第14話:その後の話

 莉々菜について補足がある。


 彼女は俺との2年間の生活で、荒巻さんのところとの二重生活をしていたことが分かった。荒巻さんは「施工管理」って建築現場の監督さん的な仕事をしているらしくて、住んでいる県とその隣県くらいまでは出張があるらしい。


 すごい時はウイークデイは全部出張、帰って来るのは週末だけってときもあったらしい。現場ごとに条件が違うので、日曜日だけしか休みが無いこともあったりもするのだとか。


 逆に言うと、莉々菜はかなり自由に動けていただろう。


 だから、うちでは看護師の夜勤とか言って月の半分くらいしか家にいなくても誤魔化せたのだ。ちなみに、看護師をしているというのは嘘で、とっくの昔に辞めていたとのこと。


 毎月俺が生活費全般を出して、莉々菜の分が貯蓄……と言うのは完全に騙されていたってことだ。俺のカネで生活して、家事も俺に任せて、自分は本当の家に帰って旦那と生活したり、大学生の愛人のところに行って貢いだりしていたらしい。


 もしかしたら、単に暇なときにうちに泊まりに来ている感覚だったのかもしれない。


 二重生活とかよくできたな。「合理的」とか思っていたのは俺だけだった。理系の性なのか、俺が鈍いだけなのか、それはもうどうでもいい。


 当然だけど、莉々菜の荷物は撤去された。2年間も結婚生活をしていたと思っていた家はガランとしていて、むなしいばかりだ。


 初田先輩がやったことについても少し知らせておこうかな。


 莉々菜の友達のコミュニティと初田先輩の友達のコミュニティはだいぶ重なるところが多かったらしくて、今回のことを暴露したらほとんどが莉々菜の前からいなくなったようだ。初田先輩が友達にそれぞれ個別に伝えたのか、グループラインで一斉に伝えたのかは分からないけど。


 重婚した上に愛人がいたってことで周囲の人はドン引きだったらしい。現実にそんなのがいたらびっくりする。そんなのと一緒にいたらまずいと思われただろうし、関わったら変な火の粉が飛んでくると思われたのかもしれない。できるだけ近寄らないようにしようと思うのはしょうがないことだ。


 仕事もしていなかったし、収入もない。それでは慰謝料を払えないので、両親が借金の肩代わりをしたらしい。うちにも1000万円が一括で支払われていた。ご両親は家を売ったと聞いた。莉々菜は一人では生活がままならないし、ご両親と狭いアパートで暮らしながら、借金を返す日々になっていると聞いた。


 初田先輩は、俺へ莉々菜を紹介した……と言っても合コンだっただけなんだけど、その分の後ろめたさを今回の働きで払拭したらしい。大事な大事な旦那様のところに帰っていった。


 そして、俺はまた一人になった……。


(ガチャ)「トラック来たけど、もう荷物運び込んでいい?」

「ああ、大丈夫だ」


 あ、俺は一人じゃなかった。俺の幼馴染……ムックがうちに引っ越してくることになった。


 荷物は引越屋さんに任せておいて良いなんて楽だな。そして、仕事が早い。下手に手伝うと邪魔になりそうだ。俺達は次々運び込まれる荷物を見守っていた。


 元々、ムックは幼馴染で俺のことを悪く思ってなかったらしい。ただ、俺が結婚してしまったので、言うならば拗ねていたようだ。


 しかも、初婚同士じゃないと結婚は嫌だと思っていたらしい。俺の「初婚」はちょっと怪しいところだけど、ギリギリセーフってことにして、俺達は付き合うことにした。


 実家のお義母さんは一刻も早く毛むくじゃらになったムックを追い出したかった……もとい、嫁に出したかったらしくて、俺の家に白羽の矢が立ってしまった。


 莉々菜がいなくなった分、家具とか荷物がごっそり減った。そこにムックが入れ替わりで入ってくる感じ。


 ムックは仕事……うーん……会社勤めはしていなくて、「作家活動」をしているらしい。まあ、もう少し具体的に言うと、同人誌を書いているらしい。


 年2回のビッグイベントと通信販売でだいぶ稼いでいるのだと自己申告された。月収を聞いたら、俺の給料よりもよかったくらいだ。


「それにしても、あの毛むくじゃらがこれとは……」

「なんだよ。それなりにショックだったんだよ」


 それなりかよ。


「それより、同人誌ってどんなの描いてるのかみせてよ」

「絶対にダメ!」


 俺もオタクの端くれだから、想像はつくんだって。それでも見たいじゃない。


「ちわーーー! むっくちゃん! 遊びに来たぞ!」


 あの声は初田先輩だ。あれ以来ムックのことを痛く気に入っていて、遊びに来たらしい。だから、今日は引っ越しなんだから、先輩が来たら業者の方の邪魔にしかならない。


「プイ」


 ムックは先輩が苦手らしい。


「ほら、途中でマカロン買って来たんだぞ?」

「マカロン……」


 甘いものでつられてやがる。


 今度はちゃんと順序を踏んで、婚姻届けもムックと二人で役所に提出しに行こうと思う。


〈了〉

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手掛かりはこの画像だけですが、不倫の末に失踪した妻の居場所を見つけてください 猫カレーฅ^•ω•^ฅ @nekocurry

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