誰か…助けてくれませんか…?

月は陰り、心細い街灯が頼りの真夜中に女性が一人歩いていた。


「やっと仕事終わった…それにしてもこの道、相変わらず暗いなぁ。今にも路地から何か出てきそう。」


女性は少し早足で家路へと向かって行こうとした。

すると、暗い闇に包まれた細い路地の中から啜り泣く誰かの声が聞こえてきた。


「誰か…助けてくれませんか…?」


今にも消えてしまいそうなほど、か細い女性の声。

放っておくわけにもいかず、路地に向かって声をかけた。


「大丈夫ですか?何かあったんですか?」


その問いかけに、返事はなかった。

返ってきたのは、静寂のみ。


怖くなった女性は、走って家に帰る。

しかし、その最中にもずっと耳元で声が聞こえてくる。


「誰か…助けてくれませんか…?」

「誰か…助けてくれませんか…?」


女性は息切れしながらもやっと家にたどり着いた。

急いで玄関の扉を開き、バタンと扉を閉めて施錠する。


「なんだったのよ…あの声、耳に残って…ずっと聞こえてくる!」


しゃがみ込み、耳を塞いで声が鳴り止むのを待つ…

そのまましばらくすると、女性は平静を取り戻した。

もしかしたら不審者だったのかもしれない。そう思った女性は、玄関前を確認する。


「玄関前に誰もいないか、確認してみよう…」


扉の覗き穴から外を見ても、誰もいない。

女性は心から安堵し、誰かにつけ回されていたのだと思った。


「誰もいない。一体あれはなんだったのかな…」


女性は自分の身に何もなかったことに心から安堵し、警察に不審者がいたと通報しようと家の固定電話から電話をかけた。


「はい、こちら◯◯警察です。ご用件はなんでしょうか?」


「実は、仕事から帰宅する際に不審者につけ回されて…周辺のパトロールをお願いしま」


「誰か…助けてくれませんか…?」


ツーッ…ツーッ…


その後、警察が女性宅を捜索したが、そこには床に落ちた受話器だけが残されていた。

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