第8話 赤いマフラー
若い兵隊さんがやって来て、
「もうすぐ飛行機が飛び立つから、乗り込む準備をして」と言いましたので。
サキエはマモルを背中におんぶして母親の半纏を羽織り、スエコに王子の赤いマフラーを首に廻し掛けたあと暖かい着物を着せて準備を終え、王子さまはそのままで建物の外に出ました。
すると乗ってきた自動車が待っていて、三人を乗せるとすぐに走り始めました。
広い練兵場の端まで走って行くと、飛行機が1機止まっています。
自動車が飛行機の近くで止まって助手席の王子が降りると、自動車の中に残っているサキエとスエコに向かって、
「サキちゃん、スエちゃん、ありがとう、本当にありがとう」と言って手を振りながら飛行機に乗り込んでいきました。
しばらくして飛行機のプロペラが回り始めると飛行機は滑走路を走り始めました。
そして滑走路の端まで行くと宙にフワリと浮かんで、そのままグングン空高く飛んでいきます。
やがて飛行機が、雲の中にすっぽりと隠れてしまうと音がしなくなりました。
そのまましばらくは空は静かでしたが、突然エンジンの音が聞こえてくると、雲の中から飛行機が降りてきました。
飛行機が見えるとサキエ達の乗った自動車は動きだし、練兵場の門を出るとサキエ達の家に向かって走り始めました。
サキエは自動車の窓の外を眺めていましたが、家に近づくと空は明るくなり雪もやんできました。
そしてその頃にはスエコは疲れたのか、サキエの膝に頭を乗せて眠ってしまいました。
王子様の赤いマフラーを首に巻いたまま。
つづく
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