として、それらは上手く行かなかった。


 ダンジョン内には化け物がいたし、その化け物たちに対して銃火器は全くもって有効でもなんでもなく、むしろ、かすり傷一つ負わせることが出来なかったからだ。


 しかも厄介なことに、ダンジョンからは日々化け物――魔物と呼ばれる危険な存在たちが生まれ続け、たまに外へ出てきてしまうことがある。


 たった一匹の魔物が出ただけで大騒ぎに。

 魔物たちは、生きる物は全て食料だと思っている。


 結果として、人々は魔物への対処を早急に決めなければならなくなる。

 そうして、探索者だの、冒険者だの、魔物狩りだの、まあ、様々な呼ばれ方をする者たちが出現することになる(最終的には、探索者で落ち着いたが)。


 これらは総じて、魔物への対抗が出来る、そんな者たちで、大抵が超常的な力を身に付けている。

 剣で斬撃を飛ばしたり、火をぶっ放したり、かと思えば傷を癒したり、他にも壁を走る、宙に浮く、体が頑丈になる、などなど、その力は千差万別である。


 ……と、少々長く語ってしまったが、妙なタイミングではあるものの、本題へ入ろうと思う。

 その日、日本のとある場所、とあるダンジョンにて――。


「……はいぃぃ?」


 一人の美少女が、頬を引き攣らせ、自分の体を見下ろしながら困惑したような、そんな声を発していた。

 ことの経緯は至って単純ではあるものの、それらを語るべく、少々話を戻そう。



「ふっ――!」


 ほの暗い洞窟のような場所にて、一人の青年が持っていた炎で形作られた刀を振り下ろし、腰蓑のみを身に纏い右手には片手剣を装備した緑色の体色の魔物、ゴブリンを切り捨てる。


『ピギャアァァ!』


 魔物はそんな断末魔の如き悲鳴と共に塵となって消え、その場には数センチほどの大きさの透き通った緑色の石が落ちていた。


「うっし、これでノルマ達成、と。んじゃ、さっさと帰るか」


 青年は緑色の石、魔石を拾うと、それを小さな袋の中に入れた。


「んー、これで今日も飯が食える。ダンジョン様様だ。適当に魔物を狩るだけで、小遣いも稼げる。いいことづくめだ」


 ふっと笑みを浮かべてそんな独り言を呟く青年の頭の中は、今日の夕飯のことでいっぱいである。

 これを売った金で何を食べようか、そんなところだ。


「一発ドカン! って稼ぐんなら、やっぱ下に行くのがベストなんだがなー。正直面倒だし、ってか、普通に疲れるから嫌だわ。……あー、だがなぁ、貯金もいいしなぁ……あー、くっそ、悩む……」


 そう言ってこのまま先に進むか、それとも帰って夕食にするか迷う青年――苑間柚希そのまゆずき

 歳は二十三歳。


 顔立ちは中の上ほどで、そこはかとなくモテるような、そんなタイプだが、告白にはなかなか至らない、そんななんとも言えない容姿である。

 黒髪くせっけの男性で、探索者をしている関係上体はよく鍛えられており、服の下はがっしりとしている。


 職業は探索者。

 ダンジョンに潜り、魔物殺し、そこから手に入る魔石やドロップアイテムを売り、それで得た金銭で生計を立てる、そんな職業である。


 とはいえ、稼げる金額はピンキリであり、才能が無ければ数万稼ぐことすら難しい反面、才能がある者たちは一度の探索でひと月は余裕で暮らせるほどの額を稼いでくることもある。


 尚、柚希は後者だ。

 まあ、才能というより、努力で強くなった部類の存在ではあるが。


 そんな柚希の服装は、Tシャツに灰色のパーカー、それからゆったりめのズボンに、両手には黒の革手袋をしている。

 かなりの軽装だが、探索者たちは人並み外れた頑丈さを持つので、防具を付けても意味のない者もいる。


「……よし! 今日は金をもっと稼ぐか! 金なんざいくらあっても困らんし、どのタイミングで入用になるかわかったもんじゃねぇしな!」


 結局帰還を止めて、柚希は探索を進めることにした。


 ここで一つ、柚希が現在潜っているダンジョンは、《魔女の焔》というダンジョンだ。


 この世界におけるダンジョンは、レベルで表されており、Ⅰ~Ⅶまで存在し、この《魔女の焔》というダンジョンは、レベルⅥに相当する。


 尚、Ⅰが最低最も難易度の低いダンジョンであり、Ⅶが最高難易度となっている。

 浅い階層に登場するゴブリンですら、Ⅰの最奥に出現するボスモンスター程度には強い、そんなダンジョンだ。


 ちなみに、Ⅰのダンジョンは駆けだしの探索者や、ギルドと呼ばれる探索者たちの組織の新人教育等に使用されやすい、そんなダンジョンである。


 さて、話を戻し、《魔女の焔》について。

 このダンジョンに登場するモンスターというのは、軒並みが人型系であり、尚且つ魔法を使って来るモンスターが多い。


 例を上げるならば、レイスやアルラウネ、セイレーンなどだろう。

 階層が浅ければ、ゴブリンなどが多いが、そのゴブリンもゴブリンメイジという魔法を主体に襲い掛かって来る個体が多く、柚希が倒していたゴブリンのように、剣装備のゴブリンはこのダンジョンでは珍しい。


 内装としては、森と洞窟がメインであり、最初の階層では洞窟のような場所が続き、先の階層へ進むにつれ、森に変化していく。


 森ゾーンへ到達するまでの間、ひたすらに出現するモンスターたちを、手に持った炎の刀で切り殺していく。

 まるで通り魔である。

 すれ違いざまに切り捨て、集団で襲い掛かろうものならことごとくの攻撃を避けて、回避の途中で切り捨て、魔法を放ってくる敵がいればそれを別の敵に当たるように誘導。

 そうしてどんどんとドロップアイテムと魔石を稼いでいく。


「よーし、結構な量の金になるな、これで」


 ひい、ふう、みい、と手に入れた魔石やドロップを数えて、ホクホク顔の柚希はそこから得られるであろうお金を思い、どんな美味い物を食べようかと夢を広げる。

 ステーキもいい、寿司もいい……あぁ、しゃぶしゃぶもいいな! などと思いながら、柚希は集まって来る敵を殺し、魔石を拾う。


 絵面的には、ニマニマとした成人男性が敵を殺し続け、魔石やドロップアイテムを拾い続けるような、そんなドン引きしかねない状況である。


 尚、魔物は倒されると塵になって消えるとはいえ、普通に血は出るので、返り血でべっとりである。


「近所にこんな金蔓……じゃない、ATMがあると思うと、俺は恵まれてんな!」


 などと言っているがこのダンジョン、普通に高難易度だし、普通はパーティーで潜るような場所だ。

 最も、柚希のようにソロで探索ぅ! みたいな者もいるにはいるが、割と少数だし、大抵は安全マージンを取って、パーティーで潜るのが基本だ。


「よしよし、一旦この辺で休憩すっかなー」


 森の中を通り魔よろしく、魔物を切り殺しまくった柚希は手に持った炎の刀を消すと、ふいぃ、とやたら太い樹に寄りかかり…………


「のわぁぁぁぁあ!?」


 なぜか後ろに倒れ込み、樹の中に落ちていく。

 しかも、突然体を襲う浮遊感に、素っ頓狂な声を上げることもセットで。


「おああ→ぁ↑ぁ↓あ←ぁ→ぁ↓ぁ↑あ↓あ←あ→あ↑ぁ↓ぁ↑!!!???」


 ゴロンゴロン、ドスンドスン、ドゴンドゴン、とやたらと曲がりくねった樹の中をひたすらに転がり落ちる柚希。


 探索者を始めて、色々と強くなった体でも、やたらとあっちこっちに回転しまくるという状況に、柚希の三半規管が大ダメージを受ける!

 思わず、昼に食べた牛丼が口からリバースしそうになるが、何とか耐えきり……ぼすんっ! と、やたらと柔らかい場所に落ちた。


「うぉえっぷ……なんだよ、クソッ……き、きもちわりぃ……」


 ようやく止まったのも束の間、あまりの気持ち悪さに、胃液が込み上げて来そうになる。

 というか、ちょっと吐きそうだし、ほんのちょっとの衝撃で全てをぶちまけそうになっている。

 心の中で、おむすびころりんのおにぎりの気持ちってこんなだったのか、などと思った。


「うっぷっ……や、やばっ……ま、マジで、は、吐くやつぅ……み、みず……みずをぉ~~~~っ……」


 ごろんごろんとその場で悶絶する柚希は、猛烈な吐き気に襲われながら周囲を見回した。

 そこには、某となりの○○○に出て来る、例のあいつが住んでいそうな、どこか幻想的な場所だった。


 淡い緑で満たされた樹の幹と思しき壁には、濃い緑のツタが這っており、床はどこかの芝生かと思わされるほどに妙にふかふか。

 天井からは、木漏れ日が差し込んでおり、なかなかに明るく、むしろその木漏れ日があるからこそ、不思議と幻想的に見える。


 が、がしかし。


「おあぁぁ~~~っ……き、気持ちわりぃ~~~~っ!」


 そんなもの、三半規管をぶっ壊される勢いで吐き気と格闘中の柚希には関係なかった。

 むしろ、こんな綺麗な場所で吐きたくねぇ! と、ひたすらに葛藤している!


「――人の子か」


 と、一人で吐き気と三半規管のダメージとひたすらに格闘していると、頭上から聞いていて心地よい、透き通る綺麗な声が聞こえて来た。


「まさか、我が隠れ家を見つけようとは。なるほど、こちらの人の子はかなりの幸運らしい」


 声の発信源は、この謎の空間の奥、そこにある木でできた椅子に本を片手に腰かけ、魔女、と形容するほかない、銀髪に蒼い瞳をした絶世の美女だった。

 しかも、とてもスタイルがいいというおまけ付き。

 そんな魔女は、突然現れた柚希を見て、一瞬目を丸くさせたが、すぐに小さく笑うと席から立ち上がる。


「……おえぇっ! や、やべぇ、ま、マジでっ、マジで吐くぅ……!」

「しかし、ここに辿り着いたのも何かの縁、どれ、この儂が力を確かめてやろうではないか」

「あっ、やばっ、も、もう、無理……は、吐くっ……」

「って、そこの少年よ、本当に大丈夫か!? 何故我が隠れ家で吐こうとする!? あっ、ちょっ! 吐かないで!? ほんっとにお願いだから吐かないで!?」


 自分をガン無視して今にも吐きそうになっている柚希に、魔女らしき女性はさっきまでの余裕はいずこへと言わんばかりに今にも吐きそうな柚希を心配し、そして吐かないでほしいと必死の懇願。


「いやっ、こ、これ、ま、マジ無理っ……おろろろろろ……!」

「いやぁぁぁあああああああああ!?」


 だが、柚希の逆流する物を留めるダムが遂に決壊し……その場にぶちまけてしまい、魔女は悲鳴を上げた。



「いやー、吐いたらメッチャスッキリしたわ」


 戦う気満々だった魔女は出鼻をくじかれ、なぜか対面するように座り、柚希は爽快! と言わんばかりの爽やかな表情でそう言い放った。


「そりゃそうじゃろうな!? まったく、人の隠れ家で思いっきり吐くとか、おぬしデリカシーって知っとるか!?」


 初手のミステリアスな雰囲気を醸し出していた魔女だったが、柚希リバース事件のせいでそんな物はどこかへ行き、気が付けばツッコミを入れる美女に成り下がっていた。


「だったらあんな入り口にすんじゃねーよ!? なんだあの入り口!? 曲がりくねりすぎんだろ! 蛇か? 蛇なのか!? 蛇モチーフですかこの野郎!?」

「野郎じゃないが!? まったく、ああいう滑り台的な物を入り口にするのが夢だったんじゃ。別にいいじゃろ」

「そんな理由かよ……ってか、ここどこだ? あと、あんたは誰だ? つーかここダンジョンの中だよな? なんで人が住んでんだよ」

「質問が多いのう、少年」

「少年て……いや俺、二十三歳だぞ? 普通に大人なんだが? ちゃんと、税金を納めるように言われてる、悲しき大人だが?」

「知らん。儂からすれば、おぬしらは少年少女でしかない」


 そう言いながら、鼻で笑って一笑に付す魔女。


「いやまあ、探索者ってのは強くなればなるほど、寿命が延びるってのは有名だが……」


 見た目通りの年齢じゃない探索者もいるしなー、と付け足す柚希の言葉に、魔女が興味を示す。


「ふむ、探索者? なんじゃ、それは?」

「何って……探索者は探索者だろ? ダンジョンに潜って、魔物を殺して、それで得た魔石やらドロップアイテムを売って金を得る、そんな奴らだが?」

「……ふむ、冒険者のようなものか。まあよい。おぬし、見た所なかなかに面白い力を持っているのう?」

「は? 力? あー、もしかしてこれか?」


 そう言いながら、柚希は手に炎の刀を出現させる。

 それを見た魔女は、少し笑って頷くと口を開いた。


「そうそれじゃ。ふむ……魔力量の少なさを補うためのオリジナル魔法、と言ったところか?」

「正解だ。ってか、わかるのか」

「これでも大魔女じゃからな。魔法であれば、即座に解析可能というものよ」

「へぇ、そうなのか」

「そうとも。しかし、なるほど、魔法を放つのではなく、各属性の魔法を圧縮・凝固し、それを武器の形にする、と。発想としては大したことはないが、難易度は高いのう」

「大したことないって……いやまあ、俺もそう思うけどよ……」


 自分で必死こいて創り出した魔法の発想が大したことないと言われて、頬を引き攣らせる柚希だったが、すぐに自分もそう思うからなぁ、となんとも言えない顔になる。


「だが、なかなかに面白い。魔力が少ないのならば、少ないなりに戦う術を考える。それこそが創意工夫というものじゃ。しかもその魔法は、魔法を圧縮している関係上、かなり強力じゃな。身体強化も施せば、かなりの力となるじゃろう」

「おいおい、俺の手の内を明かしまくるなよ……」

「ふふん、この儂相手に手の内を隠すなど不可能というもの。……とはいえ、儂はおぬしを気に入った」

「気に入ったって……いや俺、お前と会ってまだ数分だぞ? まあ、その隠れ家でぶちまけたけども」

「そこは気にしないでくれ。儂は基本、直感的に生きている人間。それに……元々外の世界、というのも気にはなっておったからのう」


 そう話す魔女は、どこかわくわくとした様子だった。


「外? 何お前、ずっとここに暮らしてて、外に出たことはないのか?」

「無いな。まったく。これっぽっちも」

「マジかよ……ってか、じゃあなに? お前人間じゃないの?」

「ふぅむ、その質問は色々と正確ではないが……まあ、人間という部類で構わんよ。人よりちょっと長く生きた人間、その程度の認識でよい」

「おうそうか。じゃあ話し方も含めて……ババアってことのわぁぁ!?」


 ババアと言ったところで、突如柚希がいた場所に直径五十センチ程度の雷が勢いよく通り過ぎて行き、後ろの壁に激突。

 ドガンッ! という音を立てて、壁に穴が空いた。


「おっとー、手が滑ったぞー」

「ちょっ、お前今殺す気だったろ!?」

「こーんなレディに向かって、ババアとか言うデリカシー0の男は、殺されても文句はなかろう?」

「……じゃあお前いくつだよ?」

「さあのう。生憎と、二十を超えた辺りから年齢を数えるのを止めたのじゃよ。あの辺りから、体の成長なんてないし、儂は膨大な魔力でほぼ不老じゃからな。数十か数百か。まあ、年上の美魔女、と理解しておけば問題はない」


 ぱちっ! とウィンクをしながら、そう言って来る魔女に、柚希は深くにもドキッとしてしまったが……相手はババアの可能性大の女性だと思い直し、見惚れそうになるも頭を振り払って追い出す。


「で? 気に入ったからなんだ? 俺はそろそろ帰りたいんだが?」

「あぁ、それか。いやなに、おぬし、儂の加護を受けてみないか?」

「加護? なんだそりゃ?」

「簡単に言えば、儂がおぬしに力を授けるということじゃな。儂の加護じゃから、相当強力じゃぞ? どうじゃ? 受けておいて損はないと思うが?」

「……うさんくせぇ」


 突然力を授けようとか言われた柚希は、ものすごい怪訝な表情でうさんくせぇと返す。

 むしろ、ここで喜んでぇ! とか言う奴は、碌なもんじゃない、とも考える。


「それもそうじゃな。とはいえ、おぬし、強くなりたいとは思わないのかの?」

「そりゃ思わんでもないが……だが俺、別に最強になりてぇ! とか思ったことはないぞ? 適当に暮らしてりゃいいわけで」


 それに、今のままでも割と十分だしな、と付け加える。


「まあまあ、きっと楽しいぞ? この儂の加護とか、儂を知る者であれば喉から手が出るほど欲しい! そう思えてくるほどの強力な物じゃぞ? ついでに、健康にもなるし、魔力量も大幅アップ。魔法系に対する適正ももちろん向上!」


 やたらと自身の加護について、熱心にプレゼンをしてくる魔女に、柚希はさらに怪訝そうに顔を顰める。

 絶対に何か裏がある誰これ、とでも言わんばかりの表情である。


「それが本当なら魅力的だが……正直信じらんねぇ……そもそも、こんなダンジョンの奥に住んでる時点で、色々おかしいだろ。なんでダンジョンなんだよ」

「さあのう。そんなことは知らんよ。儂は最初からここに住んでいたんじゃからな」

「は? それはどういう……」


 かなり気になるセリフを吐いた魔女に、柚希はどういうことかと聞こうとするも、それよりも早く魔女が動く。


「ともあれ、じゃ! 儂は非常におぬしを気に入った! なので、強制的に加護を付けてあげようではないか!」

「いやいらねぇよ!? って、あっ、ちょっ!? 何こっちに手の平向けてんだ!?」

「え? 加護を与えるんじゃけど?」

「だからいらねぇってのわぁ!? な、なんだ今度は!? ぶっとい蔦か!?」


 押し付けようとしてくる魔女に何度もいらないと言っていると、突然地面からぼこんっ! と音を立てて極太の蔦が飛び出し、柚希に襲い掛かった。

 間一髪でそれを回避する柚希だったが、魔女は涼しい顔でさらに蔦の数を増やしていく。


「ちょっ、お、おまっ! な、なにしてくれんの!? って、あぶねっ!?」

「ほほう、おぬし、なかなかによい動きじゃのう。うむうむ、素晴らしい。これならば、儂の加護も上手く活用してくれそうじゃな」


 手加減しているとはいえ、紙一重で自身の蔦による攻撃を避ける柚希に、魔女は満足げに頷きながら、さも受けるのが当然かのようなことを言って来る。


「ふざっけんな!? だからいらねぇって言ってんだろ!? って、ぐあああ!?」

「よーし捕まえた!」


 四方八方から襲い掛かる蔦を回避し続けていた柚希だったが、多勢に無勢過ぎて、結局蔦に絡み付かれてしまった。


「は、離せっ! ってかこれ、どう考えても善意で加護を授ける奴のやり方じゃねえだろ!? 吐いたからか? やっぱ吐いたからか!? それはもうすんませんでした! だから離してぇぇえ!?」

「安心せよ。おぬしに加護を授けたら解放するからのう。だからおぬしは、諦めてこの儂の加護を受けるのじゃ!」

「いやそれ悪役のセリフぅぅぅ!? って、あっ、やめっ! のああああああああ!?」


 じたばたともがき、離せと懇願する柚希だったが、抵抗虚しく、魔女の手から放たれた白い光の奔流に飲み込まれてしまった。

 その光は柚希の体にまとわりつくと、余すことなく柚希の体に入り込んでいった。


「よーし成功……って、あ」

「おいちょっと待て!? なんだ今の『あ』は!? って、は?」


 光が収まった後の柚希を見た魔女は、成功してよかったぁと思った直後、やっちまったと言わんばかりの声を漏らし、柚希はそれに対するツッコミを入れ……自分の喉から発せられる声に違和感を覚えた。

 なんか、おかしくね?

 と。


「あー、なるほどー……そうかー……魔女、じゃからな……ふんふん、なるほどなるほど……これはよい実験結果が得られたのう。あとで、我が研究ノートに記録を残しておくとしよう。とはいえ……いやまあ、うん、ほれ、あれじゃ。失敗は成功の母と言うじゃろう? つまり、そう言うことじゃな」

「どういうことだよ!? いきなり実験だの失敗だの! 俺の体に何しやがった!?」

「しばし待て。あー《創造》。……ハイ鏡これ」


 何かの魔法を唱えた直後、突然鏡が生成され、それをどこか気まずげに視線を逸らしながら、柚希の目の前に。

 そこに映るのは、黒髪黒目の純日本人……などではなく、かなり長い銀髪に右目が蒼く、左目が紅色に染まった、どこからどう見ても小学生ほどの小さな少女だった。


「……へ?」


 そこに映る銀髪ロリっ娘が、柚希の声と連動するようにぽかーんとしたなんとも間の抜けた表情を浮かべた。


 そして、パチパチ、と瞬きをしたり、にこっと笑ってみたり、かと思えばきりっとした表情を浮かべてみたりした結果……そこにいるのは、自分自身である、それがなんとなく、漠然と、認めたくないが、そう思った。


 結果として。


「……はいぃぃ?」


 いつの間にか拘束が解除された柚希は、その鏡に映る人物を見て、自分の体を見下ろし……そして、困惑したような、そんな声を零すのだった。


=====================================


 初めましての方は初めまして、別作品(多分ロリV)を見ている方はどうも、九十九一です。

 本作は、以前魔女っ子でダンジョンな話が見たい(だったかな?)というコメントから書き始めたダンジョン配信物となります。

 配信物になりますが、まだ主人公はなりません。

 なので、そこそこ時間が経ってからになると思いますが……そこは許してください。

 例によって、私が書くTS物ということもあり、主人公はやっぱりロリだし銀髪ロング。私の趣味がこれなんだから仕方ないじゃないかッ……!

 ともあれ、少しは書けているので、多分一週間ちょっとは毎日投稿できるんじゃないかなと思います。それが終わったら……んまあ、週一くらいで投稿出来たらなーとは思います。基本はロリV書いてるんで……。

 ともあれ、気に入っていただけたら読んでいただけると、私がとても喜びます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る