第45話

「はい、とても美味しくて!」



美咲先生はニコッと笑顔でお二人に伝えた。



「良かったです。うちのシェフにも嬉しいお言葉伝えておきますわね。」



「毎回、お誘い頂きまして本当にありがとうございます。夢のようなひと時です。」



園長先生も改めてお二人にお礼を言っていた。




私も何か気の利いた事言わなきゃ。




なんて脳内でアタフタしていると…







「梨子先生ですよね?すみません。私、旬の行き帰りの送迎を主人に任せっきりで。中々お会い出来てなかったですよね。」



旬君ママが私に話しかけてくれた。




「あ、宮川梨子と申します。新米ではありますが、よろしくお願いしますです!」




緊張しすぎて敬語が変になってしまった。


あーやってしまった…




「フフッ。可愛らしいフレッシュな先生ね。うちの息子と主人が気に入ってるのが納得だわ。」



旬君ママはハンカチでお上品に口元を抑えて笑う。



「あ、ありがとうございます。」




「これからも、よろしくお願い致しますね。」




そして2人が、また別な場所に行こうと私達に一礼して、旬君ママが私の横を通り過ぎたとき…




「あら?梨子先生、髪の毛にホコリが…」



そう旬君ママは言うと私の右耳側の髪の毛を触りホコリをとろうと近づいてきた。



その瞬間ボソっと私にしか聞こえない声で何か呟いた。



「さ、取れたわよ。では先生方失礼します」


上品な笑みを浮かべ旬君パパと腕を組み、また別なゲストの元へ向かった。





「旬君パパと旬君ママ、絵になるなー」


「本当ね。」




美咲先生と園長先生がそんな話しをしているが、私の脳内はフリーズしていた。






旬君ママはあの時私に、こう言った。

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