第18話 失われた新一

帝丹高校――廃校舎地下。


少年探偵団が偶然発見した古びた地図は、帝丹高校の“本来の校舎”の下に、もう一つの“隠された施設”が存在していたことを示していた。


光彦「ここに“帝丹育成研究棟”……?」


歩美「なんだか怖いよ……本当に入るの?」


元太「よし、俺が先に行くぞ!」


阿笠博士の開発した照明付きメガネを手に、子供たちは地下への扉を開いた。



【記憶の迷宮】


そこは、まるで“研究所”のようだった。

ホルマリン漬けの標本、生体モニター、そして無数のデータチップ。

だが最も異様だったのは――壁一面に貼られた「工藤新一」の顔写真だった。


コナン「……これは、何だ……?」


その中央に、一枚だけ異なる写真があった。

それは、工藤新一と瓜二つの少年。しかし、表情は冷酷で無機質だった。


「被検体K-001 “Prototype Detective”」



【沖矢昴の告白】


沖矢(赤井秀一)はコナンに静かに語り出す。


沖矢「君は、かつて“選ばれた”子供だった」


コナン「選ばれた……?」


沖矢「あの帝丹育成研究棟では、知能指数が極めて高い少年少女を集め、究極の“推理マシン”を作る計画があった。“探偵の複製”だ」


コナン「まさか……俺もその……?」


沖矢「君の記憶の中には、その実験の痕跡がある。“君が見たはずのない事件の映像”。それは記録され、刷り込まれた“記憶”だ」



【ミネルバ計画の続き】


灰原哀は、亡き姉・明美の残したノートから“ミネルバ計画”の続編を発見する。


「計画は、探偵の人格をAIではなく“人間の子供”に再構成する段階へと移行した」


「その最初の成功例が、K-001。通称、“工藤新一”」


灰原「……でも、あなたは“失敗作”とされた記録もある」



【ベルモットの真意】


夜のロンドン、カフェの片隅で――

ベルモットは独り、白いワインを片手に呟いた。


ベルモット「Shinichi……あなたは“あの子”じゃない。でも、あの子の記憶を持っている」


「私はその“記憶の中の彼”が、いちばん美しいと思っているだけ……」



【真の“工藤新一”】


地下施設の最奥、冷凍保存装置の中――

そこには、もう一人の少年が眠っていた。


少年「……ここは……?」


目を覚ましたその少年は、自分の名前をつぶやいた。


「くどう……しんいち」


目の前に立つ現在のコナンと瓜二つの“少年”。

コナンの瞳に映ったのは、自分自身の“原型”――つまり、“本当の新一”。


コナン「君は……誰だ?」


少年「君こそ……誰なんだ?」

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