第3話 王子様

 スエコが大きな声で叫びました。

「わあ、雪だるまが降ってきた! 」

 イタタタタッと叫びながら雪だるまが起き上がりました。

 サキエも驚いて目を丸く見開いて落ちてきたものを見つめています。

「誰が雪だるまだ! ボクは王子だぞ」と雪だるま…いえ、王子は言いました。

「雪だるまがしゃべった! 」スエコは大喜びでしたが、サキエはさすがにお姉ちゃんでしっかり者です。

「あなたはだあれ? 見たところ雪だるまに手と足がくっ付いてるだけみたいだけど?」と尋ねると。

「失敬だな! 言っただろ王子だって、氷の国の王子だよ」

と王子は怒って言いました。

「氷の国ですって? おとぎ話じゃあるまいし、でも空から落ちてきたのは確かよね」

とサキエは独り言。

「ねえ王子様、一緒にあそぼうよ」とスエコはもう王子になついています。

「この子は賢いね。でもごめんよ、ボクは今はお仕事の途中なんだよ」

「仕事ってどんな? 」サキエは不躾ぶしつけな質問をします。

「ボクは氷の国の王子なんだよ、だから雪を作って降らせる仕事の監督をしなければならないんだよ」

「じゃあ、なぜ地上に降りて…じゃなくて落ちてきたの?」サキエは遠慮をしません。

「本当に失敬だな、君は!」と王子さまは怒って言いました。

「ちょっと足を滑らせてしまって、雲の端っこから落っこちてしまったんだ」

と王子が言ったので、サキエは鼻で笑って、

「ふーん、氷の国の王子様が雪で足を滑らせて落っこちたのね」と言いました。

 氷の国の王子は顔を真っ赤にして

「誰でも失敗することはある!」と言い返しました。

「あんまりカッカすると熱くなって溶けちゃうよ」とサキエは王子をからかいます。

 氷の国の王子は地団太踏んで悔しがりますが言い返せません。

 プイと横を向くと、空き地から出て道路に出て行こうとしました。

「どこに行くの?」

とサキエが尋ねると。

「氷の国へ帰るんだよ!」

とツンケンして王子が答えます。

「どうやって?」

とサキエはなおも口撃を続けます。

 するとお王子の足は止まってしまいました。

                              つづく


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