人それを仕合わせと呼ぶ

二保公房

前書きを兼ねた問題文

 この作品は社会人ミステリ研究会という団体が2022年に行った「共通のテーマで小説を書こう」という企画に触発されて制作されました。

 2022年のテーマは『宗教』です。


 宗教というテーマで関連するトリックは前々から脳内にあったので、それで書けばいいと考えていましたが、せっかくなので犯人の名前を指摘することが出来るタイプのミステリーを書くことにしました。

 古典的な『読者への挑戦状』形式の作品というわけです。

 ただ、この形式も時代の流れによって多様化しており「挑戦状が挟まれるまで何を推理すればいいのか分からない」といったご不満があちらこちらで囁かれております。

 タイムパフォーマンスが重視される昨今、読者への挑戦状を見てから本文を読み返すという行為にストレスを感じる方も少なくありません。

 そこで私は宣言します。

 まず前書きの段階で読者への挑戦状を配置して、何を推理すべきかを明確にした上で読者に本作を読んでいただこうと。


 【今回の殺人事件の犯人は主人公である『僕』です。皆様には“犯人の名前”を指摘していただきます】


 また、本作は鯉江榎氏による傑作推理パズル群『リーズニングパズル』の影響を強く受けています。

 そのため第一章から第五章までが問題文。第六章から第八章が探偵たちの会話形式によるヒントとほぼ答え。最終章がその後の末路といった構成になっています。

 推理には少し知識が必要な場面があるので第七章にて、解答の半分を明かしています。

 残りの半分につきましては作中の情報と一般常識だけで推理可能だと自負しています。

 作中に数多く出てくる『中島みゆき』要素も『リーズニングパズル』要素も謎解きには必要ありません。

 もちろん小ネタのようなものは大量に挟んでいるので、中島みゆき氏の『糸』『地上の星』、リーズニングパズルの『FILE3:モルワイデ鯉、現れる!』と『FILE13:モルワイデ鯉、ふたたび!』を履修しておくと少しだけ楽しさが上がるかもしれません。どちらも名作です。



 最後に。

 これまでまともに小説というものを書いたことがないせいか、一番苦労したのは登場人物の名前の付け方です。

 ︎︎佐藤?鈴木?田中?なのも記号感が強すぎて違和感ありますし、かといって現実に存在しない読み方のキラキラ過ぎるのも好みではありません。

 そこで私が好きな漢字五十選を並べてみて、そこに使われている文字を登場人物たちに当ててみました。そのため些か難読苗字のオンパレードになってしまいましたがご容赦いただきたいです。

 もし読めない漢字がありましたら以下を参考にしていただければ幸いです。


 

生明(あざみ)

安心院(あじむ)

丁嵐(あたらし)

畔蒜(あびる)

蘭(あららぎ)

有栖川(ありすがわ)

王生(いくるみ)

石動(いするぎ)

九(いちじく)

垂髪(うない)

冲方(うぶかた)

金糸雀(かなりあ)

如月(きさらぎ)

雲母(きらら)

久遠(くおん)

日下(くさか)

東風平(こちんだ)

信楽(しがらき)

東雲(しののめ)

東海林(しょうじ)

不知火(しらぬい)

村主(すぐり)

梵(そよぎ)

小鳥遊(たかなし)

廿樂(つづら)

勅使河原(てしがわら)

九十九(つくも)

栗花落(つゆり)

凸守(でこもり)

百目鬼(どうめき)

生天目(なばため)

春夏秋冬(ひととせ)

雲雀(ひばり)

杜鵑(ほととぎす)

時鳥(ほととぎす)

子規(ほととぎす)

不如帰(ほととぎす)

杜宇(ほととぎす)

蜀魂(ほととぎす)

田鵑(ほととぎす)

沓乞(ほととぎす)

無常鳥(ほととぎす)

黄昏鳥(ほととぎす)

万城目(まきめ)

薬袋(みない)

物集(もずめ)

月見里(やまなし)

楪(ゆずりは)

四方田(よもだ)

四月朔月(わたぬき)

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