第26話

「…ヤバ。トイレで寝てるとか最悪。しかも昔の事が、夢に出るなんてね…」





私は気がつくと過呼吸を起こして、胃液を吐きながらトイレで意識を失うといった最悪な状態になっていた。




「…あの人が日曜日に来るなんて無かったのに。」




部屋に戻るとまだ外は暗かった。



スマホの時計を見ると21時の表示がされていた。



「あの人からのLINEが19時か。2時間も意識失うとか、すごいな私。」



カラ笑いをするが、手先がまた震え始める。



止まれ


止まれ




震える手先を、これまた震える手で抑える。




「…やだなぁ…いつもこう。落ちつけ。落ちつけ。大丈夫大丈夫。」



また動悸が始まるのを抑える為に私は、クローゼットから、ニットセーターを取り出す。


黒いニットセーター。

身長が168センチの私でも着るとブカブカになる。



それを着て体育座りをして膝を抱える。


膝に顔を突っ伏して荒くなった呼吸を整える。



「大丈夫、大丈夫。」



大丈夫、数時間耐えるだけだから。



大丈夫、今までも耐えたんだから。



大丈夫、このセーターがあるから。



大丈夫、大丈夫。





「大丈夫だから。ね、絢斗…」





世界一大好きな人の名前を消え入りそうな声でつぶやく。

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