フラれまくった俺が唯一OK貰えたのは独占欲の強いヤンデレ美少女でした
秋月睡蓮
第1話 初めての彼女はヤンデレだった
「好きです! 付き合って下さい!」
心臓の音が煩い。何度も味わうこの感覚。気持ちを相手に伝える事。これは本当に怖い。どう思われているのか。相手の顔すら見るのが怖い。
「ごめん。
「そうか。時間とってくれてありがとう」
「ううん。ごめんね。友達としてこれからも仲良くしようね」
友達として。この言葉は何度聞いても先を想像するだけで気分が暗くなる。そう友達として仲良くなんて無理なのだ。今まで築き上げて来たもの全部がもう言葉を発したその時から崩れ落ちる。
中学高校通算99敗目。フラれすぎじゃない!? そんなバナナ!! って心の中で言えるくらいにはフラれる事に麻痺してしまっている自分が嫌になる。
彼女が欲しいから告白しているんじゃない。皆好きになってしまうから告白してしまう。ふと鉛筆を拾って貰った時に手が触れた時。ふと何気ない会話をした時。ふと目で追ってしまった時。これは誰しも経験があるんじゃないだろうか。俺はそれが人より多いだけ。俺は今日も今日とて枕を濡らす事だろう。
× × × ×
「此崎君おはよう。元気ないね」
「あぁ⋯⋯。ちょっとな」
朝教室に入ると
「どうしたの?」
「あぁ。またフラれちまってな」
「そうなんだ。此崎君ならきっと良い人見つかるよ! 諦めちゃダメ!」
「そう言ってくれるのは末永だけだよ」
「そんな事ないよ」
末永はもじもじとしていた。見た目は変わっても恥ずかしがりやな所は変わらないらしい。俺はふと思った。そういえば末永に告白した事なかったな。こんなに可愛いし毎朝話すのに何でだろう。単純に昔からの付き合いだから俺にその気持ちがなかっただけなのだろうか。ふと末永の顔をまじまじと見てしまう。顔立ちはとても整っていてオシャレにも気を使っている。周りには気配りもするし何よりおっぱいが大きい。
「此崎君?」
「悪い末永がめちゃくちゃ天使に見えてな」
「て、天使!?」
末永は顔を真赤にして手で隠す。何これめちゃくちゃ可愛い。でも俺は可愛いから付き合うとかおっぱい大きいから付き合うとかそういう事で彼女欲しいと言うわけじゃない。俺が心から惚れた相手と付き合いたいのだ。誰でも良いわけじゃない。俺は直ぐに正気に戻った。きっと傷心中だから割り増しで見えただけだ。
× × × ×
人間不思議な物で一度意識しだしたら急に気になってしまうものみたいだ。自然と末永を目で追ってしまう。そして見るたび末永と目が合っている気もする。その度にどきりと胸が早鐘を打つ。落ち着け相手は末永だぞ。ちょっと俺と話てくれて、いつもフラれた時に俺を慰めてくれて、たまに弁当とか作ってくれたりして⋯⋯。あれ? めちゃくちゃ良い女じゃねぇか。末永への恋心を認めたくない俺と素直になれよと言う俺が今戦っている。でも正直、末永にフラれるのが怖いが勝ってしまった。
× × × ×
検討に検討を重ねた結果、俺は末永に告白する事に決めた。やっぱり好きだ! 今更ひよってどうする! 俺が好きだと伝え仮に実らないとしてそれが告白しない理由になってたまるか! 俺は覚悟を決めた。さてではどう告白するかだ。放課後、帰りにさりげなく。いやここは男らしく校舎裏に呼び出して⋯⋯。いやでも末永はいきなり俺に校舎裏に呼び出されたら怖がってしまうかもしれない! うーんどうしたものか。
「此崎。此崎! 続きを読みなさい!」
「教科書39ページだよ」
授業中に考えていたせいですっかり指名されている事に気付かなかった。末永が読む場所を教えてくれたおかげで何とかなった。俺はアイコンタクトで礼を伝えるとにこりと微笑んでくれた。今のめっちゃ可愛いかも。
× × × ×
「此崎君授業中ぼうっとしてたなんて珍しいね」
「考え事しててな」
俺と末永は帰る方向が同じな事もありよく一緒に下校する。何気に小学校の時からそうかもしれない。俺が告白する時か末永に用事がある時以外はほぼ毎日。思えば今がチャンスかもしれない。ふと公園が目に止まった。
「なぁちょっと公園行かないか? 懐かしくなっちまった」
「いいよ。ふふ今日は色々珍しい日だね」
俺と末永は並んでブランコに乗った。前に進むと風が頬を冷やす。クールダウンには丁度良いかもしれない。
「ねぇ此崎君ってどんな子が好きなの?」
「!? ッゲホゲホ!?」
「大丈夫!?」
急な質問に俺は息が詰まり咽てしまう。末永は直ぐにペットボトルとハンカチを渡してくれた。開封済みだったが気にせず貰う事にした。
「はぁ⋯⋯はぁ」
「ごめんね! 急に変な事言っちゃって!」
「いや良いよ。これではっきりしたから」
「? はっきりしたって?」
「どんな子が好きなのって言ったな。俺が今好きなのは末永、お前だ」
「―え?」
「末永愛さん。好きです付き合って下さい」
俺は頭を下げ手を差し伸べる。何度やっても慣れないこの緊張感。良い方にも悪い方にも考えてしまうこの時間。だが俺にできるのは返事を聞くだけ。
それから一分くらい過ぎただろうか。何の返事もないので恐る恐る末永の表情を伺うために顔を見る。すると末永は涙を流していた。
「末永!? わ、悪い! 急に言われても怖いだけだよな! わ、忘れてくれ!」
「忘れるなんて⋯⋯できないよ。だって⋯⋯こんなに嬉しい事なんてないんだもん」
「え―」
「私も此崎道長君の事が大好きです。これからよろしくお願いします」
涙で目を腫らしていたのがまさかの嬉し涙とは予想もつかなかった。そして後から実感が湧いて来た。俺、末永と付き合う事になったんだ。
× × × ×
「そんなに泣いて喜んでくれるなんて思わなかった。にしてもいつからなんだ? 俺を好きになったのは」
「此崎君は覚えてないかもしれないけど私が小学校の時に男の子達にいじめられてた時―」
『お前ら! 女の子いじめて恥ずかしくねぇのか!』
『なんだよかっこつけやがって! もしかして末永の事好きなのか?』
『ヒューヒュー。ヒーローかっけぇ!』
『好きとか嫌いとかじゃねぇ! 俺がそれを見てムカついてるから言ってるだけだバカ野郎!』
「それから事ある事に此崎君は私を守ってくれて⋯⋯。好きな所なんて数えきれないよ」
「そのそんなに好きだったのに気づかなく悪かったな」
「ううん。私は恥ずかしがりやだし、何より此崎君にフラれるのが凄く怖くて。それで今此崎君と話せるだけで幸せって思うようにしていたんだ」
「末永⋯⋯」
「だから凄く嬉しい」
× × × ×
「ねぇ此崎君」
「何だ?」
「此崎君に一つ謝らないといけない事があるんだ」
「どうした急に」
「此崎君がいっぱいフラれたの私のせいかもしれないから」
「どういう事だ?」
「あのね、此崎君が女の子を好きになる時なんとなくわかるんだけどその時に好きになった女の子にね―」
「毎日不幸の手紙と藁人形をプレゼントしてたの」
「は?」
「憎くて憎くて不幸になればいいと思ってやってたの。もちろん直接手は下してないんだけど本当に贈られた子ケガしちゃったりとかしてて多分それが怖くて此崎君がフラれてたんだと思う」
「⋯⋯何でそれを今言うんだ?」
「? 隠し事するのは良くないじゃない?」
何て事だ。まさか末永がここまで病的なヤンデレだったとは。しかし俺の気持ちは揺らがなかった。
「許そう!」
「え⋯⋯。此崎君に怒られる覚悟で言ったんだけど⋯⋯」
「何だ? 怒られたかったのか? でも許す! 何故ならそのおかげで末永と付き合えたんだからな。今が幸せなら過去の不幸も笑って許せるさ!」
「末永君⋯⋯!」
俺は思った。末永愛は絶対に怒らせてはいけない。
こうして俺は人生初めての彼女が出来た。
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