第39話 あまりにも手が届きそうで
キッチンで、夫がコーヒーを入れている。
私は洗濯物を干している。
沖縄のラジオが流れていて、時々、独特の笑い声が響く。
私の分のパンが皿にのっている。
坊主頭ではない夫がコーヒーの入ったマグカップと皿をテーブルに並べる。
二人分の洗濯物はすぐに干し終わる。
向かい合わせには座りたくなくて、斜めになるように椅子を移動して座る。
結局、キッチンに最も近い場所に座り、窓の外に洗濯物に強い光が当たっているのを見ることになる。
何度も行ったことがあるショッピングセンターの情報がラジオから流れてくる。
狭い島だから、と私は思っている。
だから、パーキングも二箇所しかないし、と。
薄い涙が頬をつたっていく。
夢だと、わかっていた。
でも、あまりにも手が届きそうで。
「いいよいいよ、私がやるよ」と言わずにいられる自信がなくて。
だから、夢は夢で。
もう少ししたら、完全に目が覚める。
そしたら、溢れそうになっているゴミ箱を横目にトイレへ行き、曇っている鏡に年相応の自分を映し、売店へ行こう。
この前買った、ばくだんおにぎりがおいしかったから、もう一度買おうか。
まだ買ったことのない商品に挑戦しようか。
もう少ししたら。
瞼の上のタオルを取ってから。
パーキングで眠る〜私の人生は何だったの yuzu @yusotok
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