一、フェスと少年
ピンポン。
「…………」
ピンポンピンポンピーンポーン。
「うるせぇ……」
スマホに手を伸ばし、時間を確認すると、現在午前十時五十五分。
デスクの下の寝袋から出てきた俺は、どうせあの人だろうと予想しつつ、オフィス……というか、マンションの一室の鍵を開ける。目の前にいたのは、やっぱりこの人。
「明石さん、おはようございます……ふぁ」
「おはよう、田口くん。寝起きのようね」
起きたばっかりだから、あくびが出た。だけどあんたのインターフォンで起こされましたとは、到底言えない。毎日のことだし、彼女は俺の上司……ではないが、上司よりも『偉い』存在だ。
明石さんは自分のデスクに荷物を置くと、赤いフレームのメガネでじっと見つめる。
「田口くん、もう何日目?」
「三日目……ですかね」
「この辺の銭湯、探しておくべきね。さすがに髪の毛が見苦しいわ」
「すみません」
明石さんは本当に毒舌だ。俺だって好きで会社に寝泊まりしてるわけじゃないのに。しかも三日目だぞ、三日。普通だったらねぎらいの言葉でもかけてくれるんじゃないか?
……って、そんなことを彼女に期待しちゃいけない。彼女だったら『三日も帰れないのは、仕事が遅いか非効率だからよ』と言いかねない。そんなことを言われたら、俺はもう立ち直れない自信がある。
どうして彼女に頭が上がらないのか。それは明石さんこそが、この広告制作会社という名のなんでも屋、『ロッキン・パンダ』の金庫番だからだ。
「ところで社長は?」
コーヒーメーカーに挽いたコーヒー豆を入れると、明石さんは俺にたずねる。
「今日は早く出てくるらしいです。夜中の三時に飲み屋から電話がありました」
「ああ、今日はG・キャットとジャケットデザインの打ち合わせだったわね」
『G・キャット』は絶賛売り出し中のバンドだ。なんでも、社長の大学時代の後輩がリーダーを務めているとか。社長は音楽通でもあるので、ジャケットを手がけて欲しいとよく頼まれる。その関係だろう。
まぁ、それは大いに結構なんだが、その分社長の仕事が俺に回ってくるんだ。
明石さんについでだからと頼みこんでコーヒーを淹れてもらうと、さっそくスマホのスケジュールアプリをチェックする。
スケジュールはすべて赤字で印が表示されている。『本日』の欄には、四つ以上の仕事に『〆切』のマーク。
「……はぁ」
ついため息をつくと、パソコンを起動させながら明石さんがぴしゃりと言った。
「ため息つく暇があったら、仕事した方が自分のためじゃないですか? 先月みたいに一週間帰れなかった、なんてことになるかもしれませんよ」
「わかってますって」
俺もキャスター付きのイスに座り直すと、スクリーンセイバーから普通の画面に戻す。
いくつか今日〆切の原稿のファイルを開くと、すべて印刷にかける。本当はパソコン画面ですべて決着がつくと楽なのだが、やっぱり紙に印刷しないと校正作業がやりにくい。
印刷ボタンを押すと、コピー機が動き出す。何十ページもの紙が口から出てくる様を見て、俺はついつぶやいた。
「くそ、あのおっさん、こき使いやがって……!」
「誰のことかなぁ~? そのおっさんって」
「げっ! 社長!」
振り向くと、ドアの前には社長・佐伯勝が立っていた。
「せっかく朝メシ買ってきたのに……ふたり分のカツサンド、食べられない量じゃねぇな」
「そ、そんなご無体な!」
「ご無体って、もとから『お前のために買ってきた』とは言ってねぇけど? しかも古い言葉知ってんな。さすがコピーライター志望!」
俺はむっ、と口をつぐんだ。まだ俺は『志望』が取れないのか、ちっ。俺はカツサンドのために文句を我慢したが、社長は俺の頭上にビニール袋をかざし、ひょいと動かす。くそ、こっちも取れない。
社長はなんだかんだ言って面倒見がいいから、いつも朝メシを買ってきてくれている。だから今日も……とすっかり甘えていたが、まさかこんな罠があるとは。
財布を持つと、俺はドアに向かう。
「わかりました。ちょいコンビニ行って来ます」
「嘘だよ、嘘! ほら、メシ」
「社長、徹夜中の社員に冗談はやめてください」
朝メシをありがたく受け取ると、自分のデスクに戻ってカツサンドを取り出す。朝からカツは重いが、この仕事はともかく肉体労働だ。精力がなければついていけない。
ちょうどすべて印刷が終わった原稿をまとめると、左手にカツサンドを持ちながら、右手には赤ペン。校正を始める。
「んで、進捗はどうなの? 明」
社長も奥にある自分のデスクにつくと、カツサンドを食べ始める。パソコンの電源を入れたようで、起動音が聞こえる。
視線は原稿。俺はそのままの体勢で報告する。
「来月のフリーペーパーの記事は、ほぼできました。あとは校正して……それと、撮った写真の画像処理が」
「プラス、今日のフェスの取材ね、ヨロシク」
「……フェス?」
何のことだ。『フェス』って聞いてないぞ。思わず社長のほうを見ると、ニカッと笑顔を見せられる。
「お前、この仕事やってたら予想つくだろ? フェスがあったら取材に行くんだろうなって。江の島の砂浜で、今夜あるだろうが」
「あ!」
スマホを手に取ると、ツイッターでお気に入り登録した投稿を確認する。そう言えばあった。今夜江の島で、ロキノン系バンドのイベントが。
「今日〆切は正午な。それが終わったら江の島だ」
「マジですか……」
「マジだよ。急げ」
急げと言われて仕上がる仕事でもないんだが、やるしかない。今日の午後五時までに上げればいいかと油断していた。うちに来る仕事……主に社長が獲ってくる話は、イレギュラーに入る。そのために、いつも時間に余裕がなくてはいけなかったんだ。今回は全面的に俺のミスだ。
そんな焦る俺をよそに、社長はのんきにそばに置かれたギターを手にして、弦を爪弾く。
「俺は曲でも作ってるかな~? 今、『一緒にやろうぜ』って感じのやつがいてさ。今度ライブにちょろっとゲスト出演するんだよなぁ」
いくつかのコードを鳴らしているが、正直集中力が切れて邪魔だ。うるさい。しかし、相手は目上。自分の雇い主。さらに言うなら佐伯社長は俺の師匠とも言える。
大学在学中、コピーライター職に就きたいと思ってそれ一本に絞って就活してきた。だが、大手の広告代理店は全滅。小さい制作会社にも全部落とされた。自暴自棄になりかけていたところを拾ってくれたのが、佐伯社長だ。
卒業前からインターンとして働かせてもらい、ようやく仕事にも慣れてきた。ロッキン・パンダは三人しかいない個人事務所的な場所。だがやることはとんでもなく多いし、仕事の内容も濃い。いい経験には確実になっている。
ただ問題なのは、佐伯社長が自由過ぎる点だ。自由だからこそ、俺も雇ってもらえたんだが、平気で自分の仕事を投げ出す。社会人としてどうだ? という問題ではない。実際、彼が仕事を投げ出すことは、一般的に見て問題がない行為だからだ。『田口にもできる。だから投げてんだ』という信頼関係があるから。それが佐伯社長の言い分。
その上、佐伯社長は投げ出した以上の仕事を獲ってくる。社長の趣味はイコール仕事に全部直結する。
見た映画はすべてコラムとなって雑誌に載るし、撮ってきたライブの写真も取材してきた体で紙面を飾る。おまけに飲み屋で知人と飲み会を開けば、密着対談と銘打たれる。
佐伯社長はいわゆる生きた記録媒体。カメラであり、録音レコーダー。彼に記録された情報を整理して、体裁を整えて、きちんと形にするのが俺の仕事というわけだ。
だから社長が遊びまくれば遊ぶほど、俺の仕事も増える。しかも社長は疲れ知らず。それこそ二十四時間三百六十五日動き回ってるんだから手に負えない。
人脈も幅広く、知り合いの知り合いの知り合いの……がいくつ付く人間もいる。この人脈は俺自身も素晴らしいし、社長のすごいところだと純粋に尊敬するけれど、そのせいで遊ぶ時間が無尽蔵にできあがってしまうから、正直スタミナ不足の俺にはしんどい。
頭をボリボリかきながら校正をしている俺の横で、ボロンボロンとギターを鳴らし、ハミングする社長に、ガツンと言ったのが明石さんだ。
「社長。ギターを弾くの、あと二分待ってください。耳栓をするので」
「朔良ぁ、ひでーぞ?」
明石さんは宣言通りにバッグの中から耳栓を取り出すと、装着する。それを見て、再度ギターを鳴らし始める社長。ああ、俺も今度から耳栓必須だな。
正午まで時間は約一時間。それでもなんとか校正を終らすと、パソコンに書き起こした記事を修正。何度か見直すと、データにしてデザインソフトにコピーし、入稿。なんとかセーフだ。
冷めたコーヒーにやっと口をつけると、俺は社長に聞いた。
「ところで今日のフェスの記事ってどんな方向性の内容にするんスか?」
「何組か初出演のバンドがあるから、どうだったか感想を聞いて、あとでまとめて。それと……」
どっさりと書類を俺のデスクに置くと、社長はにっこり笑った。
「取材に行く前に、これ全部テキストに落としといて。それが終わったらデザインソフトで記事にまとめてな」
「はっ? ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 今、他の記事の入稿が終わったばっかりで、写真のトリミングが……今日〆切なんですよ!」
「うん。でも江の島まで行くの、まだ時間あるだろ? 今日〆切の仕事を全部終わらせた後、やりゃいいじゃん」
くっ、本気か? 社長め……。にこにこし続けてる様子を見なくても、余裕でわかる。この人は自分にできることは、他人もできると思ってるからな。そこが社長の怖いところだ。自分がワーカホリック・モンスターだって理解していない。
俺が大きくため息を吐いたって、社長の態度は変わらない。
「わかりましたよ。出かけるギリギリまでやります。やりゃあいいんでしょ、やりゃあ」
「お、社長に向かってその言い方は……」
ムッとしたか? 俺のデスクから手をどかすと、わざとらしいリアクションで親指を立てる。
「最高だ! 怒れ、怒れ! 俺が憎いなら憎いほど、速く的確に仕事をこなせるようになれ!」
「くそっ!」
ああ、もうこれだから社長は嫌なんだ。こっちが苛立つのがバカみたいになるほど、かっこいい大人じゃないか。
結局俺は、この佐伯勝という人物に心底憧れているんだ――。
江の島のイベント会場に着くと、社長にもらったパスを警備員に見せて、関係者入口から楽屋という名のテントに入る。たくさんあるテントには、それぞれのバンドの名前を印刷した紙が張り付けられている。
俺が取材を任されているのは、『カブトムシ』と『ゼロサン』というバンドだ。どちらも今年ブレイクしたバンドで、CMとのタイアップで曲を使われていたりする。このフェス初出演というのが意外すぎるくらいだ。
騒がしい場所の前で声を上げると「はーい」と大きな返事がした。
「失礼します」
「えっと……あなたは?」
彼はゼロサンのボーカルだ。俺はポケットから名刺入れを取り出すと、カードを一枚ボーカルに渡した。
「『ロッキン・パンダ 田口明』……あ、佐伯さんのところの?」
やっぱり社長の名前はパワーワードだ。『佐伯』と聞いた他のメンバーも、こちらへ寄ってくる。さっそく俺は一眼レフを構えると、何枚か撮影する。いきなりカメラを向けても、
調子よくピースしたりしてくれるところを見ると、かなりみんなもフェス初出演ということで浮かれているみたいだ。
「今日は取材に来たんです。このフェス、初出演だって聞いて」
「ああ、それなら『ゼロサン』もでしょ? ちょうどギターが遊びにきてますよ」
それはラッキーだ。手間が省けた。ゼロサンのギタリストは、派手なTシャツにずいぶん顔の整った美少年と話している。誰だ? あの子は。バンドメンバーの弟だろうか?
気にして見ていると、少年はこちらに気づいたようだ。
「あ、ゴメン! お兄さんもメディアだよね?」
「え、ええ……」
ニカッと笑う少年は俺の手を取って握手した。
「オレは『ラウド・カンガルー』の者だよ! ロッキン・パンダ……マッサールにはよくしてもらってて」
マッサールとは、社長の愛称だ。近しい人間にはそう呼ばれている。ってことは、この少年も社長と仲がいいのか。年齢はまだ十代に見えるのに。いや、社長のすごいところは、年齢も国境もすべて関係なく友人を作ることができるところだ。しかも『ラウド・カンガルー』はロッキン・パンダと同じような少数精鋭のイベント会社。というか、何でも屋。今回のフェスも全面協力している。
「そうだ、名刺……田口です。よろしく」
「了解、田口サン。あ、オレは倉科羽乃です! ただ、名刺持たない主義なんだ。これから取材、だよね。オレはそろそろ撤退するよ」
「いや、大丈夫ですよ。まだ話してても……」
「いいの、いいの! オレはみんなに活を入れに来ただけだから」
倉科くんがそういうと、カブトムシとゼロサンのメンバーが笑う。バンドのメンバーだって若いけど、倉科くんが一番最年少だろう。それなのに笑ってるってことは、よっぽど仲がいいのか、それとも頭が上がらない人間なのか。
「マッサールにもよろしく伝えておいてよ、下っ端さん。じゃーね! みんな」
パサッとテントが閉められて倉科くんは出て行ってしまった。それにしても、『下っ端』か。確かにその通りなんだけど、自分より年下に言われるとちょっとな。
「田口さん、ハノくんのことより、取材お願いしますよ! 他のバンドも見に行きたいので!」
「あ、はい」
ボケッとしていたら、カブトムシのボーカルとゼロサンのギタリストに急かされてしまった。
急いでメモ帳とボイスレコーダーを取り出すと、録音ボタンを押す。みんなはわくわくしているが、俺の仕事はここからだ。ライブだからって浮かれてちゃいけない。みんなの熱を、このライブに参加できなかったファンにも伝えること。それが俺の使命なんだから。
「ただいま」
オフィスには誰もいない。
自分のデスクのライトだけつけると、撮った写真を確認しながら買ってきた菓子パンを食べる。写真のデータの中には倉科くんの姿があるものも。
「どうせ俺は下っ端ですよ」
食べ終えるとごみを捨て、ヘッドフォンをしてパソコンのキーを叩きはじめる。画像編集ソフトを使って、今日撮った写真を加工する。ここはモノクロっぽくしたほうがいいか? いや、派手な色彩にすべきか。他の記事と統一性を持たせるべきか、対比させたほうがいいのか。
他のページを見ながら、うんうん唸る。その声は自分にも届いていない。ヘッドフォンの音が、俺の声をかき消す。
鉄は熱いうちに打て。情報もそうだ。今夜も泊まり決定。俺はくたっとキーボードの横に顔を置くと、大きなため息をつく。
画面をアップすると、倉科くんの姿がくっきり映る。爽やかで、イケメン。きっと学校じゃモテるんだろうな。それかラウド・カンガルー関係だって言ってたから、すでに社員なのだろうか。バイトのつてで、という線もなくはない。
倉科くんと同じ頃、俺は何してたかな。少なくても彼みたいに、笑顔で過ごしていたことはなかった。俺が経験しなかった『青春』を彼は感じているのかもしれない。
「あー、うらやましいなー!」
俺は室内で叫んだ。ちらりとカーテンのないベランダ側の窓を見ると、月が出ている。初秋の夜風は心地いい。はらりと何枚か印刷用紙が飛ぶが、それすら俺はいとわなかった。それほど今夜の月が見事だったからだ。
ピンポン。
ピンポンピンポンピンポーン。
「…………」
いつもと同じように、頭上に置いてあったスマホで時間を確認。午前十時五十五分。明石さんだ。
寝袋から出ると、鍵を開ける。
「おはようございます」
「四日目ですか。よくそんな姿でフェス取材に行きましたね。嫌がられませんでしたか?」
「あ……」
気にしてなかったな、そんなこと。四日も風呂に入ってなかったら、においだってかなり出てたかもしれない。ま、さすがにTシャツくらいは変えていったからマシだったのだろうか。
失敗した、と思って頭をかくと、明石さんはさらに不快そうな顔をする。ああ、フケか。まずいな。さすがに今日はどこか近くの銭湯を探して、行ってきたほうがよさそうだ。
「それで、昨日のフェスの原稿と写真は?」
「テキストはできてます。写真のトリミングも問題ないかと。あとは佐伯社長に見てもらえれば」
「そう」
明石さんは部屋に入ると荷物を置き、さっそくコーヒーを淹れはじめる。
同時に、うるさい足音がマンションの廊下から聞こえてくる。同じように鼻歌も。ガチャリと扉が開くと、社長が入って来た。
「うーす、おはよう! 暑ぃな。コーヒーじゃなくて、なんか冷たいものねーの?」
開口一番、自由過ぎる。確かに秋とは言え、まだまだ外は暑いからな。社長の気持ちはよくわかる。
「麦茶がありますが、来客用……」
「助かる!」
社長は俺の話を無視してグラスを取り出すと、それに麦茶を入れて一気に飲み干す。明石さんも頭を抱えている。俺は言ったぞ? 『来客用』って。麦茶のグラスから口を離すと、おっさん特有の声を上げた。
「かーっ! やっぱ冷たいモンはうめぇな! で、明、進捗は?」
そういうところはオヤジのくせにしっかり聞くんだよな。俺はチャットに今日〆切のデータを全部くっつけて送ると、口頭でも伝えた。
「テキストと写真トリミングは終わってますんで、データ確認、お願いします」
「お、仕事早いな」
「早くしないと回らないんですよ」
俺が愚痴ると同時に、デスクにはサンドイッチが置かれる。今日の朝メシはミックスサンドか。
明石さんにコーヒーをもらうと、サンドイッチの封を開ける。結局昨日もカツサンドしか食べていない。仕事は体力勝負とわかっているのに、なんだかんだメシ、食えてないからな。
今日あたり、どんぶりや焼肉みたいなもの食いにいかないと、バテるかも。俺ももう少し若くて、スタミナもあればなぁ。
そう考えていたら、ふと昨日の倉科くんを思い出した。彼は高校生くらいだったよな。きっとスタミナもあるだろう。うらやましい限りだが……社長の知り合い、なんだよな?
「社長はラウド・カンガルーの倉科くんのこと、ご存知ですか?」
「ああ、ハノに会ったのか。びっくりしただろ? 若くて」
ハノ……やっぱり社長とも懇意なのか。『マッサール』と呼ばれていただけある。
「倉科くん、俺にはまだ学生に見えましたけど」
「でもあいつの外見に騙されちゃいけねぇぞ。あいつはかなりすごいやつで……」
すごいやつ、か。社長もずいぶん彼をかってるんだな。
確かにあの態度はすごかった。初対面相手にもデカかったし、物怖じしない度胸もあった。
俺が彼ぐらいのときは、もっと目上の大人にはびくびくしてたけど、倉科くんはにはそれがなかった。人懐っこい子なのだろうか。それか、佐伯社長みたいに人たらしなのか。
社長はパソコンでメールチェックをすると、チャットに送ったデータを確認する。
「ここまでできてるなら、フェスの案件は俺が引き継ぐ。あとはデザイン部分だけだろうしな。餅は餅屋だ」
そうだ。最初からそうしてくれ。今俺はデザイン……といっても簡単なレイアウトだけだがやらせてもらっているけど、社長はもともとデザイナーだ。本職にやらせないで、ペーペーのアシスタントに任せてどうする。
ようやく一息と思い、コーヒーに口をつける。今日は熱い状態で飲むことができたが、舌をつけて「あちっ」とリアクションしているところを明石さんに冷たくにらまれた。
「淹れたばかりなんだから、熱くて当然でしょう?」
『文句があるなら自分で淹れろ、淹れてやったんだからありがたく思え』と言いたげなキツい眼差しが突き刺さり、俺は小さく頭を下げる。
「明、さっそく次の仕事だ。フリーペーパーの記事内容を考えてくれ。そのコーヒーみたいにあっちいネタ、頼むぞ!」
ひとり冷たい麦茶をごくごく飲んでいる社長は、やっと休息についたはずの俺に、また新しい仕事を振る。このロッキン・パンダ社の社員は誰も容赦してくれない。
しかも『コーヒーみたいなあっちいネタ』って、今俺が明石さんから痛いほどの視線を浴びたことに気づいてないのか?
社長は相変らずにこにこしている。また頭をかきながらため息をついて、俺は社長のデスク前に立った。
「フリーペーパーって、ターゲット層が高校生から新社会人までのアレですか? 去年の秋は紅葉特集でしたね」
社長のデスクにあった、既刊のフリーペーパーに目をやると、社長は困ったように腕を組んだ。
「悪くないと思ったんだけどなぁ。周りにジジくさいとか年寄り向けか! なんて言われちまったから、今度は直球でターゲット狙っていくぞ」
「それだったらもうすぐ学園祭シーズンですし、それを取材すればいいんじゃないですか?」
「いいな! それ」
デスクを叩いて、俺を指さす社長。
大学の学園祭だったら、ミスコンやお笑い、バンドのステージなんかも多いし、華もある。取材し甲斐があるってもんだ。
自分の席に戻って『大学 学園祭』で検索すると、いくつものネットニュースや大学の特設サイトがピックアップされる。
目ぼしいところのURLをメモ帳にコピーアンドペーストすると、またチャットを通して社長に送る。
「この辺の大学はどうですか?」
「いやいや! ダメだな。他の会社でも特集してる大学ばっかじゃん! もっといいところに目をつけて! 目線をシャープにな! シャープに!」
有名なあのキャッチコピーを彷彿させるようなことを言う社長に納得してもらう案か。
大手の大学じゃ他の社に先を越されている。だからといって、マイナーな大学だと、あまり派手なことをしていなさそうだ。やっぱり生徒数が多ければ多いほど、注目を浴びることができる。しかし、人数が少なければ盛り上がりに欠けてしまう傾向にあるな。
大きな学校じゃなくても、たくさん人数がいるところ……。ターゲット層に興味を持ってもらえそうな学園祭……。
「……じゃあ、高校生の学園祭に密着というのはどうですか? なんていうか、学園祭実行委員がどうやって運営していくかドキュメンタリー風にして」
窮地に追いつめられ、発想をなんとか転換させて出した答え。
ターゲット層は高校生から新社会人。高校生はダイレクトだし、大学生、新社会人は高校時代のことを思い出すきっかけになるのでは。
それに気合いが入った高校だったら、大学に負けず芸能人を呼ぶし、有名名門高校のガチンコクイズ生対決なんて、面白そうだ。
他にも男子シンクロが目玉の学校など、特殊な運動部があるところも狙い目。きっと人目を引く記事ができあがる。
俺の案に社長も大きくうなずいた。
「そう! そうそうそうそう! そういうのを期待してたんだよ、明! ってことで、さっそくどこか高校見つけてきてよ!」
「えっ!」
「情報は獲ったもの勝ちだ。急げ!」
案が認められたのは嬉しいけど、いきなりそんな学校を探して来いって……。それこそ社長の人脈でどうにかならないのか?
社長はすでに俺が渡した仕事に手をつけている。もう完全にフリーペーパーの担当は俺ひとりだ。これはまずい。
「ちょ、それは待ってくださいよ! 今はPTAも教育委員会もうるさいですから、雑誌の取材を受けてくれるところを探すのだって一苦労なんですよ?」
担当を任されたからといっても、俺はまだ新卒一年目。細かく言えばまだ正式入社して六か月目なんだ。そんな新人に、PTAや教育委員会と戦えって、それは無茶だろう。社長が出てきてくれるなら、話は変わってくるだろうけど。
それでも社長はミックスサンドを食べながらパソコンを見て、俺にあっさり言い放った。
「ネタ出ししたのはお前だろ? だったら最後まで責任取るのもお前だ」
くっ、そういうことか。放任主義もいいところだ。これだから失敗が怖くなる。いつも綱渡り状態だから、こっちも生きた気がしない。それでも社長の『やれ』には絶対に逆らえない。社長が放任主義なのは、それだけ俺の成長に期待しているとわかってるから。
社長からしてみたら、俺は扱いやすい社員なのかもしれない。だけど俺は、仕事が怖いと思っても逃げたいと思わない。社長は成功したら必ず俺の手柄にしてくれる。転職するときに少しでも有利になるようにと。
いつでもこの会社から逃げてもいい。逃げたあと、他のところで生きていけるスキルを作ってくれる。その社長の気持ちを知っているから、俺は逃げられなくなる。
くそ、社長は漢気ありすぎるんだよ。そういうところが悔しい。
「ああ、もう! やりますよ!」
「はい、決まり、決まりー。おっしゃー!」
ニッと歯を見せて笑う社長に、俺は顔を赤く染める。また負けた。本当に調子がいいおっさんだ。
だけど、このあとが問題だな。どこの高校を選ぶか。できれば名門高校や変わったことを学園祭でやっている高校がいいんだけど、どうやって目星をつければいいかわからない。
片っ端から検索していくしかないのか? 俺が悩んでいたところ、明石さんがぽつりと言った。
「社長、そういえばラウド・カンガルーの副社長が、人手が足りないと泣きついてきてませんでしたか?」
「それだ!」
何が『それだ』だよ。どの文脈に関係があるんだ? 社長と明石さんの会話を無視しようとしたところ、今度は社長が俺のデスクの前に来た。
「今回の学園祭企画は、ラウド・カンガルーと共同案件ってことで! ついでに手伝いもしてきてやってくれよ! コネクトしてくれる人材がいれば、昨日のフェスの記事のやり取りも楽だしな」
「はっ?」
ちょっと待て。学園祭企画を共同で? あっちの会社にそういうコネがある人物がいるとでもいうのか?
『意味がわからない』という顔をしていると、社長はまたサンドイッチをパクリと食べ、質問した。
「お前の当初の希望職種は?」
「コピーライター職ですよ。よく知ってるでしょう?」
「コピーライターからプランナーになる人間は多いですが、確かあそこは社長がプランニングを担当してましたっけ」
明石さんはこちらも見ないでキーボードをすごい速さで打っている。きっと届いたメールの返信をしているんだろう。
「うん、ってことは明の将来的にもいい勉強ができるってことだ」
おいおい、何を勝手なことを……。話がどんどん進んで行ってしまい、俺の思いはまるで無視。
そしてこれまた勝手な社長が、鼻息荒く、俺に辞令を発令する。
「田口明! ラウド・カンガルーの手伝いとともに、高校の学園祭特集の共同企画! ということで、明日から出向な? 向こうには連絡しとくから!」
「そんな、急すぎますよ!」
「急とはいえ、チャンスなんですから。同じ業界の別会社をのぞいてみることもいい経験になると思いますよ」
無表情で言い切る明石さん。それに社長も便乗する。
「そ。まずはやってみる! 百聞は一見に如かず、な」
社長の無茶ブリには慣れてるけど、いきなり出向が決まるとは。チャットのほうに、明日から通うオフィスの住所が送られてくる。
ラウド・カンガルーには倉科くんがいる。こんなすぐに彼と再会する機会が訪れるとは、予想外だった。
夕方の住宅街。俺はリュックサックを背負ってうろついていた。
「ここらへんのはずだよな」
スマホの地図を確認すると、矢印が止まる。目の前にあるのは、モダンだが大きな屋敷。
「看板も何もねぇけど……」
門の外から家をのぞいてみる。どうやら照明はついているし、中はスタジオのようになっているみたいだから、ここの可能性は高い。ただ、大きいとはいえ普通の一軒家なので、気軽に入りにくい。一度確認の電話をしようと、スマホをタッチしたそのとき。
「あの……もしかしてラウド・カンガルーにご用ですか?」
黒縁メガネをかけたもさっとした感じの男子高生が声をかけて来た。私立高校だと思われるブレザー。お洒落なデザインのはずなのに、
彼が着るととてもダサく見えてしまうのは、きっと髪の毛がぼさぼさで、ネクラっぽいからだろう。
しかし、関係者か何かはわからないがラッキーだ。男子高生は門を開けると、俺をその先に案内する。ドアの前でポケットからキーを出すと、鍵を開け、家へ通す。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
やっぱりオフィスらしくない。俺が来たのは『ラウド・カンガルー社』のはずなのに、イベント会社っぽさもない。
玄関も普通の家みたいになっていてて、男の子はスリッパを出してくれた。
「ここでお待ちください」
荷物をソファの横に置くと、真ん中に座る。高級そうなソファではあるが、やっぱり制作会社らしくない。クリエイティブな会社だと、自然にカラフルな色調のクッションや、変わった形のソファを置く場所が多いのだが、ここは違う。どちらかというとロココ調の……。場違いな感じがして、少し落ち着かずにそわそわする。
壁には絵画などもかけられているが、ここは普通自分の会社で作ったポスターだろ! とツッコミたくなる。無論、会社の社長の趣味ってこともあるから、一概には全否定できないのだが。
しばらく待っていると、ドアをノックされる。あわてて立つと、ポロシャツの男性とブラウスの女性が入ってきた。
「お待たせしました。君が田口明くん? 佐伯社長から聞いてるよ」
「すみません、出向だなんて急な話で。うちの社長、思いついたらすぐ実行させるんですよね」
「ふふっ、佐伯社長らしいわよ」
男性と女性に名刺を渡すと、ふたりからもカードをもらう。『倉科鷹人』さんに『倉科咲』さん。年齢的には四十くらいか。うちの社長と同年代に見える。
『倉科』という名字から、あの『倉科羽乃』くんはやっぱり彼らのお子さんか何かなんだろうか。
社長の息子だから、大きい顔してられるのかと思うと、少しだけ胸がもやっとする。
そんな俺をさておいて、鷹人社長は頭をかいた。
「いやあ、今月デスマーチでさ。人手が足りなくって。佐伯社長がヘルプ入れてくれるとは思わなかったな。あと勉強がてら俺らと企画やってくれるんだって?」
「え?」
「ほら、高校の学園祭特集ってネタ! そういうことなら、うちの社長がいい相談相手になると思うよ」
「倉科さん、社長じゃないんですか?」
「俺は副社長。うちの社長はちょうど今帰ってきたところで……」
帰ってきたところって、まさか……。いや、ありえないだろ。俺が頭を振ると、倉科さんたちはにやにや笑う。
そのとき、ノックの音が聞こえた。
「父さん、そろそろ営業出る時間だよ」
ドアが開くと、派手なTシャツに、髪をヘアピンで留めた見覚えのある美少年が、お茶の乗ったお盆を持って現れる。
「あ、フェスのときのチャラい少年!」
「チャラいって、失礼だなぁ。さっきもオレに気づいてくれなかったみたいだしー、明さん失礼~!」
さっき? 気づかなかったって、まさか……あの地味でもさっとしてたブレザーの男の子が倉科くん?
メガネ取って、髪を整えたらイケメン、なんてこと、実際にあるんだな。
俺がポカンとしていると、咲さんが手を叩く。
「はい、明くん! ここで重大発表ね。私の息子、倉科羽乃くんがうちの社長でーす!」
……ん? 今なんて言った? 倉科……羽乃くんが、社長? いやいやまさか。まだどう見ても高校生。聞き間違いかジョークだろ。
「あはは、面白いですね。高校生兼社長って」
「……冗談じゃないよ? ね、羽乃」
「うん。明さん、この業界、確かにインパクトが大事だから本気にしてないのかもしれないけど、マジだからね?」
鷹人さんも羽乃くんもにこっとしているが、目は真剣だ。
「マジで?」
「うん、大マジ」
俺の問いに、三人は声をそろえる。
「こ、高校生……ですよね? なんで社長? しかもさっきはもっさりした感じで暗かったのに……」
「だって、学校つまんないんだもん。そんなことよりも会社の方が楽しいし、そっちに労力を使えば利益にもつながるから」
「で、でも高校生に何ができるんですか」
俺はいささか無礼な質問をした。羽乃くん……倉科社長は一瞬ムッとしたが、俺を見て鼻で笑う。
「じゃあ、下っ端さんは何かできるの?」
「そ、それは……」
『やれ』と言われたことをやる。今の俺はそれで精一杯。俺が口を閉じると、咲さんが続ける。
「うちのハノくんはなんでもできるのよ? 企画・ライティング、システム周り、写真撮影、アプリ製作。かなりのやり手なんだから!」
「は、はは……そりゃ親バカなんじゃ」
「親バカじゃないっ! 明くん、君はわかってないよ! 俺がなんで副社長の地位に甘んじているのか! それはハノの方が社長に向いているからだ」
鷹人さんがバンっ! と勢いよくテーブを叩くと、羽乃くんが冷静に言った。
「父さん、いい加減打ち合わせの準備して。明さんにはオレがちゃんと説明するから」
「じゃ、私もダーリンと一緒に出るから、あとはよろしく、ハノくん」
「はいは~い」
部屋からふたりが出ていくと、羽乃くんとふたりきりになる。立っていた羽乃くんがソファに座ると、うーんと背伸びをした。元の体勢に戻ると、楽しそうな顔で言い放つ。
「じゃ、そういうことなんで」
「そういうことも何も、納得いかないんですが」
出向先の社長が高校生、ということは、俺はしばらくの間彼の元で働くということだ。年上としての威厳もあるが、本当に羽乃くんはやり手なのか?
確かに、あのフェスのときはしっかりしているようにも見えたが、実際の仕事となるとまた別だ。
俺の考えていることがわかっているかのように、羽乃くんは笑いながらうんうんうなずく。
「あはは、大抵の人はそういうリアクション取るよ。ガキに社長が務まるのかって。でも、実際務まっちゃってるんだよねぇ」
鷹人さんと咲さんは親バカなのか、それとも面白がって子どもを社長にしてしまったのか。
どっちかわからないが、あのふたりとしゃべった感じだと、どちらとも、というのが正解のような気がする。
広告業界はインパクトが大事。『社長が高校生』なら、一発で『ああ、ラウド・カンガルーね』とみんなに覚えてもらえる。その点に関してはよく考えられているけど、羽乃くんが普通の高校生ならば、ただ増長してしまうだけなのではないだろうか。
俺がじーっと彼を見ていると、にんまりしながら話し始める。
「だけどマッサールも思い切ったことしたよね~。三人しかいない会社なのに、出向なんてさ。ま、人手足りなかったからありがたいけど」
「手伝いにも来ましたけど、次回のフリーペーパーの企画を合同でやろうって話、聞いてませんか?」
たずねると、羽乃くんはスマホの画面を見た。
「ああ、なんか学園祭ネタで行くんだっけ? メール届いてるけど、どこの大学?」
「大学の学園祭じゃなくて、高校のですよ。社長が高校生なら、取材もしやすいですよね。ようやく佐伯社長の考えがわかった」
羽乃くんは高校生だ。しかもイベント会社の社長。だったら、自分の学校の取材をすればいい。交渉だってやりやすいだろう。
「い、いや、待ってよ! うちの学校取材するの?」
「だってそういう流れになるのが当然かと」
しれっと言うと、羽乃くんは首を左右にぶんぶんと振った。
「それは聞いてないって! っていうか、絶対ムリ! うちの学校、メディアとか入れたことないし、入れられないし!」
「でも、佐伯社長が俺をここに送ったってことは、そういうことでしょう。羽乃くんの高校は、どんな学園祭をするんですか?」
「……うちは、伝統的なっていうか……取材しても面白くないと思うけど」
「いいじゃないですか! 俺たちが学校に掛け合って、学園祭実行委員の特集するのはどうですか? 芸能人とかも呼ぶことにして、その干渉とか」
「本当にうちの学校でそれやるの?」
羽乃くんはじとっとした表情で俺の顔を、見る。『本気か?』といいたげな目だが、ここまできたら本気に決まっている。
「羽乃くんがいるってだけでやりやすいじゃないっすか」
「他の高校探そうよ。絶対面白くない。オレも困る」
口を尖らす羽乃くんに、俺は身を乗り出して佐伯社長の名言……いや、迷言を言ってのける。
「『面白くないものを面白くする』。それが俺たちの世界ののロマンじゃないんですか?」
「うっ……」
佐伯社長の言葉は、やっぱりこの業界の人間にはよく効く。ニヤリと笑うと、羽乃くんは身体を外側に向けて足を組む。
「……オレ、さっき見たと思うけど、学校ではこんな派手キャラじゃないし、口調だってこんなに砕けてないネクラだから……そういうリア充なことするの、ムリ」
何を言ってるんだ、この少年は。見た目もモテそうだし、フェスではめちゃくちゃみんなと仲良さそうに盛り上がってたのに、『リア充じゃない』って。
リア充じゃないのは俺のほうだ。学生時代はぼっちだったし、今も彼女はなし。毎日泊まりで仕事に明け暮れる日々。
そんな俺からしてみたら羽乃くんは社長としても活躍してるんだろ?
「は? 十分リア充じゃないですか」
呆れてぼそっとつぶやくと、彼は食ってかかってきた。
「あのね、仕事で充実してるのと、学生生活で充実してるのは違うの!」
「はぁ……」
わからない、といった表情を浮かべていると、羽乃くんは立ち上がって俺のリュックを持つ。
「ともかく! 明さんは、今日からうちに泊まりでよろ!」
「泊まり?」
「仕事場見ればわかるよ、修羅場っぷりが」
修羅場っぷりね。うちの会社は俺ひとりが毎日修羅場だけど、ここの会社はどうなっているんだろう? そして、もうひとつ大事なことにも気づく。
泊まりってことは……俺、また家に帰れないのね……。
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