村に向かって
「最初のスポーン地は草原かぁ……」
風が心地よく、草木が揺れる音がする。
「すっごいリアル……というかチュートリアルってあるのかなこれ」
ここは草原だし、近くには森があって遠くに村が見えるそんな場所。
「うーむ、とりあえず動いてみるかなぁ……」
一歩踏み出してみれば、土を踏む感覚がした。その感覚にびっくりしたけど、何他歩いてみる。そのたびに土の感覚と、風の感覚がする。
「ほんとに歩いてるみたいなんだけどこれ……すご、こわ、どうなってるんだろ」
あまりのリアルさに少し怖くなるけど、これだけリアルであれば、魔物たちの触り心地もリアルなんだろう。
「持ち物とかあるのかな」
自分のアバターを見てみる。一人称視点だから、服しか見えないけど。
「バッグと短剣か。バッグの中には何があるかな」
おそらくデフォルトの装備であるバッグを開いてみれば、古びた黒い表紙の本と巾着袋が入っていた。
「巾着はお金な気がする。なんとなくだけど」
巾着を確認すればやっぱりお金が入っていた。この世界の通貨なんだろう。銅貨が10枚入っていた。
「やっぱりお金か、にしてもこれがわかんないんだよなぁ。魔導書みたいな本」
本を取り出して、開いてみる。するとホログラムが表示される。
「え、もしかしてこれメニュー画面?」
ホログラムには、今の自分のステータスや運営からのお知らせ、操作の仕方、セーブやログアウトのボタンが表示されている。
「本なのにホログラムなんかあべこべだけどいっか、えーっと操作方法は……」
操作の仕方のところを押し読みこんでいく。難しい操作はなさそうで安心する。
「テイムの仕方は、魔物を傷つけないようにテイムの呪文を行使する? 呪文の発動は、テイムと叫ぶだけで発動するが一度で成功するとは限らないか」
まあでも、テイムできるまでは何回でもチャレンジできるみたいだし、根気強くいけばいいだけの話だろう。
「で、えーっと? まずはギルドに行って登録をしなきゃいけないのか。テイムしたらその度に申請……ってもまあそうなるか」
確かにテイムした魔物を登録するのは大事だろう。自分のためにも。
「ギルド……村行くかぁ」
村へと歩いていく。その道中に魔物がいれば倒してみよう。モフモフしてる子がいたらテイムするけど。
「別にねぇ……モフモフしてない子が嫌ってわけじゃないけど最初はモフモフの子じゃないとダメだよね」
モフモフを集めないとそもそもこのゲームを初めて意味がない。これだけ地面の感覚や風の心地よさを感じられるのだからものすごくモフモフしているにきまっているのだ。
「えーと、村はこっちの方だから……」
遠くに見える家を頼りに歩いてみれば、思ったより近そうで安心する。出会うとしても今の自分でも倒せるような魔物に出会えるといいななんて思いながら鼻歌を歌い歩いていく。
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