第12話凌雲館高校・共闘遊戯会(中編)なぜか唐揚げが主役
お昼になり、皆、それぞれ昼食を頂く。紫陽たちは、芝生の野っぱらで、三兄妹と、楓、碧月、琴音……それに加え、騎馬戦で雌雄を決した、白組でラグビー部・主将『
紅組は、テニス部・主将『桃崎
……が……
紫陽が、
「……おぃ、紅崎、稲森、なんでお前ら、昼ご飯が『どデカイ』、プロテインシェーカーなんだよ……?」
「い、いや、まさか紫陽君たちの昼食会に招かれるなんて思ってもみなかったから……」
「ま、いいよ、それだけ体を鍛えてるってことだからな、なぁ、みんな、親からは御行儀悪って言われるかもだが、せっかく、こうして囲んでるんだ、みんなの弁当をそれぞれ味見というか、つっつかないか?」
桃崎は、
「いいね~それ!やってみたかったんだ!紅崎君も、稲森君も、僕の弁当、味見してみてよ!」
紅崎も稲森も
「い、いいの?すごい、僕、他の家の味知らないから」
「僕もだよ」
二人は桃崎の出汁巻きを口にし、
「う、旨い、うちのと全然違う……」
「ぼ、僕もだ、母様が作るのとは違う」
他の家の料理の味を知らない、それもそうだ、このような金持ち学校では、他の家の弁当を、たとえ味見と称しても、毒親からすれば『物乞い』と、捉えかねない。
すると、紫月が、クスクス微笑み、
「まさか、こんなに大勢の方と、お昼ご飯頂くことになるなんて……私、幸せですわ、皆さま燦之宮家の食事も味見してくださいな!今日は、シェフが『体育祭だから消化に良い』食事を作ってくれたそうで、しかも五段重で、ふふ」
碧月と琴音は、
「わ~い、頂きます」
二人は、お煮しめを口にし、
「んんん、美味しい……優しい味……」
「門脇シェフは、いつもワタクシたち兄妹を慈しんで、料理を作ってくださる……そうだ、今度、我が家で御食事会をいたしませんか?ねえお兄様方、よろしいですか?」
紫陽と紫苑も
「あぁ、ぜひ、みんなと食卓を囲もう」
「そうだね、これも『縁』だからね、父さんが大事にするようにって」
……と、紫陽が、楓の弁当に目を遣る
「……なぁ、楓、凄い量の『唐揚げ』だな……」
楓は、
「い、いやぁ、今朝、母さんが『あなたはもっとタンパク質を摂取して筋肉をつけなさい!あと今日は、御学友の皆様と昼食会をするのでしょう⁉このお弁当を持っておゆきなさい!』と、
そこに乙女、三人が瞳をキラキラさせ、食いついた、
「楓様、唐揚げ頂いて宜しいですか⁉」
「え、うん!どうぞ召し上がってください、あと……『様』付けは無しで、『君』付けで呼んでもらえると……はは」
「んんん~~~、美味しい~ジュウシ~、え?、なんでまだ温かいのです?」
「あぁ、それは、駅弁でも使われてるけど、ひもを引っ張ると装置(?)が働いて、温め直せるんだ」
紫陽も
「どれ、一つもらうぞ」
紫苑も
「楓君、頂きます!」
紫陽と紫苑、二人とも
「んんむぅ!旨い‼」
「良かったぁ、母さんにお礼言わなくちゃ、へへ」
琴音と碧月は、
「鶏肉は、ヘルシーでタンパク質が豊富だからね!」
紅崎と稲森は、目を合わせ、
(いや、タンパク質が豊富なのは、胸肉であって、イミダペプチドとか……はは)
(そして揚げてあっては、ヘルシーとは……いや言うまい……場の雰囲気が乱れてわな……)
そんなで紅崎・稲森の二人とも、
「っでは楓君、頂きます」
二人とも口にした瞬間、
(ん、んん、旨ま~~~~‼‼‼‼‼‼なんじゃこれ⁉楓君の母上は唐揚げの天才か⁉)
紅崎と稲森の二人の様子を見ていた楓は、不思議だなと首をかしげて、キョトンとしていた。すると剣道部主将の黄村が、楓の肩を、かしっと掴み、
「僕も頂いたが、楓君の母様は、唐揚げの天才だな、正直、自分の母様には言えないが、君の母様の唐揚げが旨い、へへ」
桃崎は、唐揚げを口にし、ぽわぽわ、ホンワカした顔で、
「僕は、揚げ物は控えてるけど、やっぱり美味しいの食べると、頬が緩むねぇ……あぁ美味しい……」
テニス王子のホンワカ顔を見て、遠巻きに見ていた桃崎ファン(桃ファン)は、卒倒した……
皆で食事を囲い、燦之宮家のお浸し美味しい!、碧月さんのおうちのエビチリ美味しい!琴音さんの家の、お煮しめスゴイ美味しい!他愛のない会話かもしれない……
紫月は、思った。今まで経験したことのない12人での学友との食事、令嬢としてパーティーに出席した食事会とまったく違う、新鮮で『楽しいひととき』食事とは、こんなにも人を繋げてくれるのだ……今度シェフに、美味しい唐揚げを教えてもらおう、と思った紫月だった。
二人の王子と姫がもてなす Cafe『紫庵』 雪村 @yukky-yukimura
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