姿を現した”フェイト”


            *


 その頃、ヴァジムを斬り伏せたテレンス、ラーフ、ゴドウィンの3人は、残りの敵兵・イグ・サツーティたちと対峙していた。ガーディアンが3人いれば、ヴァジム一人ごとき、楽に勝てた。

「ハインミュラーさん、あなたは少し下がってて!俺ら3人で、残りの化け物どもを引き受けます!」と、ラーフ。

「やあやあ、同胞たち」と、その時声がした。3人が、その声の主を探す。シェフチェンコの声だ。

「シェフチェンコ!!探したぜ、お前も俺らに加勢してくれ、というより、ハインミュラーさんとベアーテさんを・・・・」と、ゴドウィンが言いかけて、テレンスに止められた。

「よく見ろ、アイツ、様子がおかしい」と、テレンスが身構える。

「おやおや、テレンス殿、私はこうして、城から加勢にやってきたのです、何を疑っておられるのです??」と、シェフチェンコ。

「おい、アンタ、城で女王陛下たちを警護しているはずではなかったのか!!その任務はどうした!!」と、テレンス。

「フフフ・・・陛下とアガーテ王女殿下は、もうじき、この雨が上がれば、火刑に処されるんですよ!もう隠しはしませんけどね」と、最後のアサシンが笑いだす。

「!!」3人のガーディアンたちが、思わず息をのむ。

「お前が、最後のアサシンだったんだな」と、ラーフ。

「その通り」と、シェフチェンコ。いや、アサシン。



            *


 激しい斬り合いをしていた、オーウェンとマドリーンは、キーン、キーン、と刀を打ち合いながら、一進一退の戦いをしていた。が、力の差は明らか、オーウェンがやがて優位に立った。

「終わりだ」と、オーウェンが、倒れ伏したマドリーンの首を斬ろうとする。

「やめてくれ!!」と、やや遠くから、アガーテが金切声をあげる。

 城でマドリーンと過ごした、何年もの長い年月の記憶が、走馬灯のように駆ける。

 と、その時、マドリーンを殺すオーウェンの剣をはじいた者がいた。

「!?」と、オーウェンが、新手の敵に驚きを隠せずにいる。

「・・・ニコラス衛兵隊長・・・?!?」と、オーウェン。

「私の部下・・・ネメシスに、何か用かな、ガーディアンさん???」と、ニコラス。

「ニコラスさん・・・いや、フェイト・・・!!」と、オーウェンが身構える。

「フェイト様!!このような失態、申し訳・・・」と、傷だらけで息を切らしたマドリーンが言いかける。

「いや、いい、ネメシス。下がっていなさい」と、フェイト。

「貴様が、マドリーン殿に嘘を吹き込み、騙していたのだな」と、オーウェンが剣の切っ先を向ける。

「それはどうかな」と、フェイトがニヤッと笑う。

「フランチェスカ皇女は、兄上様ともども、私があの世に送ってやる算段だったが、うまく逃げられてしまってな!ずっと、殺してやろうと、その時を待っていたのだよ、ガーディアンさん」と、ニコラス隊長。

「なぜアガーテを狙った」と、オーウェン。

「なに、ラルセン殿との恋に舞い上がる王族に、鉄槌をくだすつもりが、逃げられたので、腹が立った次第」と、フェイト。


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