第3話 初めてのデート
末永と付き合い始めて初めての連休を迎える明日。いつもの様に一緒に帰る中俺はある事を考えていた。
「なぁ末永。明日か明後日、どこかに遊びに行かないか?」
「そ、それはつまり⋯⋯デートって事!?」
「ああ! デートしよう!」
末永は目を見開き見る見る内にいきいきとした表情になった。それから何処へ行くか話し合いをした後、一緒に映画を観ようという事になった。家に帰り俺はネットで『初デート』と検索しやっては行けない事、やった方がいい事など頭に入れてみた。これで完璧だ。そう思った頃には既に日付けは変わっていた。
× × × ×
☆初デートは相手より早く待ち合わせに来るべし
俺は昨日学んだ事を実践する為に1時間前に待ち合わせ場所へと向かった。
「おはよう此崎君」
「早いな末永。それと凄く可愛いよ」
「頑張って良かった⋯⋯」
ボソッと赤らめながら髪をくるくると指で触っている所はとても可愛い。
「それにしても早かったんじゃないか? 待ち合わせ時間間違えたのか?」
「此崎君が家を―ううん。楽しみ過ぎて早く来ちゃった」
おい今なんか言おうとしてなかったか? まぁそれはそれとしてお互いが待たずに済んだのは幸運だ。
☆予定より早くばまずカフェへ行くべし
「ちょっと早いしカフェでも行かないか?」
「うん」
人通りが激しい土曜日。はぐれないように末永の手を握る。末永は顔を赤らめながらぎゅっと手を握り返して来た。見つけたカフェは若者向けというより落ち着いた雰囲気のある大人な店だった。メニュー表を見てカフェオレがないのに気づくと俺はカッコつけてブラックを頼んだ。店員さんを呼ぶ。黒髪の綺麗な大人な雰囲気のある女性店員が注文を取りに来てくれた。
「ブラックと紅茶。後ケーキ2つで」
「かしこまりました」
注文を終えると末永の目にハイライトが消えていた。
「ど、どうした末永!?」
「今、見惚れてたよね?」
「見惚れてなんてない!」
「⋯⋯そうだよね!」
にこりといつもの笑顔に戻ったがそれはそれで怖すぎる。
注文した飲み物とケーキがテーブルに並べられた。ブラックを頼んだのだがおしゃれな容器に入ったミルクもついて来た。これは味を調整していいって事だな。俺は末永が紅茶を楽しんでいる間にミルクを沢山入れた。ミルクを入れる事によりコーヒーの香りとミルクの甘みでとても美味しく飲むことが出来た。
× × × ×
☆無理のない所は奢るべし
これを実践しようとした時、失敗した。俺がトイレに行くふりして払おうとした時すぐ後ろに末永がいたからだ。先回りするとは末永も恐ろしい。奢らせて欲しいと頼んだのだが末永は一緒に楽しんだ分のお金は私も払いたいと言って聞かなかった。会計で揉めてても店に迷惑と思い割り勘にする事にした。
それから時間になったので映画館へと入った。春のこの時期は国民的アニメの映画が集中する事もあり子供連れの親子が目立つ。チケットを書い飲み物とポップコーンを注文しシアタールームへと入る。今日見る映画は国民的推理アニメ。子供の頃からお茶の間で親しまれているこの作品は毎年注目度が高く予告のわくわく感は半端じゃない。末永も好きな様で楽しみにしていた。
映画の中盤、ポップコーンを食べようと手を出すと末永の手に当たる。同じ場面でポップコーンを口にしようとしていたと思うと何だか嬉しい。
映画は終わり明かりがついたと同時に余韻が来る。満足感がいつもより多く感じられるのはきっと末永と一緒に見たからだろう。
× × × ×
☆初デートは簡潔に
俺が調べたネット情報曰く、初デートはお互いの事をあまり知らない事があるから沢山の場所を周るより数カ所に抑えて時間を共有する方が良いと書いてあった。昼ご飯は末永の提案で公園で食べる事となった。末永の用意してくれた弁当箱は今日も可愛らしい見た目と美味しそうな香りが漂っている。
「今日も俺の為に作ってくれてありがとう」
「好きでやってるだけだから」
「俺はそんな末永が好きだ」
「此崎君⋯⋯。私も好き」
端から見たら牛乳に砂糖を大量に入れたくらい甘い空間だが公園にはあまり人がいないので気にしない。
「所で公園なんかで良かったのか? ファミレスとかで食べれば弁当作らずゆっくり出来ただろ?」
「この公園は私にとって想い出の場所なんだ」
「想い出?」
「此崎君が私に告白してくれた場所」
「あ―」
俺は今日の事で浮かれ過ぎていてどうエスコートするか、どうかっこよく見せるかしか考えていなかった。だけど末永は俺との時間をずっと楽しんでくれていたんだ。
「すまない末永。俺は末永の前でかっこよくありたいと思ってたんだ。この公園の事も俺は気にも止められてなかった⋯⋯」
「此崎君のかっこよくあろうとしてる所好き。ブラックが飲めない所も映画で泣いちゃう所も全部含めて好きだよ」
「恥ずかしい所まで好きになりやがって。嫌いな所とかないのかよ」
「嫌いとかじゃないけど嫌な所ならあるかな」
「教えてくれよ」
「今日―39回は他の女の人見たよね?」
「え?」
末永の目のハイライトが消え寒気で鳥肌が立つ。そんなに俺は他の女の人見てたのかと驚きとこの後何をされてしまうんだという恐怖が襲ってきた。しかしすぐに末永の目に光が戻る。
「でも100回私と目が合ってたから許してあげる」
「これからはずっと末永だけ見てるよ」
「約束だからね」
俺は末永と固い指切りを交わした。
☆他の異性を見ることなかれ
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