わがまま 🎈

上月くるを

わがまま 🎈



そこにある小さき幸せ芝桜

旅先に道を問はるる春時雨


長閑さや卓の新聞めくる音

日経の株価見るひと春の朝


書きかけの便箋のまま鳥雲に

風に聞く雲のうはさや耳菜草


白き月中天にあり葱坊主

丈低き草にも影や風光る


遠足の赤き頬らが通り過ぐ

山桜ふもとの茶屋の緋毛氈


老木の幹の洞や花曇

山寺の千本桜御仏に


わがままを言ふてみたき日紙風船

手のひらに雨たしかめて木の芽風


晩春や山の名知らぬ山住ひ

踏青や向ひは二人うち一人


江戸からの農業堰に水草生ふ

用水を棲み処としたる春の鳥


雉笛や昼はうどんと決めてをり

行く春や米の半値のパンを食ぶ




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