【自主企画参加】風の始まりの色

野口マッハ剛(ごう)

あの葉が枯れて落ちたら私は……。

 ここは病室。


 オレは彼女のお見舞いに来ている。


 彼女は不治の病におかされている。


 毎日毎日、彼女の顔を見にやって来ている。


 彼女はこんなことを言い出した。


「あの葉が枯れて落ちたら私は……」


「どうなるのだ?」


「私は、きっと死んじゃうんだよ……」


「バカなことを言うな!」


 すると、窓から見えていた、あの葉が枯れて落ちたのである。


「おい、枯れて落ちたら、どうなるのだ?」


「私はまだ死にたくない」


「おい、さっきとは言っていることが逆だぞ?」


「そ、そんな! 私に死んでほしいの⁉」


 やれやれ、いつものやつが始まった。


 彼女の、あの葉が枯れて落ちたら私は死んでしまうごっこが……。


 割りと笑えないごっこ遊びだよな?


「ねえ? 風の始まりの色って知ってる?」


「え? そんなのあるの⁉」


「あるわけないやろ」


「お前どつき回すぞ?」


 やれやれ、いつもの感じになった。


 何だかんだ言って、今日も彼女は不治の病におかされている。


「ねえ? 私のことが好き?」


「当たり前だろ?」


「じゃあ、結婚する?」


「するに決まっているだろ?」


「私、あなたのことはそんなに好みではない」


「ハッキリ言うな!」



「は~い、お二人さん。今日も夫婦漫才ですね~? 面会のお時間の終わりですね~」



「「夫婦じゃちゃうし!」」


終わり(笑)

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