初テイム

 スポーン地点の方まで歩いてみたけど、周りには魔物はいなかった。

「んー……これは、もう少し奥まで進んでみるかなぁ?」

 きょろきょろと周りを見渡して、奥に森があるのを見つけてそっちに向かってみることにした。

「あっちの方までいけばいるかなぁ……」

 ふらふらと歩いていれば、ボロボロな小屋が見えた。

「小屋だ……所有者がいないなら使えるかなぁこれ」

 そんなどうでもいいことを考えながら、周りを改めて見渡してみれば、魔物がいた。

「お、これは……モフモフ発見だ」

 視界に映ったのは、モフモフとした灰色の毛並みのオオカミ型の魔物だ。

「初テイム成功するかなぁ……」

 魔物はこっちに気が付いている様子はない。今ならテイムが書けられる気がする。

「というか、今成功しなければ私やられる気がする……」

 ゆっくりと、音を立てないように。そっと魔物に近づいていく。

「わおーん」

 一鳴き。魔物が鳴いた。

「気づかれた……?」

 その鳴き声にびっくりして、足を止める。でも魔物はこっちに気が付いている様子はなくて、それに安心して近づいていく。

「呪文の効果に距離があるかわからないけど、このぐらいの近さなら届くはず」

 テイムでは魔物を傷つけてはいけない。どこまでが許されてるのかはわからないけど、私としてもモフモフを傷つけたくない。

「……よし。”テイム”」

 息を吸い込んで、呪文を唱える。といってもテイムというだけなんだけど。

 魔物がこちらに視線を向ける。これでテイムが成功しなければ襲われてしまって終わりだろう。

「わおーん」

 魔物が一鳴きした。失敗したのか、なんて思ったけどそうじゃないらしい。

「わふ」

 トテトテと、魔物がこっちへと寄ってくる。

「これは、成功した……感じ?」

 わからない、敵意はないように思うし大丈夫だと思うけど……。

『グレーウルフがテイムされました、名前を決めてください』

「あ、システム音なるんだ。えーっと、名前?」

 じーっと魔物の顔を見る。

「君はどんな名前がいい?」

「わぅ?」

「わかんないかぁ……」

 名前。オオカミだけど犬みたい。でもかっこいい名前つけてあげたいし……。

「うーん。レオンとかどうかな」

「わふ!」

「よし、じゃあ君はレオンだ」

『レオン。として登録します』

 システム音が鳴る。そして、レオンに首輪が付いた。

「これで、完了なのかな?」

 これ以上システム音が鳴らないから完了したんだろう。

「さて、よろしくねレオン」

「わふぅ!」

 レオンの頭に手を置いて、わしゃわしゃと撫でる。

「レオンモフモフだねぇ……」

 ふわっとした撫で心地。ものすごくリアルで気持ちがいい。

「モフモフすぎる……」

 耐えきれなくなって、がばっと抱き着けばレオンは驚いた感じをしながら、おとなしくしっぽを振っている。

「はぁぁ……最高なモフモフだよ。レオンは……」

「わふ? わふ」

 きょとんとしているレオンに少しだけ申し訳なくなったけど、このモフモフには勝てなくて撫でまわしてしまう。

「そろそろ、ギルドに報告しにいかないといけないかなぁ」

「わふ。わおーん」

 立ち上がって、レオンと共にギルドの方へ戻っていく。

「あまり、離れないでね。間違われちゃうかもしれないから」

「わふ」

 元気よく返事をするレオンの頭をなでながら、なんだかやっぱり犬みたいだなぁなんて思う。

「レオンはオオカミ系の魔物なんだよね。犬みたい」

「わう、がう」

「お、そんな吠え方もできるんだ」

 思ったより猛獣みたいな吠え方をするレオンに驚きつつ、歩いていく。

「さて、そろそろ着くから離れないでよ」

 再度レオンに忠告をして、それから村に入っていった。

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この世界にモフモフが少ないので素晴らしさを布教します! 兎月彩月 @satuki1226

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