引きこもりの俺が最強ハンターってマジですか?
タナカタロウ
第1話 憂鬱な1日
「はぁ……今日も最悪な気分だ。
何もしたくない。体もだるい。なにもできない……」
何日も、何ヶ月も続く“最悪の目覚め”。
もう数年開けられていない、遮光100%のカーテンからわずかに日が漏れ出ている。
薄暗い部屋に
2年前からは考えられないような狭い寮部屋の
カチ……カチ……
秒針の音と俺の呼吸音だけが部屋にうすく広がって、
圧倒的孤独感
圧倒的負け犬感
圧倒的敗北者……!
「はぁ。寝よ。」
俺はこれ以上なにも考えたくなくて、さして眠くもなかったがもう一度目を閉じた。
〜 ・ ~ ・ 〜 ・ 〜
「んあ……」
口を半開きにして寝ていたらしい。
口の中はカラカラで、乾いた口から出た変な声とともに目を覚ました。
「今何時だ……」
雰囲気的に昼下がりくらいか?
ベットに横たわったままバンザイみたいに手を上げて、枕元の時計に手を伸ばす。
時計があるあたりを手探りでパチパチと叩き、手が当たったものをつかんで目の前に持ってくる。
「12時すぎか……あんま時間経ってないな」
しかし今日はこれ以上も寝られそうにない。
学校に行くか……?それともサボるか……?
「時間割なんだっけ……」
目をこすり、頭をぽりぽりと掻きながらベットからおりて机へ向かい、端っこに常に置いてある時間割を手に取って時計と見比べる。
「いまから支度するだろ〜?早くても学校に着くのは13時くらいか。
昼飯は……昼休み終わってるし、食べてから出ないとな。」
むむむ……と時間割とにらめっこする俺。
「てか今日何曜だ……?
んーと、昨日の最後の授業が数学だったから、木曜か。」
「……げ。今日の5限、ハンター養成かよ……」
3年ほど前に突如として魔物が地球へ現れ、各地で頻発した魔物騒動とゲートの出現。
それに合わせるかのように、俺たち人間には新しい能力が
魔物に対抗するための魔法みたいな力だ。
最初はそれこそ“勇者だ!”なんていわれていたが、半年も経てばそんな勇者みたいな力を備えた人間が大量に現れ、1年もすれば人口の約50%が能力保持者になった。
魔物と戦うのはもはや人間にとって日常に組み込まれたものになっている。
魔物の侵略を阻止するべく、政府も民間人も、組織化や戦闘力強化に力を割いて今では上場企業の3割以上がハンターと魔物関連のものに塗り変わった……らしい。
「俺この授業キライなんだよなあ……」
5限の“ハンター養成”は2年前から科目として導入された授業で、魔物に対抗するためのハンターを中高の時期により多く覚醒させるための授業らしい。
ここ数年で起きた魔物侵攻の歴史の指導と、組織の説明、そして実際の戦闘訓練までが6年間のカリキュラムに組み込まれている。
どこかの大学の“
『心身ともに発達する幼少〜思春期において多くの魔素や魔力に触れることで
そうだ。
実際、一昨年、昨年と高校生のハンター資格保持者が増え、ごく稀に中学生の覚醒者も現れるようになった。
「まぁ、やる事もないし単位とっとくか……」
高校2年生になった今、クラスの半分ほどが春の検査で覚醒しており、残りの半分の中にも夏休み明けの検査では覚醒確実といわれる奴の方が多い。
そんな中で俺は……
まったくの適正ナシ。魔力の微反応もナシ。
これって、もしかして覚醒しないパターンまであるか?と不安になるほどだった。
しかし、前回の検査では周りと違って魔力反応すらなく、突如として“無覚醒者”のまま人生が進んでいってしまうのではないかという恐怖が芽生えたのだ。
できれば、不出来な自分なんか知りたくない。
とにかく行き詰まった現実から逃れたかった。
とはいえ単位のことも考えると、“行けるカンジの時は行くべき”なのは間違いなくて…
「うし、しょうがないな!」
自分の腰をパン!と両手で叩いて、俺はのろのろと登校の準備を始めた。
〜 ・ ~ ・ 〜 ・ 〜
「
「…はい。」
教室に入るなり、担当教諭からぴしゃりとお叱りを受けた。
「東條、今になって登校かよ。」
「あいつ単位足りるのかな。」
「この授業、受ける意味あんのか?」
ヒソヒソと半笑いで俺の事を嘲笑う声が聞こえる。
お前たちだって、2年前までは俺と一緒に仲良くしてただろ。人間ってこうも短期間で手のひら返すものなのか。
「静かに。説明を続けます。
東條くんはテキストの82ページを開きなさい。」
───テキストの82ページ。接近戦の有利ジョブと不利ジョブについて。
接近戦の際のパーティーや陣形の組み方について図解がされている。
オススメのスキル使用順まで書いてあって、ご苦労なこった、とひとりごこちる。
82ページを開きながら緑の葉がしげりはじめた窓の外をぼーっと眺めてるうちに、寝てしまっていたらしい。
担当教諭の「東條くん、」という呼びかけにあわてて上体を起こす。
俺の生活態度にも慣れてしまったのか、注意もなく淡々と
「今から実戦にはいります。着替えたらグラウンドに合流するように。」
とだけ言い残して教室を出ていってしまった。
たしかに、クラスメイトも先生も運動着だったな。そういうことか。
と、思いつつ大して急ぎもせずにジャージに着替えて、誰もいない教室を後にする。
実は魔力に覚醒していて、とんでもない成績を叩き出したりしないかな、などと都合のいい妄想をしつつ俺はグラウンドに降りていった。
─────────────────────
これから面白い作品を書いていきたいです!
改善点などあれば、どしどしコメントで教えていただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます