深まる謎

「ではファイ、貴方の適正属性を調べましょう」


俺は今リラと共に教会に来ていた


さっきまで居たのも教会だとと思ったが、この教会の敷地はさっきまで居たシスターや騎士団が寝泊まりする建物と今居る本堂と呼ばれる教会、騎士団が訓練する為の大きな庭とかなり広いスペースがある


「それでは早速ファイの属性をみてみましょうか」


「俺に何かする事はあるか?」


「今から持ってる水晶に手をかざしてください、そしたら適正属性の色に発光するので」


「どういう原理なんだ…それ」


「まだ完全に解明はされてないですが…その人が持つ魔力を吸収して反応してるそうですね」


「魔力を吸収?それってその水晶が魔法陣みたいな力を持っているのか?」


「はい、正式名称はセレナイト、一般的には適正属性を判別する事から判断石なんて呼ばれる事もありますね、かなり高値で取引されてる貴重な水晶なんですよ」


そう言うとリラは奥から先程まで話ていた水晶を持ってきた


「ではフォン、手をかざしてください」


「ふぅー…行くぞ」


手を水晶にかざすと…発光した



色は…燃えるような赤色だった


「赤…これは炎属性って事か?」


「えぇ…そうなりますね」


未だに驚いた顔をしている彼女に俺は少し思った事を問う


「なぁ…炎属性が適正ってどれぐらい居るんだ?火って調理とかでも使うしかなり身近な物だしかなり多い気もするけど」


「火と炎は確かに使う為には同じ炎素を使用します、調理等で確かに利用します…ですがそれが適正属性となると話は別です」


「それってつまり…少ないのか?」


「はい、私は今まで見たことがありません、確かに今の時代では調理等で使われかなり身近になってきましたが、本来炎とは恐怖、畏怖の対象なのです、魔力の適正属性はその魔力に刻み込まれてるものです…攻撃的な魔法に才能を持つという事は…記憶を失う前の貴方はそれだけ危険な目に遭ったのかもしれませんね」


「危険な目か…」


(俺に何があったんだろう…過去に…何かあったのかな…ダメだ…やっぱり何も思い出せない)


「適正属性はわかりましたが、一応才人かどうかも見てみましょうか」


その言葉によって俺の意識は目の前に戻って来た


「おや…ファイ貴方…才人ですよ」


「マジか!?どんな能力なんだ!?」


「えーと…火を灯す…です…ね…ハイ」


「火を…灯す?」


俺は震える体を何とか抑え問う


「それって…」


「言っちゃ悪いですが…才人にしては弱いですね…」


「だよなぁ…」


「まぁまぁ炎属性が適正なだけ良かったじゃないですか」


「なぁ…聞いてなかったんだけど、どの属性が多いんだ?」


「多いのは光・風・土ですね」


「3つとも安全があって身近な物だな」


「はい、基本的に教会の人間は光属性が適正の人が多いんですよ」


「それまたどうして?」


「光属性には回復魔法や治癒魔法がありますから、怪我の人の治療に向いてる属性の人間が教会には多いんですよ」


「成程…納得だ」




それからリラはまだ教会の仕事があるそうで教会に残り俺はリラの仕事の邪魔をしない為、広い庭に来ていた


「何か…覚えてること無いのかな…」


そんな事を思っていると、端にある籠に木刀が入っているのが見えた


「剣…か…やれる事は試してみるか」


俺は籠に入っている利き手である左手で振れる片手剣程の軽さや長さでありながら、持ち手が両手で握れる長さがある木刀を見つけ、それを手に取った



(何だろう…懐かしい気がする)


軽く振るとふと思う…


(あれ…剣の握り方なんて知らないのに…握れるし…振れる…?)


2連続、3連続、4連続と確かめるように細かく分けて剣を振るう



構え直して5連続で剣を振ろうと、先程止めた時と同じ4連撃目まで行った後、5連撃目に向かおうとした時…体が勝手に反応した


左薙、振り切る前に頭上に剣を持っていき振り下ろす


「今のは…何だ?俺は確かに5連撃目に行こうとした…でもあんな振り方をしようとは思わなかった」


確かに俺は利き手の左腕を使って右腕方向からの左薙で終わろうとした


(また謎が深まちゃったな…)





突然、背後に気配を感じた


「リラから記憶喪失だと聞いていたが…今の剣の振り方はは間違いなく帝国剣、何なら最後の技は帝国剣の基本技クロージングクロス…少し話を聞く必要があるか」


後ろを振り向くと、以下にも軍人という軍服を着た白髪の女性が立っていた


「貴方は…?」


「この教会の騎士団長、アリス・クルーニーだ」


「俺は…ファイ・クロワール…リラから貰った名前だ」


「知っている、さっきリラから聞いた…早速だがフォン…」


そう言うと彼女は木刀をこちらに向けて来た


「こい、ファイ、お前の力見せてもらう、気になる事も出来たしな」


「俺…記憶無いんですよ?」


「あぁ…知っているとも、しかしお前の今の剣は帝国剣にそっくりだ」


「その帝国って言うのも知らないんだけどな」


「そうか…まだ最低限の事しか伝えてないと言っていたな」


「えぇ…ですので止めときやしないか?」


「残念だが無理だ、心配するな怪我は負わせん」


俺はもうこの人は諦めないと思った為、諦めて認めた


「わかったよ…やれば良いんだろ?」


「やっと認めたか…では行くぞ」




(アリスさんの武器は両手で持つ長剣…リーチの長さじゃまず負ける…その代わりにこっちは片手剣、手数的にはこちらが有利)


「来ないのか?ではこちらから行くぞ!!」


そう行って彼女は俺の方に向かって来た


(初撃は何で来る!?)


向かって来る彼女を見ると剣を振り上げる様子もなくこちらに真っ直ぐ向かって来ている


(振り上げ無い!?突きか!!)


俺は彼女の突き出してきた剣を片手剣で下から上に叩く事で軌道を逸らす


「私の初撃良く防いだ!!」


「怪我は負わせ無いんだよな!!」


軌道を逸らし彼女にもう一度攻撃される前にこちらから仕掛ける


(1、2、3、4…5!!)


俺は先程の素振りの時と同じ様に5連続を繰り出す、勿論5連続目は先程と同じだ


(ちっ…全部捌かれたか…)


「やはり帝国剣だな、何より受けてわかった5連撃目はやはりクロージングクロスだ」


「帝国剣がどんなのか知らないが…俺は記憶が無いからなそんなの知らないさ」


彼女が近づいてきたので鍔迫り合いの状態になる


「となると記憶を失う前のお前は帝国の人間だったのかもしれないな」


「かも…な…」


(力強すぎだろ!?マズイ…押し負ける!!)


「ところで…このままだと私が勝つぞ?」


「わかってるよ…そんぐらい!」


(どうする!?どうする!?)




『武器に頼るな…帝国剣は実戦の剣、生き残る為の剣だ、見栄えを意識している教国の剣とは違うぞ』


(これは…俺の記憶…?でも…違和感が…)


「終わりにしよう、ファイ」


瞬間彼女から力から押し込まれる


「クッソ…がっ!!」


俺は彼女に押し込まれ…ついに倒れてしまった


「グェッ!!」


同時に地面に頭を打ち意識を失った







Sideアリス


「ついやり過ぎてしまった…」


彼…ファイの記憶が無いことはリラから聞いていた


私は言葉では無く剣で語る人間な為、この様な事を行った


「ん…?」


ふと違和感を感じ自身の腹部を見ると彼の拳が力無く押し付けられていた


「やはり…帝国剣か…」


帝国剣は実戦剣、剣が無くとも最後まで戦い抜く剣…


「何より…力やスピードは遠く及ばないものの…技のキレは帝国の将軍に匹敵するぞ…少し調べるべきか…」







小話『悲惨な現状』


「アリス…やり過ぎては行けないと言いましたよね?」


「す、すまないリラ…ファイが予想以上に強くてな…ハハハ」


「ではこの後頭部のたんこぶは何でしょうね?」


「…ハハハ…」

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Fiction of a Flame 抹茶。 @nigaxtixya

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