第十章 最後の戦い
諦めない心
「アガーテ、俺もオーウェンさんの助太刀に行く、君はミラナ女王を連れて、ここから離れるんだ、いいな!」と、ハインミュラーが言う。
「うむ、分かった、ハインミュラー。オーウェンを助けてあげて!」と、アガーテ。
「アガーテ、行きますよ。ここから逃げるのです」と、ミラナ女王がアガーテの手を取る。
「心配すんな」とハインミュラーが笑顔で見送る。
「・・・にしても、変な天気・・・」と、アガーテが、ドレスのフードをかぶり、雨の中、母と手をつないで逃げる。
その頃、ザフキエルと共に戦っていたオーウェンは、肩で息をしながら、フェイトと、イグ・サツ―ティ5体と戦っていた。ついに、アテナ神とずっと探っていた、”王族殺し“の犯人、フェイトを追い詰めたのだ、ここで諦めるわけにはいかない。
(ザフキエルの霊力も、もう持たない・・・・)と、オーウェンが思う。
「オーウェン!!」と、その時、テレンスとラーフの声がした。
「!!」と、オーウェンが反応する。
「遅れたなぁ!!」と、テレンスが、ザフキエルの代わりに、イグ・ハンやアザトゥースたちを一掃する。
「オーウェンさん、フェイトを一緒に倒しましょう!!」と、ラーフがイグ・サツーティの相手をする。
「・・・・ありがとう、二人とも」と言って、オーウェンがザフキエルを召喚の命から解く。死天使であるため、長くは地上に留まることができないのだ。
ザフキエルが天界に帰って行く。
「お、俺もいる!!」と、ハインミュラーがダッシュで駆けつける。
「樹木だかタコだか知らねぇが、俺も相手してやる!!」と、ハインミュラー。
「邪魔なガーディアンどもよ!!これでも食らえ!!」と、フェイトが右手らしきものをパチン、と鳴らす。
すると、黒い暗雲から、細い雷が一斉に落ち、3名のガーディアンの元に落ちる。
「異人さんっ!!!」と、なぜか雷から当たらなかったハインミュラーが叫ぶ。
「き、キサマ何を・・・」と、オーウェンがよろよろと立ち上がる。イグ・サツーティが素早く剣で狙ってきたので、ハインミュラーがその相手をする。
「ガーディアンに反応する、対ガーディアン用の死生術の一つよ!!オーウェンとアテナ神よ、私が何もせず500年もただ生きて来たと思っていたら、大間違いだぞ!!新たな死生術を編み出したのだ!!」と、フェイトが笑う。
「何度でも焼いてやる!!どうだ!!」と、フェイトが指をパチン、パチンと鳴らし続ける。
雷が数回落ち、テレンス、ラーフ、オーウェンが身動きが取れなくなる。
(っ、このままじゃ、異人さんたちが!!)と、ハインミュラーが、焦りを見せる。
ハインミュラーが、ぶんぶんと頭を振る。
(俺には少なくとも、あの雷攻撃は当たらない!!なら、俺がやるしかない!!!)
「・・・俺は、”運命“ってやつが大嫌いでな!!」と、血のしたたる手で、ハインミュラーが剣を構える。その血は、赤いから、きっと自身の血なのだろう。
「“フェイト”だの“ネメシス”だの名乗ってるお前らなんて、知らねーけどな!!斬!!」と、ハインミュラーが、フェイトに斬りかかり、フェイトの注意をひきつける。
「邪魔だ、小童よ」と、フェイトが触手で、ハインミュラーを薙ぎ払おうとするが、フェイトの想像以上に、ハインミュラーは剣術に優れていた。
(ハインミュラーさんは、フェイトが自身の父親だと知らない様だ・・・だが、それは今は言わない方がいい、フェイトも正気を半分失ってるしな!ハインミュラーさんの作ってくれた隙で、なんとか反撃のチャンスを!!)と、オーウェンが思う。
「アンタ、どこか親父に似てるな」と言って、ハインミュラーが、「絳煉!!」と、炎の剣で、触手を斬り落として行く。
「俺はしつこいぜ??俺は諦めねぇ、アガーテを、ベアーテを、この国を護れる剣士になるって、俺は13の時に誓ったんだ!!」と、ハインミュラーが、イグ・サツーティとも対峙しながら、「斬!!」と言って、触手の注意を引き付ける。フェイトは、「ええい、こざかしい!!」と言って、雷攻撃ができないようだった。
その時、死んだと思われたマドリーンがごそりと動き、魔法銃でフェイトの左目を撃ち抜いた。
フェイトが、痛みのあまり「ぎゃああ」、と叫び声をあげる。
「ナイスだぜ、マドリーンさん!!」と、ハインミュラー。これで、大きな隙ができた!
オーウェンが、気合いで、のろのろと、だが、剣を地にさして立ち上がり、「使わせてもらうぞ、ゴドウィン!!もうお前は戦闘は終わったな、その気配は悟った」と叫び、
「越王!!」と叫んだ。
「高みに君臨する、死してなお、世界アラシュアを護らんとする大天使よ、ここに顕現せよ!バラキエル!!」と、オーウェンが叫び、死した上位天使の魂を呼び出す。
バラキエルが、右の翼から一枚翼を引きちぎり、剣とする。
オーウェンとバラキエルが、同時に、一身一体となり、フェイトの首の部分まで俊足で飛び、斬りかかる。
「白沢・・・牡丹灯篭!!」と、オーウェン。どちらも、太古の昔、古い神々が作り出した技だ。
白い光がまばゆく雨天を照らし、フェイトの体は、清浄なる光に包まれ、塵となって消えて行った。
「まさ、か、この私が負け、る、だ、と・・・・?!??」と、フェイト。
「ハインミュラーさん、ありがとう。斬!!」と、オーウェン。オーウェンが、剣でフェイトを滅多切りにする。
フェイトは粉々になり、やがて光に浄化され、消えて行った。
「ところで、ハインミュラーさん、斬なんて、いつどこで習ったんです・・・??」と、オーウェン。
「前も同じことを聞かれたきがしますけどね、これは自分で思いついた・・・というより、実は親父から習ったんです、集中したいときは、この掛け声を使え、ってね」と、ハインミュラーが、消えていくイグ・ハンやイグ・サツーティなどの死霊の国の化け物たちを眺め、はははと笑う。
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