ダルチダイブ

立喰 アーテ

プロローグ

 太陽の光など一度も浴びたことない、密閉された一室。光源は見えない。それでも、空間全体は影ひとつなく照らされていた。その光の中に、二人の男女と一つの箱があった。

 二人は、箱型のディスプレイに向かって、資料を差し出した。

「コノ案ハ認メラレマセン。倫理的、道徳的ニ受ケ入レガタイデス。ワレラノ技術ヲモッテシテモ可能デハアリマセン。モシ、ソレガ私情ニヨルモノナラバ、コノ案ハ私ガ受ケ取リマス。」

 緊張の一瞬、機械音声の声が無機質に狭い室内に鳴り響いた。

「いいえ。そのようなことは。もし、我々の夢を我々の時代で終わらせるなら、この方法しかないだけです。」

「そうです。これが実現出来たならば、我々の時代で、我々の平和と幸福が実現する。それだけです。」

 二人はすぐさま反論した。機械音声はその音を数秒だけやめた。

「ソウデスカ。ナラバ、コノ案ハ、私ハ受ケ取リマセン。提案者ニ自由ニ破棄スルコトヲ認メマス。」

明確な拒絶。にもかかわらず、ふたりは微笑んだ。まるで、幾光年先まで待ち続けた祝福の言葉を聞いたかのように。淡い匂い風が吹く丘の上で、初めて自由を手にしたかのように。

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