あとがき 

 元ネタの鯉江氏のリーズニングパズルでは、毎回その作品を書くために影響を受けたミステリー小説を一冊紹介するコーナーがあるのだが、

 今回、私がタイトルを捩った鮎川哲也氏の『人それを情死と呼ぶ』をそもそも私が読んでいないので紹介出来ない。


 というわけで、本作執筆を思いついた話でもしようか。

 事の発端は私が海外のニュース番組を見ていた時、「麻薬根絶を謳う大統領の息子が麻薬中毒として逮捕され、大統領は息子を死刑にすることを宣言した」というトピックが上がってきたことだ。

 結局、死刑は取りやめになったが、この宣言直後は「自分の息子であっても正義のために殺すという決断をした大統領」という姿を見せることで国内外の人間からの支持が上がったことを覚えている。

 もちろん私としてもすごい決断だなと感じたわけだが、それと同時に脳内の連城三紀彦的存在が語りかけてきた。

「もし、すべてが逆だったらどうする?」と。


 これが一つの大ネタとして頭にこびり付いていて、一度ちゃんとした形にしたいと常々考えていたが、困ったことが発生した。

 本作がアカウント作成後の第一作であることから分かる通り、私は今まで小説というものをほぼ書いたことがない。少なくとも1万字を超えるような起承転結のハッキリした文章はこれが初めてだ。

 日本を舞台にした小説すら書いたことない人間が、外国を舞台にした小説なんて書けるわけがなかったのだ。

 

 そこで日本での同窓会と組み合わせることにした。

 日本の同窓会であれやこれや話している時に、過去にクラスメイトだった外国人が処刑されるニュースが入ってくる――これなら何とかなるかもしれない。

 ただ書いているうちに、何故か同窓会の方がメインになってしまった。読んでくれた友達には「これA国の話必要?」ということを言われてしまったのだが、A国の話から書き始めてるんだから仕方がない。

 あの時に私が大ネタだと思ったものは書いてみるとサブネタに収まってしまった。創作とはそういうものなのかもしれない。


 さて、作中の小ネタ解説もしていこう。

 実のことを言うと本作を書くまで中島みゆき氏の『糸』という曲をちゃんと聴いたことがなかったし好きでもなかった。ただなんとなくサビの歌詞はうっすら覚えていた。

 『糸』のことを思い付いたのは、本作をどう書こうか悩んでいた時に火刑に処される人に絡みつく炎がまるで赤い布がはためいているように見えたからだ。

 試しに『糸』について調べてみると、この曲が宗教団体と大きく関わり合いがあることが分かり、今回の競作のテーマである『宗教』と合致した。

 さらに調べると『糸』は元々92年発売のアルバムに収録された作品に過ぎなかったが、BANKBANDという音楽グループがカバーして2005年に住友生命のCMに採用されたことで人気が出たらしい。92年に生まれた子どもが2007年に合唱コンクールの曲として採用するには最高に適しているんじゃないかと運命的なものを感じ、これで書こうと思った。

https://web.archive.org/web/20200928110929/https://mrchildrenlove.com/bankband-ito/

当時のファンによるブログ。2005年に流れていたらしい。


 本作の中学生編では2007年の1学期が舞台となっている。具体的な日時は設定していないが、百目鬼先生が言った「ドラえもんがなんとかしてくれる」云々の話題は2007年6月27日の広島高等裁判所で殺人事件の被告人の発言であることから、おそらく6月28日から1学期の終業式である7月20日(金)の間となっている。


 本作を書くにあたるネタとしてはこんなところだろうか。

 ここまで読んでくださった方がもしいれば、ありがとうございます。

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人それを仕合わせと呼ぶ 二保公房 @41268_7935

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