第3話

 ドスンという音と共に、コソ泥、いえ……今回は別件だったわね、は目の前の床に尻もちを突く形で以下略。相変わらずこんな追跡魔法に引っかかって……緊張感がないというか。


「……やぁ……久し振りというにはちょいと早い気がするのだがね、Fräulein♪ 今回は借りていた本はない筈だが……若しかすると次の満月Estrus迄我慢が出来ず、ワタシの魔法の舌cunnilingusで快楽を享受したi……こ、今回は早くないか寒うううううううううううううううううっ!!」


 用意していた魔法freezeで鼠を頭だけ残して氷漬けにし、溜息を一つ。

「冗談は其れ位にしなさい。貴方の大好きな仕事murderですよ、どぶ攫いassassinさん?」

「其の名は嫌いだと言ったじゃないか……」

「あら、謹んで拝命したかと思ってました。貴方にはピッタシですよ? 其の緩い頭boneheadを引き締める為、少しは踊って下さいませ」

「……獲物は?」


 私は彼女を解凍した後其の手を握り、Yggdrasillの杖を使い空に魔方陣を出現させる。転移した先に見えるは歴史或る古城。


「……ふぅ、久し振りにこの辺りに来ましたが、あの美しかったサウィンド城も主を失いすっかりと寂れましたね……assassin、貴方の仕事はあの城のをし、落ちているを取得する事です。取得さえ出来れば汚れていても割れていても構いません。其れはそれで使い道がありますし……」

「ワタシに任せるという事は、宝石以外はどう掃除をミナゴロシしても構わないという事だね?」

「御自由に。終わったら何時もの様にこの足環ankletを付け、かかとを三回鳴らしなさい。忽ちこの書架……の洗い場washing placeに戻るでしょう」

「帰って直ぐ抱きしめてはくれないのかい?」

「血塗れの侭では嫌ですね。あ、勿論宝石もきちんと洗浄してから書庫に来る様……では」


 私は鼠に加護の付与をした「洗練された牙Assassin's Dagger」を渡し、一人で書庫へと戻る……あの城には其れなりの規模の殺人強盗集団ドブネズミがいる筈だが、気にする事なくお気に入りの紅茶を注ぎ、読みかけの本を手に取った……この本を読み終える頃には、かかとが三回鳴らされ、洗い場で宝石を洗浄し、この書架へと戻ってくるであろう。


 ……


 果たして、私が本を閉じる頃、濡れ鼠と化したassassinは、依頼通りに極上の宝石を書架へと戻ってきた。

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