第4.5話*嘘つき婚約者が受けるべき代償
(噂に踊らせれて嘘に騙されるなんて、みーんなおバカさんなんだから♪)
この日のために用意されたドレスに身を包んだエリーゼは目の前の鏡に映っている自分を見つめた。
今日は令嬢たちが集まるお茶会の日だ。
「私はアーロン様の婚約者なのよね。
公爵令嬢で元婚約者だったあの女にいじめられたかわいそうなメイドだったけれど、そんな健気な態度がアーロン様の心を射止めて見事に婚約者の座を勝ちとったシンデレラなのよ」
エリーゼはフフッと鏡の中で微笑むと、くるりと1周した。
「フフフッ、お茶会での注目度は間違いなしね」
エリーゼは鏡の前から離れると、お茶会の会場へと足を向かわせた。
会場に顔を出すと、令嬢たちが自分に向けているその目が冷たかった。
「出たわよ…」
「よくもまあのうのうと現れましたこと…」
「スザンナ様の方が淑女としても婚約者としてもとても完璧なお方だったのに…」
「シーッ、聞こえるわよ」
あきらかに向けてくるその目は敵意や殺意が込められていてエリーゼは萎縮しそうになった。
(何これ…私はアーロン様の婚約者よ?
王太子の婚約者に向かって何なのよ、この人たちは…)
その時だった。
「きゃっ!」
「あら、ごめんなさい。
誰かがいたことに気づきませんでしたわ」
自分からぶつかってきたのに謝るどころか、むしろこちらが悪いと言うように言ってきたその令嬢にエリーゼは躰が震えたのを感じた。
怒りではない、恐怖だ。
「図太い女よね、自分がアーロン様の婚約者になりたいがためにスザンナ様をいじめるなんて最低よね」
「えっ…?」
(いじめたって…私、スザンナ様をいじめた覚えなんてないし…ちょっと待って、スザンナ様が私をいじめたって言う話でしょ!?)
「この子は元々男にだらしがないのよ。
メイドとして雇われたのも男の伝手を使ってのことだったって言う話らしいわよ」
「えっ…?」
(違う、私はそんなことしてない!)
冷たい目を自分に向けて、わざとらしく大きな声で噂をしている令嬢たちに、エリーゼは躰の芯まで冷えていくのを感じた。
(何これ、どう言うことなの!?)
エリーゼは誰も味方をしてくれないこの状況に、涙が出そうになった。
「ホント、庶民の阿婆擦れって嫌よね。
変な病気が移っちゃいそう」
「スザンナ様の方が淑女としても婚約者としてもとても完璧なお方だったのに、何でアーロン様はスザンナ様を捨ててこんな下品な女を選んだのかしら?」
「自分の躰と男のコネを使ったって言う話は本当なんじゃない?
躰を使ってアーロン様に迫って、男を使ってスザンナ様を陥れたのよ!」
「ヤだ、何それー!」
アハハハッと大きな声で、大きな口を開けている令嬢たちに、エリーゼは自分が婚約者としても1人の人間としても誰からも歓迎をされていないことに気づいた。
「ーーこんなの、聞いてないよ…」
エリーゼはそう呟くと、お茶会から逃げ出したのだった。
追放エンドを終えた悪役令嬢は旅に出ます! 名古屋ゆりあ @yuriarhythm0214
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