第5話

あれから3日、黒瀬さんは学校でも配信でも変わらず接してくれる。


いや、変わらず接してくれるというのは少し語弊がある。


「おはよ、晶くん」

「おはよう黒瀬さん」


なんだか前に比べて距離が近づいた気がするのだ。

名前は下の名前で呼んでくれるしどこかグイグイ来るようになった。


「なになに?最近黒瀬さんと仲いーじゃん」

「オルカのことでな」(嘘はついてない)

「へぇ〜」


そうして今日の授業が終わる、今日は部活がないので帰って作り置きを作っておこう。


「待って晶くん」

「黒瀬さん」

「明日って暇?」


明日か…特に用事は入っていないが…


「良かったら明日一緒に遊ばない?水族館のチケット貰ったんだ」

「水族館か…」


金がかかりそうだが…せっかく誘ってくれたんだ…無碍にするのは失礼か。


「いいですね、どこ集合にしましょう」

「じゃあ9時に駅前のハナ公前で」

「わかりました」

「うん、それじゃ」


パタパタと小走りで帰っていく彼女を見送り少し考える。


外行きどこにしまったっけな。






「おっはよ晶くん、待たせちゃった?」

「おはようございます黒瀬さん。いえ、俺もさっき来たところです」

「そっか、それじ行こっか。シャチ楽しみだな〜」


そういえば2D立ち絵も名前もシャチモチーフだな。好きなのだろうか。


「シャチ、好きなんですか?」

「そりゃ好きじゃなかったら自分のもう1つの名前にオルカってつけないでしょ〜。ま、薫からオルカにできるのもあったけど」


確かに、単純だが気が付いてなかった。


「それと、今日は敬語禁止!!付き合ってなくてもデートは成立するんだぞ」

「わかったよ、薫」

「いきなり名前呼び捨てはダイタンじゃないか」

「苗字呼びはしっくりこなさそうだったから」


案外満更でもなさそうな顔をして笑う薫


正直すごいドキドキする、いやいやガチ恋厄介リスナーにはなるな自分!!


「顔真っ赤w」

「そりゃ憧れの最推しとデートですから」

「ふふ、ありがとう」


その後もたわいない会話をしつつ電車に揺られ海沿いの水族館へ向かう。


「この水族館は日本でも少ないシャチの飼育をしててね、鯱のショーが目玉でもあるんだ」

「そうなんですね、水族館なんて子供の時以来ですから楽しみです」

「そーいえば晶くんって苦学生?」

「いや、母が3年前に他界してから父が男で1つで頑張って育ててくれたんだが…その父も過労で倒れちゃて、今は地元の田舎で休養中」

「大変じゃん、頑張ってるんだね」

「父と母の蓄えがだいぶあるし俺自身奨学金をもらってるからなんとか。結構火の車だけどね」

「ごめんね、あんまり話してて気持ちいい話題じゃなかったよね…」

「いいんだ、母の事はもう折り合いつけれてるし。父も死んでるわけじゃない、週1位のペースで連絡取ってるし」


少し微妙な空気になってしまったが、電車のアナウンスが目的地の最寄り駅を伝えると、彼女は僕の手を引いて軽い足取りでホームを出るのであった。









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