三十代の転職

白川津 中々

◾️

転職をしよう。


そう思い立ち求人サイトを調べるも、条件に合う仕事がない。というより、俺を必要とする会社がないのだ。スキルも実績もなく、対人業務に挑む勇気もない俺を雇う企業などどこにあるというのか。三十を超えて何も積み上げてこなかった人間など社会は必要としていない。だから十代、二十代の頃に、歯を食いしばって、嫌なことでもできないことでも何でもやるべきだった。そんな当たり前のことを、取り返しがつかない歳になって思い知る。受け皿としてある現実的な選択肢は、介護、飲食、小売、あとは生産。いずれも豊かな暮らしを支えるために必要な仕事だが、待遇が悪い。人に必要な仕事ほど現代の社会的価値観の中で不要とされる人間が従事する仕組みができあがっている。俺のような人間は人並み以下の扱いを受け入れなければ生きていけないのである。まるで奴隷だ。


惨めさが込み上げてきた。与えられた人生に絶望しかない。あまりにも、哀れだった。こんな人生ならば、いっそ……


求人と、今の仕事を照らし合わせ、己の無学無能と向き合う。歳という重りが、強く、伸し掛かる。残された道は、多くない。

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