第4話更なる行方不明

 ー男は又、穴を掘って死体を埋めた。もっと深く、もっと大きく。死体達はバラバラになって、混じり合ったー


 「アバスの話を聞いたからかな?。なんだか、見られている気がしないか?」

「進藤、感受性が強すぎだろう?。アバスは両親と妹が行方不明になって、神経質になっていたせいで、ああいう風に感じただけさ。もう夜も遅い、寝るぞ」

そう言ってサツキはすぐに寝息をたてはじめたが、俺は何故だか寝付かれなかった。


「おい、起きろ。進藤、もう朝だ。それに、なんだか様子が変だ」

早朝、サツキに起こされ、俺たちは、廊下に出た。

「一体、どこに行ったんだ!。洋!」

「一体、なにがあったんですか?。一利さん」

「ああ、五月くん。洋を見なかったかい?」

「いいえ、昨夜、食堂でお目にかかったきりです」

「何度呼んでも返事がなかったんだ。出勤する時間だというのに。だから、内側から施錠されていたのを、私が持っていたマスターキーで開けた。すると、洋が部屋から消えていたんだ。アバスが言っていた通り、財布もカードもそのままで、たぶん、寝間着のままいなくなった」

「なんですって?。部屋を調べてもいいですか?」

俺とサツキは洋の部屋を調べたが、窓にはカギがかけられ、特にかわった所はなかった。

「他の人は、皆、無事ですか?」

「妻と、紗希、正和、久司は今、食堂にいた。淳と和穂は、いつも昼まで起きてこないが…、そうだ、洋の事を聞いてみよう」

俺達は、二人の部屋をノックしたが、両方とも返事がない。

「おかしいぞ。おーい、淳、マスターキーで開けるぞ!」

部屋に入ったが、そこには誰もいない。

「洋と淳が二人共いないなんて!」

俺達は慌てて、和穂のドアもマスターキーで開けた。

「なんてことだ。和穂まで居なくなっている」

一利氏は、マスターキーを握りしめ、茫然としている。

騒ぎを聞いて駆けつけた都は、その場に座り込み、しくしくと泣き出してしまうし、紗希と正和と久司もお互いの顔を見つめ、首を振るばかり。

「先ずは警察に届け、皆さんはしばらくホテルにでも非難すべきです」

サツキの冷静な声に、一利はハッと我に返り、

「土門、警察に連絡を。皆は、荷物をまとめて、いつでもホテルに移動できるように準備しなさい。後、一人ではなく、二人以上で行動するように」

皆が荷物をまとめた頃に、警察がやってきて、話を聞いたが、捜索願だけ提出させて、そのまま帰ってしまった。

「一利さん、俺達で、いなくなった四人の部屋を調べさせてもらっていいですか?。もちろん、手袋をはめて、指紋の保存には気をつけますから」

「それはいいが、父の部屋は、先日、土門が掃除をしてしまったぞ」

「それは、しかたありません。ただ、残りの三部屋はそのままの状態で保存すべきでしょう」

「わかった。部屋はそのまま保存させる。君たちは好きなように調べてくれ」


俺達は四部屋を順に調べた。

サツキは床や壁を叩いて音の変化を調べている。

俺は、長い柄の箒で天井を叩いてみた。

「特に変わった所は見つからなかったな」

「そうだな。ただ、和穂の部屋のセンターラグの一部に、何かが引きずられた跡があったのが気にかかる」

「引っ越しの時についた跡だろう」

「かもしれない。だが念の為、館の外も見てみよう」

館の外にも不審な足跡など見つからず、俺達は館を囲んでいる林に入って行った。

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