第6話 権力と宗教


1999年(平成11年)10月5日


自民党と公明党は連立した。


「自民党の○○に鉄槌を降す!!」


と叫んでいた学会幹部もいたのに、連立したらあっさり、創価学会では自民党批判が無くなった。


「自民党にも良い政治家はたくさんいるんだよ」


と、岩村さんは僕にそう言った。


それは確かにそうだろう。


しかし、


(あまりにも節操が無さすぎないか?)


と僕は思った。


でも、周囲の人から見れば僕もあっさりしているのだろう。


自民党と公明党が組んだからといって、僕も創価学会から脱会するというわけにもいかないし…。


そして、また選挙が近くなる。


創価学会では学会員を内部と言って、学会員以外の人を外部と呼ぶ。


いつも座談会をやる家で、選挙のための唱題会が行われ、僕もそれに参加した。


唱題会が終わった後、ある壮年部の学会員が、やはり壮年部の支部長に


「内部の人で共産党にいれるっていう人がいるんだそうだ」


と言っていたのが、そばにいた僕にも聞こえた。


支部長が


「ん?外部の人?」


と聞き返すと


「いやいや、内部の人」


すると支部長は


「たまにはそんな、ひねくれものも、いるだろ」


と問題にもしていなかったようだ。


ひねくれもの…。


その言葉を聞いて、僕は思った。


(その共産党にいれると言っている学会員も、よくよく考えて決めたはずだ。学会員になってしまうと、政策等を考えても、結局は公明党1択になってしまう雰囲気があった。これはおかしいのではないか)


表立っては言わないが、公明党以外の政党に投票する学会員もいるのかもしれない。


もし僕が公明党以外の政党に投票したとしても、僕は他の学会員にそんなことは言えそうになかった。


僕は創価学会から教えられることを鵜呑みにせず、もっと政治を勉強して自分なりの投票をしたいと思った。


この頃の僕は30才前後。


それは世間のことが分かってくる微妙な年齢だ。


(他の学会員は選挙をやると功徳があると、本気で信じているのだろうか?)


とも、僕は疑問に思った。


創価学会は御書根本のはずだ。


大聖人様(日蓮)の御書には、選挙をやると功徳がある、と書かれているのか?


僕には分からなかった。


いつの頃だったか忘れたが、地区の座談会で、舛添要一氏が公明党を褒めちぎっているビデオを僕も観たことがある。


その頃の舛添要一氏は人気があった。


(あの舛添要一が褒めているのだから、公明党は良い政党なのかな)


と僕は思ってしまった。


僕の場合は創価学会の活動をするほど、公明党以外の選択肢を考えなくなるような気がした。


後年、創価学会以外の友達が、僕よりも政治について、いろいろ勉強している、と思うことがよくあった。


また、僕も座談会に出席した時、内部資料と書かれたチラシをもらった。


それには、公明党の実績、確か、地域振興券や、年金100年安心プラン、子宮頸がんワクチン等のことが書かれていたと思う。


僕はこの時、極楽寺良観(忍性)を思い出した。


良観は鎌倉時代の僧(真言律宗)で、病人や貧しい人へ食事や衣服を提供したり、橋や道路を直すなど、慈善活動を数多く実践したという。


ところが、大聖人様(日蓮)によると、良観は鎌倉幕府と結託して、大聖人様を死罪にしようとしたそうだ。


死罪はかなわなかったが、大聖人様は佐渡に流罪となった。


ただ、良観の著作には大聖人様の名前が出てこない。だから、良観は大聖人様を相手にしていなかったのではないか、という説も、僕は聞いたことがある。


だが、僕が思うに、裏で大聖人様を亡き者にしようと画策した人が、それを記録に残すだろうか。


僕はまた、提婆達多も思い出した。


提婆達多は阿闍世王と共にお釈迦様に敵対して、種々の危害、三逆罪(出仏身血、殺阿羅漢、破和合僧)を犯したそうだ。


権力と宗教が結びつくとロクなことはないと、僕は考え始めた。

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