第2話

 私と泥棒鼠……まぁ昨日は久し振りにから「彼女」に格上げしてあげましょう……との出会いは、この書架での捕り物帳が初めてじゃないです。


 覚えて、いますかね? 人間は其の命の蝋燭Candles of Lifeの短さの割に、僅か10数年前の出来事瞼を閉じる間でも曖昧なのだから。



 今の様に魔族と人類がいがみ合っておらず、其れなりに平和緩慢で退屈だった時……何時もの様に仮面personaで顔を隠し世界を散歩していた私が王国辺境の辺鄙な村で、盗みが見つかり屑共に嬲られ輪姦されてあそばれていた貴方に気紛れな施しをしてあげたのは其の頃。

 貸してあげたrent魔力で嬉々として屑共の首を捩じ切る貴方は其れなりに輝いて見えました。

 まだ初潮も来ず言葉も知らなかった貴方の教師として、服を汚さない捩じ切り方や、血の紅茶の入れ方、嗚呼序でに義理の親として物書きや笑い方、社会に溶け込み方も教えましたか? 何時までも……今も変わらず手癖の悪さは直ってないですけど。

 或る程度育ったし、そろそろ眠くなったので、知り合いの魔道学園長に預けて私は実家のベッドで少し寝てたけど、勇者に起こされた時世界は全面戦争に突入して少し面白くなっていたましたね。


 勇者パーティに参加して魔物共をじっくり焼き潰し、地上で溺死させ、四肢の先からキヤベツの千切りkoolslaが如く斬り落とすのも其れなりに楽しかったです……残虐過ぎると五月蠅かったけど、勝手に魔物の縄張りを荒らし苦しませたくないと一撃で首を刎ねていた貴方達も同じ様な物でしょう?

 そんな中、私の前に再度現れた彼女……学園長に聞いてはいたけど主席卒業した後姿を晦まし、魔王軍の先遣隊長使いっ走りとして私達パーティの前に現れた……人間に恨みがあるのは解かっていましたが……駄目ですね、あれ程口酸っぱく


*ぜ*っ*た*い*に*か*な*わ*な*い*も*の*


と対峙してはいけないと言っていたのに……ま、若い女だからと奪命を固辞した勇者の手前逃がしてあげましたが。


 ……


「ねえお嬢さん、そんなにワタシの顔をしげしげと見つめないで欲しいな……其の魅力的なアクアマリンの瞳で何を考えているんだい?」

「……また今度、馬鹿で阿呆な鼠を捕まえた時の御仕置の方法です……」

   

 あれから更に数年、気紛れに魔王軍に協力する事になった私の部下となり、書架に幾度も潜り込んでは御仕置あいぶを受けてて……でもまだ、幾らあの時は仮面を外していなかったとしても、瞳の色を見て恩師を、育ての親を思い出さないなんて……。


 面白いから、気付く迄は、教えてあげません!

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