第3話 【二人目】ノア・シールドライト
鋼鉄の双盾を背に、ノアはパーティーの会議室に呼び出されていた。ギルド《星詠みの残光》──技巧と魔法を重視したバランス型のパーティー。その中で、ノアはただ一人、盾しか持たない“純粋タンク”だった。
「……ノアさん、今日は話があるの」
リーダーのミレイが目を伏せたまま切り出す。周囲にはサポート魔導士、弓使い、斥候。仲間たちは揃っていたが、誰も彼女の目を見ようとしなかった。
ノアは薄々気づいていた。昨日の戦闘の後、誰も彼女に声をかけなかったことも、今朝の連絡が“集合”ではなく“個別”だったことも──全部、分かっていた。
「また……やっちゃった?」
「……ええ。昨日の中型モンスター、“トゥルースワーム”戦。ノアさん、最前線で──」
「盾で殴って気絶させた。それで助かったじゃん」
「……それ、タンクの仕事じゃないのよ」
「敵を止めるのがタンクでしょ? だったら動けなくするのが一番手っ取り早いじゃん。私は、合理的にやっただけ」
「……違うのよ」
ミレイの声は震えていた。まるで自分を責めるように。
「ノアさんの盾は、確かに強い。攻撃も受けられるし、反撃だってできる。だけど……あなた、指示を聞かない」
「……」
「隊列も無視して、敵の懐に突っ込むし、“盾役”なのに後衛の背後に回って“こっちの方が殴りやすい”とか言うし……もう、私たちじゃ制御できないの」
ノアは静かに笑った。いつものように、肩をすくめて冗談交じりの一言を返す。
「つまり──“火力が欲しいなら戦士を連れてけ”ってこと?」
その場に、重い沈黙が落ちた。
正解だった。
「分かった。あんたらが私を制御できないなら、こっちはこっちで好きにやるだけ」
くるりと背を向け、双盾が金属音を立てた。
「でもさ──あんたら、後悔するよ。私の盾に助けられた場面、何度もあったろ?」
「……わかってる」
ミレイの返事は、弱々しかった。
ノアは振り返らずに会議室を出た。外は、もう夕暮れ。
盾で殴って何が悪いのか、彼女には最後まで分からなかった。
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