夏に現れた怪物

時間マン

プロローグ

 すべて、すべてが渦巻いている。


 押し寄せる外界の情報は僕を呑み込み、まるでミキサーの中にいるようだ。


 細切れになっていく自我は境界を失い、僕という存在が薄まっていく。


 己を見失っていく奇妙な感覚だけが広がり、それ以外の全てが理解できない。


 一体何が起きているのか。


 一体何を僕はしてしまったのか。


 そう問いかけるたびに、現実感はそぎ落とされ、夢ではない実感だけが矛盾となって残される。


 混沌の中に崩れそうな今を繋ぎとめようと僕の脳裏に浮かぶ過去の断片たち。


 それらはパズルのピースのように一つ一つが繋がって、僕の記憶の底に沈んでいた一つの光景を形作る。



 小学2年生の夏──あの日、僕は「怪物の骸」を見た。

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