またいつか会える
やがて、雨もやみ、太陽が顔を出した。テレンスとラーフも、黒焦げのまま立ち上がり、自身のすすを払った。
「ガーディアンの体じゃなきゃ、瞬殺だろうな」と、ラーフが苦笑いする。
「そうだな」と、テレンス。
「オーウェン、今日は一本取られたぜ」と、テレンス。
「そうか」と、オーウェンが嬉しそうに笑う。
「だが、オレを助けてくださったのは、ハインミュ・・・・」と言いかけて、オーウェンはハインミュラーの姿を探した。
ハインミュラーが、地に伏しているマドリーンの傍に跪いていた。マドリーンの脈をとり、本当に死んでいるのを確かめ、ハインミュラーは一粒、涙を流していた。
「”ネメシス“か・・・・」と、オーウェン。
「そうだ、越王は、ゴドウィンに返しておかなければな」と、オーウェン。神々の作った武器なので、空間経由で、いつでも、預けたり取り出したりできるのだが。
「終わったな・・・」と、テレンス。
こののち、3人は、シェフチェンコを倒したゴドウィンと会うこととなる。
*
「異人さん、もう傷の具合はいいんですか」と、ハインミュラーが、城の中で、三角巾で腕をつっているオーウェンの隣に座る。
「やぁやぁ、ハインミュラーさん!!ええ、もう、おかげさまで。ガーディアンの体は、人間の数倍は強いですから。神々の力によって守られていますしね」と、オーウェン。
あの戦いののち、無事アガーテとベアーテは再開し、母・ミラナ女王と共に、3人で喜び泣いたのだった。
「まさか、俺の親父が、途中からフェイトになりすまされてたとはね」と、ハインミュラー。
「ええ、そうですね」と、オーウェンが苦笑いする。
「それも、数年前から。俺は、気づけなかった」と、ハインミュラー。
「俺に、”斬“を授けてくれた親父は、きっと本物の親父だった、と俺は信じてます」と、ハインミュラーが続ける。
「俺も、もらいますよ、その『斬』。気に入りました」と、オーウェン。
「ええ、ぜひ使ってやってください、親父もその方が喜ぶでしょう」と、ハインミュラーがふと空を見上げる。
「では、私はちょっと席を外します。アガーテに用があるので」と、オーウェンが、石の階段からすっと立ち上がる。
そして、オーウェンは、アガーテの居室に向かう途中で、「オーウェン!!」という、元気な女の子の声を聞いたのだった。
「アガーテ!!」と、オーウェン。
「君を探していたのだが、先に見つけられてしまったな」と、オーウェンが笑う。
傷を負っていなかったアガーテは、ここ数日、負傷したガーディアンさんたちのお見舞いで忙しかったのだ。
「オーウェン、もう足の傷はいいのか??」と、アガーテ。
「もうそっちは、自己治癒力で良くなったよ、アガーテ。それより、ちょっと、あちらの中庭で話そう」と、オーウェン。
二人は、15分ほど歩き、城の4番目の中庭の隅に座り、話をした。が、最初は、ちょっと黙り込んでいた。
「マドリーンが、まさかフェイトの手先で、わらわたちの命を狙っていたとは・・・・すまない、オーウェン、オーウェン殿の見立てが当たっていた、私がことを分かりにくくしてしまった」と、アガーテ。
「いや、マドリーンさんは・・・・最期、俺らを助けてくれたんだ。きっと、君や女王陛下と過ごした日々は、彼女にとっても大きなものだったのだろう・・・」と、オーウェン。
「ところで、伝えておきたいことがあるのだが、フェイトが王族ばかりを狙い、王族殺しを続けたのは、彼が最初、ロレンソという名前の、王宮勤めの役人だったことに理由があるのでは、とアテナ神は言っていた。あくまでも一説だが・・・。それだけ、言っておく。もうフェイトはいない」と、オーウェン。
「だが、ハデスとシェムハザという、裏で手ぐすねを引いている死霊の国の奴らは、死んでおらぬのじゃろう。わらわたちの住むこの世界は、未だ危機の中にあるわけだ」と、アガーテ。
「そうだな・・・」と、オーウェン。
「あと一つ、オーウェンに頼みたいことがある」と、アガーテ。
「ラルセンが・・・・わらわと母上を逃がそうとして、霊力を使いすぎてな。もうこの世に顕現できないそうだ。どうすればいいと思う、このままでは、ラルセンは・・・・助からないかもしれない」と言って、アガーテが両手をぎゅっと握りしめる。
「それなら心配はいらないよ、アガーテ。アテナ神のはからいで、ラルセン殿は、俺らと一緒に、天界に連れて行くそうだ、そこでは、ラルセン殿は人間の姿に戻れるそうだ。天国で、君をいつまでも待っているそうだ」と、オーウェン。
「・・・・ありがとう、だが、オーウェン、オーウェンはずっとこの国にいてくれるのではないのか・・・!??」と、アガーテ。
「俺らがこの国に遣わされた理由・・・・長年の”王族殺し“の犯人を無事突き止め、退治できた。だから、俺らは一度天界に戻るよ、ラルセン殿を連れてね!大丈夫、またいつか会えるさ」と、オーウェン。
「そ、そう・・・・・・」と、アガーテがしょんぼりした顔になる。
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