もしも世界がなくなれば、君は何を想うのだろう
@kmitati
第壱話 もしも世界がなくなれば
もしも世界がなくなれば、君は何を思うのだろうか?
考えたことも無い現実に目を背け今日もまた1日を謳歌するのだろうが、僕はそうはいかない。
というよりつまらない日常からは、逸脱したいと考えてるからこその想っているのかもしれない。
何かまたよからぬことを考え、いつ世界は終わるのか?いつ地球は無くなってしまうのか?などと物騒なことを考えながら本のページを1枚、また1枚とめくる。
読み進めていくと、見たことのないページに僕はたどり着いた。
「世界が終わればこの世のすべてが終着点に行きつき、終焉を迎えるだろう」
そのように書いてあった。よく見ればこのページにはこの文章しか書かれてない。違和感しかないページではあったがそういう本があったとしても僕は何も思うことはないだろう。
世の中には数多くの著作が存在し、小説の書き方もそれぞれだ。二段にして作成されてるものであったり、逆さまに読むものであったりと多種多様。
だからこそ、僕は違和感を覚えることをしなかった。この時までは……
「なんだこれ……?見たことのないページだなぁ。でもこれが最近人気の本なのか……?」
「俺買いたいの買ってきたけど、そっちは見つかった~?」
「でもこれ、どっちかといえば小説というより単なる著作物に近しい気が……?てか著作物の定義ってなんだ?」
「おい!話聞いてるのか?竜也。」
――ドンッ!
ふいに背中を押され、僕はびっくりした。またこれだよ……呆れてしまうくらい乱暴なんだよな。
僕は谷崎竜也。竜ってついてるけど、実際はそこまでかっこよくもないし、中学高校は帰宅部しかしてない。
何気ない日常の中で生活を送っていたある日、一冊の本と出合った。それは、真っ白な本であり、そこに何も書かれてなかった。
しかしよく見れば、ページを書くところに小さく文字が記載されていた。内容については記憶にないが、それでも本を読むきっかけにはなった。
「竜也?ちゃんと話聞いてたのかよ?最近ぼーっとすること増えてるけどマジで大丈夫なのか?」
「ごめん。本に引き込まれそうになってた。それでなんだっけ?」
「おいおい……またかよ。これで何回目?さすがに着き合ってらんねーよ。俺先に帰るからな。あとは一人で気を付けて帰れよ。じゃあな。」
「あ……待ってよ!拓郎!」
声をかけたところで意味がない。拓郎はいつもこんな感じだが根はやさしい男子だからこそ、モテるときが多いのだ。
しかしながら、怒りっぽいのが難点というところがあるが……そんな姿は女子には見せることがないのだろうな。
木村拓郎。幼稚園の時からの幼馴染だが、最近は本当に僕にキレっぽい。イライラさせてる原因はわかっているけど、本のことになると目がないから仕方のないことなのかもしれない。
それでも、翌日になれば近くにいるものだから友達というより親友に近いのかもとは今思った。
まぁそれはさておき、今手に取ってる本が僕には何か違和感を感じ取れてしまった。
「中に記載がないというより、この円状のものは……?いや、小説だよな?ここのコーナー。なんで文字すら書かれてない内容のものがこんなところに?
というよりこの本本当は買うつもりないけど、なぜか欲しくなる。どういうことなんだこれは?」
「あの……お客様?先ほどからブツブツと独り言らしきことつぶやいておりますが何かお探しでしょうか?もしよろしければ一緒になってお探ししま……」
「すみません!これ買います!すごく気に入りました!いやぁなんていうか、この作者?最高じゃないですかね!ほらこことか!」
「は、はぁ……?わかりました、レジまで案内しますね……。」
「はい!お願いします!いやぁ本当にこの本に出合えてよかったなぁ!」
僕は迷うことなく人見知りだ。人に話しかけられることを嫌い、できる限り目立ちたくない。その一心でいつもいるのだが、今日は少しやらかしたらしい。
店員に進められる中、僕は一つの疑問が生まれた。
――先ほど見せたページは円しか書かれてなかったページであったのにも関わらず、店員にはそれが見えてなかったように思えたからだ。
正直、円だけを見て先ほどの反応になるのかもしれないが目の動きがどうも見えてないように見えてしまったのだ。
そんなことを考えながら、レジについてお会計となってしまったが……バーコードが読み込みされない。
この店で販売されてるのだから、バーコード登録がされていないといけないのにそれがされてないらしい。
「すみません!ちょっと登録がされてない商品でして、今上に確認していますので少々お待ちいただけますか?」
「大丈夫ですよ!それよりこのページなんですけど、このページのこの部分の読み方がわからなくて聞きたいのですが分かりますかね?」
「この部分……でしょうか?あの、白紙のページですよ?このページには何も書かれてないのですがお客様には何か書かれてるのでしょうか?」
「あ、すみません!ページ間違えたようです。ここのページのここですね!これのこと言ってたんですよ。いやぁ僕としたことが……」
「あの……このページも何も記載されてないのですが……?」
「え?」
「え?」
その場にいた僕と店員を含む全員がフリーズした。見えてる者と見えてない者、その二者が存在してしまっているからだ。
決してどちらが正しいなどということはない。見えたままに話をすればいいだけだが……違和感を覚えてしまう。
谷崎はその時考えるだろう。きっとこのように思ってしまうだろう。
――僕は選ばれた側の人間だ。誰にも見られない選ばれたんだ!
谷崎がそのように思ったとき、勝手に目の前のページが開き円の書かれたページが開かれた。
しかし周りは気づいてない。いや、気づいてないというよりかは静止してしまってる。
「え、いや、え?どういうこと?今ってどうなってるの?ちょっと店員さん!」
谷崎が話しかけるが反応はない。静止した空間の中で一人谷崎だけが動き続ける。
孤独を感じ、路頭に迷うのだろうか。もう拓郎にも家族にも……
その時、どこからともなく聞いたことのない声が聞こえた。
――もしも世界がなくなれば君は何を想う?
「え?今誰が?誰の声なんだ!?」
――もしも世界がなくなれば君は何を想う?
「僕は……」
谷崎は口を紡ぎ、少しの思考の後続けて言葉を繋げる。
「僕は……世界がなくなったとき迷いなく新しい世界を作ると思う。場所、仲間、大事な人、そんなの単なる道具に過ぎない。それなら僕が王になり、利用し世界を再構築したらいいんだ!」
――いい考えじゃないか。世界に正解などない。ならば、新世界の王となり、理想の世界を作ってみろ!
「え、ちょ、あ、待って!ねぇちょっ!!!!」
谷崎は本の世界に吸い込まれた。人間不思議なもので本心というものは、命の危機にさらされるほど露わになる性質がある。
ページが開き谷崎は危機だと感じた。少しの迷いは生じたが、それでも本能で話してしまったのだろう。
時が経ち、今に至るまで人間というものは非常に罪深い生き物だ。
だからこそ、この世界は楽しい。
吸い込まれる最中、この世界に対して思い残しがあったわけではない。
それでも見ず知らずの世界に行くのは怖い。これから先の世界を塗り替える人間が谷崎自身なのか、はたまた誰になるのかなどわからない。
しかし、これだけは言える。
――この物語の主人公は君なんだと。
もしも世界がなくなれば君は何を想うのだろうか?
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