ホッチキスの音(2)
文化祭の準備でごった返す教室の隅っこ、悠真が悪戦苦闘していた。
机に乗って、ポスターを壁に押し当てている。
ホッチキスを手に持ったまま、明らかに手が足りてない。
「手、貸そっか?」
声をかけると、悠真は振り向いた。
ちょっと情けない顔で「助かる」って言った。
思わず笑った。
私は悠真の隣に立って、ポスターを押さえた。
指先が、彼の手にちょんと触れる。
「動かないでよ?」
「はいはい」
生返事だったけど、大人しくしていた。
私はホッチキスを持って、ポスターを留める。
パチン、パチン。
この音、けっこう好きだなと思った。
悠真の横顔が、すぐ近くにあった。
でも、あんまり見ないふりをした。
全部留め終わって、私は胸を張った。
「はい、完璧」
悠真はポスターをしげしげと眺めたあと、ボソッと言った。
「ちょっと、曲がってね?」
「……えっ」
思わず眉をひそめると、悠真はニヤニヤしている。
むかつく。
「まぁ、許す」
追い打ちをかけるように言われたので、ホッチキスの針を取り出して、軽く悠真に向けた。
「動いたからでしょ」
「いや、完璧って言ったのおまえだからな」
言い合いながら、なんだかんだで笑ってしまった。
午後の光が、教室いっぱいに広がっていた。
ポスターも、ペンキも、どれもこれもきらきらしてた。
なんだかすごく、楽しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます