#06 この扉の向こうに

@tka__a0211

第6話

「私なら大丈夫……」

 列の中で小さく呟きながら、心の中で自分に言い聞かせた。


そんな時

 「すみません!ここって晴翔くんの列ですか?」


私に話しかけてきた彼女、"大人の女性だ" と心の中で思う。


「あっ、はい!そうです!」

「わあ〜!よかった!ありがとうございます!」


わたしは軽く会釈をし、元に戻る。


「緊張しません……?」


後ろからさっきの女性が話しかけてくれた。


「⋯緊張します」

「ですよね??何で皆あんなに普通の様子なんだろう(笑)」

「そうですよね(笑)」


周りを見渡すと、無言でスマホを見ている子だらけ。

 "緊張しているのは私だけ……?"

と思っていた時に話しかけてくれた名前も知らない優しい彼女には感謝でしかない。


 

そこから彼女と晴翔くんのことで盛り上がり、緊張で包まれているこの空間に少しリラックス出来たような気がした。



列が少しずつ進み、とうとうブースの目の前まで来てしまった。


でも ──

肝心な「何を話すか」だけは、決まらないまま。


"これは言ってみたい" とか "これ言ったら晴翔くんどう思うかな"

 とか色んなことを考えすぎた結果だ。

 

「やばい、どうしよ……何言おう」

 

心の中でそう呟くけれど、時間は待ってくれない。


「どうぞ〜」

スタッフの合図とともに、覚悟を決めて歩いた。

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