パート29: 遺物を守る新たな脅威

古代遺跡の最奥部。

『天空の鏡』が置かれた祭壇の前に、その姿を現した守護者たち。

それは一体ではなく、三体だった。

一体は、巨大な四足獣のような形。全身は複雑な幾何学模様の装甲で覆われ、そこかしこに古代文字が刻まれている。

もう一体は、細身で長い腕を持つ、人型に近い形。背中には翼のようなパーツがあり、空中を静かに浮遊している。

最後の一体は、球体のような本体から、無数の触手のようなアームが伸びている。アームの先端には、様々な形状のツールや武器らしきものが付いている。


三体から放たれる気配は、王都地下で遭遇した守護者の比ではない。

圧倒的で、そして理解不能な、古代文明の力の結晶だ。


「…やはり、強そうだな」


俺は呟いた。内心では「めっっっっっっっっどくせえ!」と叫んでいた。

リリアーナ、ミュウ、シルヴィアも、その威圧感に息を呑んでいる。

ミュウは、俺の服の裾を掴む手が震えている。


守護者たちが、一斉に攻撃を開始した。

四足獣型は、大地を揺るがす咆哮と共に、地面から岩やエネルギーの柱を隆起させる。

人型は、空中から追尾する光弾や、空間を歪ませるようなレーザーを放ってくる。

球体型は、無数のアームから、物理的な攻撃、エネルギー波、さらには精神に直接干渉するような不快な波動を放ってくる。


俺は、それらの攻撃を、古代魔法で迎え撃った。

地面の隆起を平らに戻し、光弾やレーザーを空間ごと消滅させ、物理攻撃を受け流す。


だが、守護者たちの攻撃は、単純なものではなかった。

俺の古代魔法が、一部、効果を発揮しない、あるいは弱められるのだ。

例えば、空間消滅が完全に効かなかったり、物理的な拘束がすぐに解除されたり。

特に、球体型からの精神攻撃は、僅かだが俺の意識を乱す。


(なんだこれ!? 俺の魔法が効きにくいのか!?)


王都地下の守護者も特殊だったが、こいつらはそれ以上だ。

俺の圧倒的な「力」を、彼ら自身の持つ、古代文明の「法則」で相殺しているかのようだ。


守護者の猛攻は続く。

俺は対処に追われる。

リリアーナは、俺が攻撃を受けた際に、懸命に治癒魔法をかけてくれる。

だが、守護者の攻撃は、現代の治癒魔法では追いつかないほど強力だ。彼女の顔色が青ざめていく。


ミュウは、危険を察知して、俺の足元にぴったりと張り付いている。守護者から放たれる精神攻撃に、さらに怯えているようだ。


シルヴィアは、守護者の動きを見極め、俺の死角を突いてくる攻撃に対し、自身の剣技で迎撃する。

彼女の剣は、守護者の装甲にはほとんど傷をつけられないが、攻撃の軌道を僅かに逸らしたり、注意を逸らしたりと、的確なサポートをしてくれる。

しかし、彼女も守護者の攻撃を受け、軽い傷を負い始めている。


(まずい…このままじゃ、ジリ貧だ…!)


俺は、このまま現在の古代魔法の使い方だけでは、守護者を完全に無力化するのは難しい、と感じていた。

力の限界。

いや、力の限界ではない。使い方、戦略の限界だ。


(エリック爺さんが言ってたこと…『因果律に干渉』『概念を操作』…叡智の結晶で感じた、新たな可能性…!)


状況を打開するため、俺は頭を高速回転させる。

単純な破壊や無効化ではない、新たな古代魔法の応用方法。

守護者の「無敵」という法則そのものに干渉するか?

彼らの「存在」を規定する概念を歪めるか?


守護者たちの攻撃は、さらに激しさを増した。

四足獣型が咆哮し、広間全体を崩壊させようとする。

人型が、俺の脳裏に直接、不快な幻覚を送り込んでくる。

球体型が、無数のアームで俺たちを捕らえようと迫る。


リリアーナが、守護者の攻撃を受け、血を吐いて倒れ伏した。

「リリアーナ!」


俺は、怒りを込めて叫んだ。


守護者の猛攻は続く。

絶望的な状況。


だが、その時。

俺の中で、新たな古代魔法の応用方法が、閃いた。

エリック老人の言葉と、遺物『叡智の結晶』で得た可能性が、一つに繋がる。


(これだ…この方法なら…!)


血を流して倒れ伏したリリアーナ。

恐怖に震えるミュウ。

傷つきながらも俺を守ろうとするシルヴィア。


そして、目の前に立ちはだかる、古代文明の遺物守護者たち。


俺は、守護者に向けて、新たな力を発動しようとしていた。

死闘は、まだ終わらない。

次なる一手で、この状況を覆せるのか。

緊張感と、僅かな希望が交錯する中、俺は守護者たちを見据えた。

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