第59話

「あの方にとって、女遊びは趣味なのね。」



そして園長は続けた。



「あなたを採用したら、ターゲットにされてしまうのは分かっていたの。でも断れなかった。」



そして申し訳なさそうな顔で私を見た。



「あなたを採用しないと、この幼稚園を潰すと脅されたのよ。私が何年もかけて守ってきたこの園を。私のカワイイ園児達が、学び遊び、過ごしてきた幼稚園を潰すと言われた…。怒りが湧いたわ。でも歯向かえば最後。私には、そんな事出来なかったの。」



「園長…」



「あなたを巻き込んでしまい本当に申し訳なかったわ。ごめんなさい」



園長は深々と頭を下げた。



「え!園長やめてください!大丈夫です。私。それに、それがきっかけだったとしても、私はラッキーです。園児もカワイイし、先輩方にも恵まれて、そして何より、憧れだった園長の下で仕事が出来てるんですから。だから謝らないでください…」



50人いる応募者の中で、私が実力で選ばれるのがそもそもありえなかったのだ。


こんな事がきっかけだったかもしれないけど、こうやって憧れの園長の幼稚園で働けているのは、事実で…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る