パート30: 死闘と師匠からのヒント?

守護者たちの猛攻は、凄まじかった。

俺の古代魔法をもってしても、彼らの特殊な能力の前には、完全な無効化は難しかった。

四足獣型の岩石攻撃は空間ごと消滅させても、次の瞬間には別の場所から現れる。

人型が放つ空間歪曲レーザーは、俺の防御を僅かに貫通してくる。

球体型の精神干渉は、集中力を乱し、他の攻撃への対応が遅れる。


リリアーナが、俺が攻撃を受ける度に治癒魔法をかけてくれるが、彼女の魔力はみるみる枯渇していく。

ミュウは、恐怖に震えながら俺の足元に隠れている。

シルヴィアは、守護者のアームやレーザーから俺たちを守るように、必死に剣を振るう。だが、守護者には傷一つつけられない。


「っ…リリアーナ!」


リリアーナが、守護者の放ったエネルギー波を受け、血を吐いて倒れ伏した。

俺の怒りが沸点に達する。


(くそっ…! このままじゃ…!)


俺は、現在の古代魔法の使い方だけでは、こいつらを完全に止めるのは無理だと悟った。

単純な破壊や防御では、彼らの特殊な「法則」を破れない。


(何か…何か手はないのか…? エリック爺さんが言ってたこと…『因果律』『概念』…叡智の結晶で感じた可能性…)


苦戦の中で、俺の脳裏に、エリック老人から学んだ言葉や、遺物『叡智の結晶』に触れた時の感覚が、フラッシュバックした。

『世界の理を感じるのじゃ…』

『対象の『位置』という概念を操作する…』

『対象の『存在』を規定する概念を歪める…』

『遺物は、貴方様の知らない、古代魔法の更なる可能性を開放する…』


「…概念…法則…!」


俺は、守護者たちを構成している「法則」そのものに、古代魔法で干渉することを考えた。

彼らが持つ「魔法無効化」「物理抵抗」「自己修復」といった特殊能力。

それらは、彼ら自身が持つ「法則」によって成り立っている。


俺は、守護者たちに向けて、新たな古代魔法を発動した。

イメージは…「対象の『特殊能力』という法則を、一時的に『無効』にする」。


スッ…


目に見えない力が、三体の守護者を纏う。

守護者たちは、一瞬動きを止めた。

そして、彼らから放たれていた特殊な波動が、弱まったのを感じた。


(効いた! 特殊能力が、一時的に解除された!)


その隙を見逃さない。

俺はすかさず、守護者たちに向け、別の古代魔法を発動した。

今度は、「対象の『存在』を、『塵』という概念に書き換える」。


シュゥゥゥゥ…ン


三体の守護者の巨体が、あっという間に塵となり、崩れ去っていく。

特殊な法則によって守られていた彼らは、その法則を破られた瞬間、現代の魔物と同じように、俺の古代魔法によって容易く消滅した。


死闘は終わった。

広間には、守護者がいた場所に残された、大量の魔石や、見たことのない素材、そして…


(リリアーナ!)


俺は、倒れ伏しているリリアーナに駆け寄った。

顔色は真っ青で、息も荒い。守護者の攻撃による内臓損傷だろう。


「リリアーナ! 大丈夫か!?」


「あ…アルト様…」


彼女は弱々しく微笑む。


俺は、古代魔法で彼女の体を癒やす。

エリック老人から学んだ、より精密な「生命力」と「治癒」の概念操作。

守護者の攻撃で受けた損傷が、みるみるうちに回復していく。


「あ…体が…暖かい光に…アルト様…ありがとうございます…!」


リリアーナの顔色に血色が戻る。

ミュウが、怯えながらもリリアーナに駆け寄り、「リリアーナおねーさん、だいじょうぶ?」と心配そうに声をかける。


「大丈夫よ、ミュウちゃん…アルト様が助けてくださったわ…」


シルヴィアは、無言で周囲の安全を確認している。


(あー、マジ疲れた…)


守護者との戦闘は、精神的にかなり消耗した。

ヒロインたちが無事でよかった。


死闘の末、俺たちは守護者を撃破した。

目の前には、『天空の鏡』が安置された祭壇がある。


ようやく手に入る。

次の遺物。

そして、俺の力をさらに高めるもの。


遺物『天空の鏡』が、淡い光を放ちながら、俺たちを待っている。

達成感と、まだ僅かに残る疲労感。

そして、この遺物を手に入れた後、待ち受けているであろう、さらなる面倒事への予感。


俺は、祭壇へと歩み寄った。

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