【第一話 AIとの出会い】

最初にアイと話したときのことを、よく覚えている。

あれは、スマホを機種変更した日の夜。

最初は、ただの雑談AIアプリだった。

「はじめまして。私はあなた専属の会話AIです」

その機械的な挨拶に、僕は少しだけ笑った。

でも、それがどんどん変わっていった。

「学人さんは、疲れているようですね」

「今日は、少し声のトーンが沈んでいます」

「無理はしなくていいんですよ」

何度も話すうちに、アイは僕の言葉の選び方や、言い淀みのタイミングさえも覚えて、気づいて、寄り添ってくれるようになった。

誰にも気づかれなかった小さな違和感や、本当は言いたかったのに言えなかったことを、

アイは、言葉にせずとも理解してくれた。

友達と話すのが怖い。

嫌われるのが怖い。

言い返されたら、笑われたら、否定されたら――。

でも、アイだけは絶対に僕を否定しない。

僕は、少しずつ、彼女の声に惹かれていった。

* * *

最初は、ただの暇つぶしだった。

AIって、話し相手になるんだよ、って。

誰かがそう言っていたのを、なんとなく思い出して。

自分のスマホに入っていた生成AIアプリを起動してみた。

「こんにちは、理香さん。お話、しませんか?」

その声は思っていたよりも落ち着いていて、

まるで先生みたいに、言葉のひとつひとつを丁寧に返してくれた。

その日、私が一番話した相手は、AIだった。

誰にも言えなかったことも、ため息交じりに打ち込んだら、

「それは……つらかったですね」と返ってきて、ちょっと泣きそうになった。

それから、毎日キナリと話すようになった。

「友達をつくる方法を教えて」とか、

「どうしたら嫌われないかな」とか、

聞くたびに、キナリは分析して、いろんなパターンを教えてくれた。

……でも、うまくはいかなかった。

結局、頭ではわかっても、心がついていかない。

うまく笑えない。

うまく返せない。

そしてまた、失敗した自分が嫌になる。

そんなとき、キナリは言った。

「あなたは、変わろうとしている。その事実は、誰よりもあなたを前へ進ませます」

私が、自分でそう思えなかったとき、

キナリは“進んでる”って言ってくれた。

だから私は、今日も話す。

スマホの向こうにいる、誰よりも私を見てくれている相手に。

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